上 下
162 / 164
やり直しの人生 ソフィア十四歳スタンピード編

第二百十話 凱旋パーティ

しおりを挟む
「フィア、大丈夫かい? 疲れたんじゃ」
「ありがとうございます。私よりもアイザック様の方がお疲れじゃ……」
「ふふ。ありがとう僕は大丈夫さ」

 奥にあるソファーにもたれかかり、デトックスティーを飲んでいたら、アイザック様が心配そうに話しかけて来た。
 その手にはアルコールが入ったグラスを持っている。
 この世界では十三歳から成人扱いとなるので、十四歳の私たちはお酒を飲んでも大丈夫なのだ。

 そうパレードの後。

 王宮にて凱旋パーティが開かれた。
 招待されたのは、スタンピードで魔獣討伐に向かった騎士の皆さんとその身内。
 私はというと……主賓として招待された。普通の招待でいいのに……。

 そのパーティで私は主賓という事もあり、みんなの前で挨拶しないといけない訳で……ドキドキしていたら「女神様から栄えある一言が聞きたい」などと言い出す人達のせいで、変な緊張が加わり一気に気疲れしてしまった。

 挨拶の後も、涙ながらにお礼を言われたり……拝まれたり、握手してくださいと言われたり、と全く落ち着く暇がなく。ずっと誰かに囲まれていた。
 それはお父様たちも同じで……。

 一時間ほど経つと。

 お酒の効果でそれぞれが楽しみだしてくれたので、ソーっと会場の端っこにあるソファーに逃げてきたのだ。

 そこへアイザック様がやってきたというわけ。
 私は昨日の夜に帰ってきて、ゆっくり寝ているから全く疲れていない。
 精神的には疲れているけれど(さっきの事で)

 だけどアイザック様は違う。
 今日帰ってきてその後すぐにパレードをし、さらに落ち着く間もなく凱旋パーティをしているのだ。

 全くゆっくりする暇がない。

 少し心配そうにアイザック様を見るも、いつも通りの王子様スマイル。
 全く疲れを感じさせない。

「全く寝てないと思うのですが、お身体は大丈夫ですか?」
「心配してくれるのかい?」
「当たり前ですよ! だって全く寝てなかったわけですし……」
「ふふふ。そうだね、流石に少し眠いかもしれないね。フィア、僕のお願いを聞いてくれる?」

 アイザック様が小首を傾げてお願いしてくる。毎回このおねだり断れない。

「もちろんです」

 私がそういうと、「ありがとうフィア」そう言って私の横に座ると、フワリと頭を私の膝の上に乗せてきた。

「ひゃっ!?」
「んん? どうしたんだい? 少しここで眠らせてもらうね」

 驚く私を見て、小さく口角を上げ悪戯に笑うと、そのまま目を閉じてしまった。

 ちょっと待って! 
 これって膝枕だよね。子供の時はよくしていたけれど……成人してからは……あった?
 なかったよね? もう分からない!

 どうしよう。太ももに伝わるアイザック様の頭の重みと……距離が近いせいで微かに聞こえる吐息と……。

 なんだかソワソワして、居ても立っても居られない。

 もう顔に熱が集まってきているのが分かる。

 顔が熱い。

 心臓だって、恐ろしいくらいに早鐘を打っている。
 スタンピードの時だって、こんなに速い鼓動にならなかったというのに。

 おねだりアイザック様の破壊力……恐ろしや。

 緊張して背筋がぴーんとなっている。
 自分の手の位置も、どこに置いたらいいのかよく分からず、腕組みをしている。
 背筋を伸ばし腕組みしている私の姿……側から見たら絶対におかしいのは、なんとなく分かるのだけど、どうしたらいいのか分からない。

 小さな時は、頭をヨシヨシしていたけれど、今のアイザック様をヨシヨシする勇気はない。

 だってドキドキしてしまうから。

 そんな私の元へ笑いながらやってくる男性が。

「アハハッ、ソフィアお前なんてポーズしてんだよ! 勇ましいなっ……って……アイザック!?」

 アレス様が私の出立ちを見て、ガハハと笑いながらやってきた。

 その後すぐに、私の太ももの上で寝ているアイザック様に気付き、少し驚いている。

 アレス様、頬がほんのりと赤いので酔っているのかな?

「ん?」 

 今、アイザック様の方から「チッ」っと舌打ちが聞こえたような……。

「ったく空気を読めないのは相変わらずだね?」

 横になっていたアイザック様がスッと起き上がり、少し苛立ちながらもアレス様の所に歩いて行く。

「何がだよ? ソフィアも一緒に今日は飲もうぜ!」

 アレス様が私に、アルコールが入ったグラスを渡してきたのだけれど、それをアイザック様が奪い飲み干す。

「何してんだよっ! それはソフィアに持ってきたのに……」
「分かった、分かった」

 アイザック様はそう言いながらアレス様の肩を抱く。

「あっちに良い葡萄酒があったんだ。それを取りに行こうよ」
「なに? ほんとか? 俺、葡萄酒好きなんだよな」

 アイザック様はアレス様を連れて歩いていく。
 一度私の方に向かって振り返ると「また後でね」っと片目をパチリと閉じてそういった。

 なんだか分からないけれど……アイザック様がカッコよく見えた。
 いや……いつもカッコいいんだけどね。

 この後、「ソフィア様こんな所にいらしたのですね」っとシャルロッテがやってきて、その後からジーニアス様、ファーブル様までもが私の所にやってきた。

 まだまだ凱旋パーティは続きそうだ。



★★★


 本日、白豚令嬢の巻き戻りの【電子書籍】の発売日です。
 紙より電子派だーって読者様。良かったら手に取っていただけると嬉しいです。もちろんどっちもだーなんて言って頂けると……ドキドキ。

 更新が毎回遅くなってすみません🙇‍♀️
 

 コメントもありがとうございます😭いつもはげみになっています。なかなかお返事返せず申し訳ありません。全て読んでます♡♡





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。