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本編 燦聖教編
ダラァー侯爵
しおりを挟む俺達は奴隷商を引き連れ、貴族の屋敷を周り、売られた獣人族を全て異空間に連れて来る事が出来た……。
ふう……疲れた。肉体的にじゃ無くて精神的にだ!
この街の貴族は腐ってる。
ほとんどの獣人達が、心が闇堕ちするレベルの酷い仕打ちを受けていた。
中には獣人達自ら「貴族の屋敷に残りたい」と言う場合もあったけどな。
シャウエンの貴族街で見つけた獣人族は全員で百五十六人。
その内十ニ人は貴族の屋敷に残ったので、異空間へ連れて来た獣人達は百四十四人となった。
これだけの数の獣人族が奴隷として貴族に売られ、殆どの獣人達は酷い仕打ちを受け、幸せを見つけた獣人はたったの十二人だった。
獣人達を【ジャバネイル王国】に連れて行くのか、違う国が良いのかはまだ獣人達と話していないから分からないが、関わったからには最後まで面倒見るつもりだ!
異空間に連れて来たが、心が壊れまだ笑えていない獣人も多数いる。
どうにか心の傷を癒やしてあげれたらな……良いんだが。
とりあえず街をめちゃくちゃにした燦聖教の奴等と領主がいる【燦聖塔】に乗り込みだ!
異空間の扉を開けシャウエンの街に出ると銀太が転移して来た。
「銀太!何処に行ってたんだよ!」
『美味そうな甘味の店があっての?見ておったら知らぬ人族がご馳走してくれたのだ!
皆にもお土産もあるのだ!』
『おおー!何か高そうな甘味だな?』
『本当ねー綺麗ね。花見たいだわ』
「ワシにも寄越すのじゃ!」
銀太のお土産にスバル達が群がる。
貴族の屋敷を巡っていたら、突然銀太の奴いなくなったんだよな。
心配だが、転移魔法で直ぐ帰って来るだろうと思い。
獣人族の奴隷を優先したんだが、甘味を貰ってた何て!
そんな優しい貴族がいたのか?こんなに沢山のお土産までくれる?
後で御礼言わなくて大丈夫かな?
⭐︎★⭐︎★⭐︎★⭐︎
銀太side
ティーゴ達が獣人族の奴隷を貴族から解放し、異空間に連れて行きと走り回っていた時。
銀太は貴族御用達の高級菓子店の前に立っていた……。
「うう……匂いに釣られ来て見れば……美味そうなのだ!ティーゴに頼んで後で買いにくるのだ」
キキィー!
突然急ブレーキをし一台の馬車が銀太の前で止まった。
馬車からは質の良い服を来た男性が慌てて降りて来た。
「きっ君!」
『何だ?我を呼んだのか?』
「そうだ!ここで何をしてるんだ?」
(馬車からチラリと見た時も綺麗だと思ったが、近くで見ると別格だ!今まで見たどの獣人よりも美しい……しかも隷属の首輪を付けていないと言う事はまだ誰の奴隷でも無い)
「我はこの甘味を見ておったのだ!美味そうなのだ」
「甘味が欲しいのか?なら私が買ってやろう」
『良いのか?お前良いやつなのだ!』
「お前って……」
(口がなってないな。まぁ良い首輪を付けてタップリ躾けてやれば……)
コソッ
「おいっ隷属の首輪は?」
「屋敷に取りに戻らないと」
「急いでとって来い!私はこの店に獣人を引きつけておく」
「はっ!」
執事の男性は銀太達が店内に入ると同時に馬車を走らせた。
「さぁ?中に入って食べよう」
『やったのだー!』
『美味いのだ!これも……アムッ』
「美味しいですか?良かったですね」
(しかし良く食べるな……良くこんなにも腹に入るもんだな。)
『我はこの甘味持って帰りたいのだ!』
「ええ?こんなに食べたのに?まだ食べれるのか!」
『ではもういいのだ!我は帰る』
「あっちょ!」
(まだ執事が隷属の首輪を持って来てないのに!帰られてたまるか!)
「好きなだけ選ぶと良い!」
『本当か?お前良い奴だな!』
銀太はニコニコと甘味を選んでいる。
カラン♪
「ダラァー侯爵様!お待たせしました!はっはぁ」
執事の男性が貴族をダラァー侯爵と呼んだ。
この貴族の男性はダラァー侯爵だった。
「遅い!危うく逃げられる所だった!」
(でもこれで……あの綺麗な獣人を好きな様に出来るグフフッ)
「今は菓子を選ぶのに夢中だ!早く首輪をつけよ!」
執事の男性と法衣を羽織った男性が銀太の背後に周り首輪を付けようとする。
法衣を羽織った男性は何か呪文を唱えている。
ガチャン!
隷属の首輪を銀太の首に付けた……が!
付けた瞬間首輪は粉々に砕け散った。
「「「はぁぁーー!?何故だ?!」」」
ダラァー侯爵と執事と法衣を来た術師は綺麗にハモった。
皆同じ様に口を大きくあんぐりと開け、瞳は飛び出さんばかりに見開いていた。
「おおっおい!不良品を持って来るな!早く違う物をつけろ!」
慌てて執事と術師が隷属の首輪をつけようとするも、またも粉々に砕けちる。
『ふむ!甘味のお土産はこれくらいで良いかのう!では我は帰るのだ!ありがとうなのだ!』
銀太はお礼を言うと、転移魔法を使い姿を消した。
いきなり銀太が消えたのでダラァー侯爵達はパニックに。
「何だ⁉︎何がおこったんだ?消えたぞ!見たよな?お前達!」
「みっ見ました!」
「あれはもしや人では無い何かなのでは?」
「人では無い何かとは……では何だと言うのだ!」
「それは……」
ダラァー侯爵は自分達に何が起こったのか理解出来ないまま、悔しそうに菓子店を去った。
消えた銀色の獣人(フェンリル銀太)とダラァー侯爵はこの数時間後にまた再開する事となるのだが……。
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