【龍王様の箱庭】━━千人いるハレムの中で……私が龍王さまの運命のつがい!?

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第1章 龍王様の番

番の審査

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 明々と朝食を食べた次の日。

 驚くべきことが起こった。

 龍王様の側近である【紫苑様】が数人の部下を連れ、私の部屋を訪れたのだ。
 紫苑様は表情を変えず淡々と私に話を告げると、手紙を渡し部屋を出ていった。

「では三週間後お迎えに上がりますね」
「え……はっ、はい!」

 突然の出来事に、私の頭はずっとパニック状態で混乱し、紫苑様が何を言ったのか全く脳内で理解できていなかった。

 少し冷静になり、お茶を飲みながら渡された手紙を読み、私はことの重大さを知るのだった。

「ちょっと待って!?」

 手紙には三週間後、龍王様と謁見って書いてある! しかもその謁見は番の審査であるため、私と龍王様以外には他に誰もいないと書いてる!
 おまけ程度にその時に、褒美を渡すって……!

 つつつっ、番の審査……!? 私が一番って書いてある。

 嘘でしょ!? 貴族様を差し置いて私から審査を始めるの?

 どうして!?

 あっ……褒美の事があるからか。その方が一回で済むものね。
 それはそうなのだけど、褒美なんていらないから一番は嫌だよう!
 だって……。一番だと、審査でどんな事をするのか情報が全くない。
 少しでも審査の情報があった方が、少しは緊張しないもの。
 どうせなら、最後の方で良かったのになぁ。

 ———ん? 

 ……そうか。どうせ選ばれないのは分かっているから、初めに終わった方が良いのかも。
 そうだよね。良い方に考えよう。
 番の審査が終わった後も、私たちは好きにこの龍王国で居ていいと言ってくれた。お父様たちの村に戻ることも可能だと。
 よく考えたら、良いことばかり。

「ふふふ」

 龍王様と会うのはすごく緊張するけれど、三週間後には私は自由なんだ。

 後でこの事を明々に話したら、「ずるい~っ」と羨ましがられた。


★★★


 後一週間で、番の審査かぁ……。
 決まってからの二週間は早かったなぁ。審査の時に着る式典服の採寸に丸二日もかかり。
 わざわざ私のサイズで作ってくれるとか……そんな高価な服を着た事ないから、採寸されるだけで緊張する。

 さらに龍王様にお会いした時に、失礼がないように礼儀作法の勉強。これが一番キツかった。貴族の作法なんて全く知らないから。

 そんなキツかった礼儀作法のお勉強も、今日でやっと終わった。先生から「これなら安心ね」と言って貰えたし。

 やっと大好きな薬草を触れる。忙しく二週間も薬草に触れていなかった。こんな事どれくらいぶりだろうか?
 私は薬草を煎じながら、最近の出来事を思い出していた。

「よしっ、これで作りたかった薬は全て完成ね」

 作り終えた薬を棚に並べていく。陳列された薬の瓶を見るとニヤニヤしてしまう至福の時。

「どうしよっかな」

 窓から外を見ると、今宵は一段と眩しく月が輝いている。

「……樹の木さんの所に言ってみようかな」

 もしかしたら飛様の龍の姿を見る事ができるかも知れないし。

「よしっ行ってみよう」

 籠を背負うと、勢いよく樹の木さんの所に走って行った。
 今日もこっちだよと言わんばかりに月明かりが樹の木さんの場所まで案内してくれる。

「…………あっ」

 樹の木さんの場所に辿り着くと、飛様が樹にもたれかかる様にして眠っていた。初めて会った時を思い出す。

 相変わらず美しい。
 男性なのに美しいの褒め言葉がこんなに似合うとか、なんだかずるい。

 近くまで近寄ると、パチリと飛様の目が開く。

「今日はもう来んのかと思っとったぞ」
 
 言われてみれば、今日はいつもより遅いかも知れない。

 そんな風に言われたら、飛様がまるで私の事を待っているみたい。
 勝手に勘違いして頬が熱くなる。

「その……今日は薬を作るのに必死でして……その成果があって、最高の薬ができました!」

 私がそう言うと、優しく微笑む飛様。

「そうか。其方は薬草や薬の話をしておる時が、一番楽しそうだのう」
「だって大好きな事ですから」
「くく。そうか」

 私をみて楽しそうに笑う飛様。そんな変なこと言ったかな?

「所で、翠蘭よ? 龍王と会うのであろ?」
「えっ……飛様まで知ってるんですか!?」
「ん? まぁ……たまたま聞いての?」

 そうか……飛様も龍王様の側近なんだわ。だから色々と知っているのね。

「初めはすごく緊張するし、一番は嫌だと思っていたんですが……」
「む? ふむ」

 そう言うと飛様が少し困った顔をする。
 いやって言ったからだろうか?

「私が選ばれるはずも無いので……だけどこの審査の謁見が終われば、私は自由なんだと思ったら嬉しくなって……」
「自由? 其方は龍王の番に選ばれたくないのか? ……龍王が嫌なのか?」

 飛様が少し寂しそうな顔で、私に質問してくる。まるで自分のことの様に、龍王様のことを心配しているのね。優しい。

「嫌いとかではなく。恐れ多いですし、私が番とは到底思えません……それにもしかしたら私の番はフェ……ゴニョ」
「んん? 恐れ多いとは思わんがのう? 最後はなんて言ったのだ? 私の番とか言うてなかったか?」

 あわっ、もしかしたら飛様が番かもしれないって、危うく心の声が出ちゃう所だった。

「聞きっ、聞き間違いだと……とにかく! 私は違うと思います」
「……そうか」

 私がそう言い切ると、飛様は横を向き黙ってしまった。
 その姿が少し寂しそうに見えるのは気のせいだろうか?

 その後はいつも通り、薬草を分けて頂き部屋にもどった。
 何だか番のお話をしてから、飛様の様子が少しおかしかった様にも思うのだけど。
 謁見までにもう一回、樹の木さんの所に行こうかな?

 などど考えていたんだけれど。

 一週間があっという間にすぎ、気がつけば謁見の日となっていた。

「この扉の奥に龍王様がいらっしゃいます。くれぐれも無礼のない様に」
「はい」

 紫苑さんに案内され、豪華な扉の前に立つ。
 この奥に……龍王様がいるのね。

 紫苑様が扉をノックし、開いてくれる。
 緊張し心臓が今にも飛び出しそうだ。

「さぁ、中に入れ」
 
 紫苑様にそっと背中を押され中に入る。私が部屋の中に入ると、扉がガチャリと閉められた。
 
 




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