【龍王様の箱庭】━━千人いるハレムの中で……私が龍王さまの運命のつがい!?

大福金

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第1章 龍王様の番

寝室で……

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「えっ!? 翠蘭!? ちょっと、そんな慌ててどうしたの? 謁見はどうなったのよ?」

 部屋に通じる廊下で明々とすれ違い、大股びらきで血相を変えて走っている私を見て驚いている。

「明々ごめんね、今はそれどころじゃないの! また後で説明するから」

 すれ違いざまにそれだけ言い、部屋に慌てて入って行く。
 明々はそんな私の姿を、ポカンと口を開け不思議そうに見ている。ごめんね、後でちゃんと説明するから。

 紫苑様はと言うと、部屋の中には入って来ず「結婚していない淑女と、部屋で二人きりになるのはいけない。私はドアの外で待機している」と言って入って来なかった。なんて紳士なのだろう。

「さぁ急げ~!」

 私は必死に薬草庫から薬をあさる。

「ええと……」

 化膿を治す薬はこれ! 壊死した皮膚を治す薬……は作ってない! 薬草を持って行って作らなきゃ。
 他にも色々と大きな籠に詰め込んで、籠を背中に背負い部屋を出た。
 すると私の姿を見た紫苑さんが「私が持つから貸しなさい」と籠を背負ってくれた。

「ありがとうございます」
「なんてことない。さぁ急ぎますよ」
「はい!」

 大きな籠を背負い、颯爽と走る紫苑さんの後をついて行くのだけれど、あまりにも籠が似合っていなくて、私が背負った方が良いんじゃと思ってしまった。
 もっと見栄えの良い荷物入れを用意していたら良かった。何だかすみません。

「では私は部屋には入れません。どうか飛龍陛下をよろしくお願いいたします」

 飛龍様がいる部屋の前で深々と私に頭を下げる紫苑様。

「大丈夫です! 私に任せて下さい。ですから頭を上げて下さい」

 紫苑様が大きな扉を開け私は中に入っていった。

「飛龍様!」

 中に入ると、龍の姿でなくなり人の姿になった飛龍様が倒れていた。
 急いで駆け寄ると、顔や手の一部が鱗のようになっていた。そしてその鱗の部分が黒ずんだ紫色に変色していた。
 
 これは完全に龍化が解けていない? もしかしてこの紫になった鱗のせい?

「……すい、らん……なぜ戻ってきた? 我に……近寄っては……ならぬ」

 私に気づいた飛龍様が、閉じていた瞳をパチリと開くと、少し苦しそうに私を見る。

「私は人族です! 腐死病この病気にはなりません。だから看病させて下さい!」
「……すま……ぬ。番……選びどころでは……なくなったのう」

 泣きそうな顔で笑いながら私を見る飛龍様。
 そんな顔しないで下さい。私まで泣きそうになります。

 とりあえず、飛龍様を硬い床で寝かせてられない。ちゃんとベットで寝て貰わないと。

「飛龍様、この部屋にベットはありますか?」

 私がそう聞くと、右手を少しだけ上にあげ左奥にある扉を指差した。

「……あそこに……寝室が……ある」

 あの場所か……背の高い飛龍様を背負って、私が連れて行くには流石に無理がある。辛いかもしれないけれど、飛龍様に自分の足でどうにか歩いて貰わないと……。

「飛龍様、私が肩を貸しますので寝室まで歩けますか?」
「…………すまぬな……ぐっ……はぁ」

 飛龍様は手で床を押し苦しそうに座る。

「大丈夫ですか」

 私はそんな飛龍様に手を貸し支える。飛龍様は座った状態で私の肩に手を回し……そのまま一緒に立ち上がった。

「寝室まで一緒に頑張りましょう」
「…………くく、翠蘭は……強いのう……くっ」

 苦しいはずなのに、私に気を使い無理に話そうとする飛龍様。
 優しすぎます。今は自分の事だけ考えて下さい。
 どうにか寝室まで歩き飛龍様をベットに寝かせる事が出来た。

「すい……らん、ありがとう」
「そんな事良いですから、とりあえずこの薬を飲んで下さい。これは痛み止めに化膿止めが入った薬です!」

 私は飛龍様の肩をだき薬をゆっくりと飲ませた。

 薬が少しでも効いてくれたら良いのだけど。

「しかし……大胆……よのう? 寝室に……入ってくるとはのう?」

 私が薬の効果を気にしていたら苦しいはずの飛龍様が悪戯に笑いながら大胆と言った。

 大胆? 
 何が?

 私は飛龍様に肩を貸して寝室に……!?

「ヒャわああああっ!?」

 冷静に考えたら私とんでもない事してない?

「ああああっの! 私、新しい薬を作っテキマスですよ」
「くくっ……」

 動揺する私の姿を見て笑う飛龍様に気づきもせず、私は慌てて寝室を出ていった。せっかく笑っている飛龍様が見れたのに。

 パンパンと両手で頬を叩き落ち着こうとするんだけれど。
 どうしても脳裏に浮かんできてしまう
 さっきの事を思い出すな私! 

「ダメダメ!」

 考えたらダメと思えば思うほど……肩を貸した時に私の頬に触れる距離で飛龍様の顔があったなぁとか、男の人とあんなに密着したのは初めてだとか……

「あああああああああああっ」

っと変な声を出しながら、必死に薬を作るのだった。
 

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