【龍王様の箱庭】━━千人いるハレムの中で……私が龍王さまの運命のつがい!?

大福金

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第1章 龍王様の番

龍王様に会える?!

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「……樹の葉っぱ。宝物にしよう」

 胸にしまった樹の葉をチラリと確認すると、自然と笑みがこぼれる。
 何とも言えない気持ちで心が満たされ、部屋に戻っている足取りが、フワフワしているのが分かる。だって先ほどの不思議な出来事を、樹の葉を見る度に思い出してしまうのだから。

「お帰り~翠蘭」

 部屋に戻ると明々が起きていた。

「こんな時間にどこ行ってたの?」
「え? ちょっと……夜風を浴びに?」
「なんで疑問系なのよ。起きたら翠蘭いないしさぁ、ちょっと心配しちゃったじゃん」

 明々が少し口を尖らせた後、クシャリとはにかんで笑う。

「ふふふ。その調子ならもう大丈夫だね」
「そう、そうなの! 翠蘭ありがとね。飲ませてくれた薬が効いたんだよ。傷跡も薄くなったし、こんなに効果があるなんてこの薬すっごく高いんじゃ……」

 自分についた痣を見たあと、申し訳なさそうに私を見つめる。きっと自分なんかに高価な薬を使わせてしまって、などど考えているんだろう。

「大丈夫だよ。それは私が調合して作った薬だから、高くないよ」
「で……でも、効果のある薬草を買うのも高いでしょ?」
「薬草も私が自分で採取した物ばかりで、買ってないから! 安心して」

 だってその薬草は、樹の木がある秘密の場所で採って来た物ばかりなんだから。

「……そうなの?」
「そうなの!」

 そんな事を考えると、また先程の事を思い出してしまい顔に熱が集まるのが分かる。

「んん? 翠蘭の顔赤くない?」

 明々が顔を覗き込んできた。

「ああああっ赤くないよっ! さっ、まだ朝まで時間あるし。も一回寝よ寝よ」

 私は話をそらす様に、明々が座っているベットに慌てて潜り込んだ。


★★★


「んん~っ! よく寝た」

 窓から入ってくる木漏れ日が、寝坊したんだよと教えてくれる。

「寝坊しちゃったね。ん? 明々?」

 明々に向かって話しかけると。
 隣で眠っていたはずの明々が、ベットからいなくなっていた。
 慌ててベットから飛び降り、明々を探そうと扉に向かうと、扉が外側から開けられ。

「え?」

 驚き固まっていると。

「おはよ~翠蘭! 朝食を貰ってきたよ」

 明々は両手に朝食を持ち、足で器用に扉を開けながら元気よく入ってきた。

「わぁ! こんなにいっぱい。よく手に入れられたね」
「えへへ。昨日のせめてものお礼にと思ってね。朝食が配られるのを並んで待っていたんだ」
「明々っ! ありがと」

 気持ちが嬉しくって、明々をギュッと抱きしめる。

「わっ!? いきなり抱きついたら、折角の朝食を落としちゃうじゃん!」
「ごめん。ごめん。嬉しくって」

 私たちが食べるご飯は、時間になると建物内にある大きな食堂に、色々な料理を龍人族の人が用意してくれる。それを私達は毎回取りに行くのだ。

 貴族様は、自分が連れてきた侍女などが朝食も取りにいってくれるけれど、私たち平民は自分で取りに行かないといけない。
 それに時間に遅れると、ほとんど食べ物が残ってなかったりする。

 その理由は、貴族の侍女が根こそぎ持って行ってしまうから。かなりの量を用意してくれているのに残らないって。
 どうせ半分以上残すのだから、食べる分だけ持って行ったら良いのにと、ゴミ収集場所に廃棄された料理を見て、毎回思ってしまう。
 貴族様ってのは何かと見栄っ張りだ。

「そうそう! それでね? モグッ……ゴクン。氷水ビンスイ様の侍女が話していたのだけれど、どうやら私たちのお屋敷に龍王様が来るらしいの!」
「もぐもぐ……ゴクッ!? ふぇえ?」

 龍王様が私達のお屋敷に!? なんで? このお屋敷を訪れるのは、まだずっと先だと思っていたのに!

「その話本当なの?」
「マジっぽいよ? 新しいドレスを用意しろって、氷水様が躍起になってるんだって。それで『そんなすぐに用意できないよ』って困ってた。だって氷水様って巨漢デブアレな体型だしね?」

 明々が悪戯っ子みたいに笑う。昨日あんな怖い目にあったのに、そんな事が言える明々って本当芯が強いんだなと改めて思う。普通なら怖くてバカに出来ないと思うんだけれど。

「明々は強いね」
「ええ~? 私達は雑草だからね? 踏まれてもすぐ元気に起き上がるんだ。そうしないと生きていけないよ」
「ふふっ。そうだね」
「「ねーっ」」
 二人で顔を見合わせて笑い、用意してくれた朝食を再び口に入れる


 ……そうか。
 やっと龍王様が見れるんだ。
 こんな箱庭ハーレムを作るなんて、一体どんな人なんだろう。
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