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第1章 龍王様の番
私が番!?
しおりを挟む樹の木の場所から無我夢中で部屋に戻って来た。もうどんなふうに帰って来たのかさえも思い出せない程に、動揺していた。
「はっ……はぁ……はぁっ」
部屋に入るなり勢いよくベットにダイブすると、気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸し、息を整える。
だけど……何度深呼吸しても、心臓の鼓動は激しくなるばかり。
落ち着け私。気のせいだよ!
たまたま赤く光って見えただけかも知れないんだから。
そんな簡単に番とか見つかるわけないもの。
だってほとんどの人が番に出会えないって言ってたもん!
あれはきっと……何かが反射して、飛様が赤く輝いたように見えただけだよ。
「うん! そうだ、それに違いない」
今度、龍の姿を見せてもらったら、きっと誤解だってわかる。
だから……落ち着け私の心臓。
なのに、もしかしたらって気持ちがあるからか、顔の火照りも心臓の激しい鼓動もおさまらない。
……こんな時は、リラックス効果のある茶葉でお茶を作ってのもう。
乾燥しておいた茶葉を茶器にいれお湯を入れる。
するとふわ~っと心地よい香りが広がる。この香りを嗅ぐだけでも心が落ち着いていくのが分かる。
茶葉が茶器の中で花が咲いたように広がると、飲み頃。
それを口にごくりと流し込む。
「ふぅ~……やっと落ち着いた」
動揺しすぎだよ。私。
「ふふっ」
さっきの自分の姿を思い出して何だか可笑しくて笑ってしまう。
「あふ……」
落ち着いたら今度は急に眠くなってきた。
ふと籠を見ると中にはさっき採ってきた沢山の薬草がいっぱい。
「……むにゃ」
目を開けようと抗うも、瞼が勝手に閉じようとする。
仕分けしたいけれど……明日の朝にしよう。
★★★
「……んん~?」
よく眠れた。リラックスできるお茶を飲んで寝たからかな?
両手を上にあげ思いっきり伸びをすると。
「おはよう翠蘭!」
「えっ?」
声の方を見ると。
机の上には豪華な朝食が並べられ、椅子に明々が座り私を見てニカっと笑う。
「新しい部屋が広くて落ち着かないのよね」
明々が困ったように言いながら、ふぅーっと大きなため息を吐く。
「ふふふ。確かにね」
「まぁでもさ? 朝食を中央塔までとりに行かなくても、この棟の食堂に運んで来てくれるのは楽になったけどね。翠蘭、ぼーっとしてないで顔洗ってきて一緒に朝ごはん食べよ」
「そうだね。分かった」
私はベットから降りると、部屋の奥にある洗面所にて顔を洗う。この新しい部屋にはお風呂に洗面所、更には水洗の厠まであるのだ。
本当に至れり尽くせりとはこの事。こんな生活をしていたら、怠慢な人間になりそう。
「朝食持って来てくれてありがとう」
明々にお礼を言って、向かい合って椅子に座る。
「どういたしまして、だって広い部屋で一人で食べても何も美味しくないもんね」
「確かにね。明々と食べる方が何倍も美味しいね」
「ふふふっ、翠蘭大好き」
たわいも無い会話をしながら食事を口に運ぶ。朝からそんな時間がとれるなんて幸せ。
「んん~! 美味し」
それにしてもここでの食事は、本当に美味しい。
全てのお野菜が新鮮で、それに調理方法も完璧。
毎回違った料理が出てくるから飽きない。
「ねぇ、ところで翠蘭? 龍王様からご褒美何かもらった?」
「え? ご褒美? 何も貰ってないよ」
なんのご褒美なのか……。私はまだ龍王様にもあった事ないって言うのに。
「あれぇ? おかしいなぁ。この前の謁見の時に、翠蘭の事を龍王様に聞かれてね? 褒美をって……言ってたんだけどなぁ」
「ごふっ、はええええ? 龍王様が私の事を聞いたの?」
急に辺な事を言うから、食べたものが喉に詰まるところだった。
「うん。あの時いなかったのは翠蘭だけだったし……いない理由を聞かれて。私を助けてくれたから、謁見の場にいなかったって説明して……ええと、それで名前聞かれて……褒美をって言ってたんだけどなぁ?」
そう言いながら明々が首をコテンっと傾げる。
嘘でしょ……そんな事になっていたなんて。私はてっきり……あの時私を運んでくれた龍人が私の事を明々に聞いて、近くにいた飛様も偶然名前を聞き、私の名前を知ったと思っていた。
まさか……龍王様が私の事を質問していたなんて……。
まぁでも、褒美なんてねぇ。忘れてるでしょ。
そんな風に考えていたのだけれど、事態は私の想像を超え。
三週間後、龍王様から直接褒美を頂く事になり、私はパニックになるのだった。
★★★
読んで頂きありがとうございます。
さて、翠蘭はこの後どうなるのか? さらなる誤解を生み、変な方向へと進んでいきそうなのですが、ここからドンドン盛り上がっていく予定です。
この先もお楽しみいただけると嬉しいです。
少しでもワクワクして頂けたなら、コメントで教えて頂けると執筆の励みになります。実は嬉しくて毎回ぴょんぴょん跳ねて喜んでます。そんな作者を跳ねさせたい優しい読者様。お待ちしております。
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