嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金

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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百九十六話 密談

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「大丈夫ですか?」

 馬車の揺れが急に激しくなってきたので、横にいる少年を気遣う老紳士。
 どうやら彼は横にいる少年の執事の様だ。
 
「ああ。ルクスありがとう、平気だよ。しかし、初めて来たが……本当にずっと吹雪いているんだな」

 少年は不思議そうに馬車から見える景色を見つめる。

「ええ。この地は年中豪雪地帯ですので、不思議ですよね」

 二人は吹雪の音や白銀の景色を不思議そうに見ている。

 それもそのはず、ほんの数十分前までは晴天で蒸し暑いくらいだったのだから。
 だが今は、持ってきていた毛皮を羽織っている。それほど気温が急変した。
 魔道具によって、ある程度は馬車の中も快適な温度になっているはずなのだが、今はそれを超えた寒さ。このまま外に出れば、ものの五分で凍ってしまうだろう。

 この場所はリストリア帝国最果ての極寒の地、ナンキョックゥー。この地には、寒獄の要塞とも言われている修道院がある。
 修道院には一大騒動を巻き起こした令嬢、アイリーン・ヒロウナも暮らしている。

「アイリーンが対処法を分かっていれば良いのだが」
「それは私にも分かりかねますが、そうだと良いですね。あっ……修道院が見えてきましたね」
  
 どうやら二人はアイリーンに用があるようだ。
 

「では……行くか」
「はい」


★★★


 同時刻。

 ソフィアはグレイドル邸にある【魔法訓練施設】にて、魔法の特訓をしていた。

「もっと魔力をギュッ濃縮したイメージで!」
「えいっ!」
「そうそう!」

 豪華な魔道具がこれでもかと設置されたグレイドル魔法訓練施設にて、私はファーブル様に魔法を教えて貰っている。
 もともと魔法訓練施設などなかったのだけど、ある日の事。

 シルフィ達と魔法の練習を、いつものように森の入り口付近でしていたら、森の入り口の木々が全て消えた。

 もちろん木々が消えたのは、私が魔法の操作を誤り、消し飛ばしてしまったのが原因なのだけど。

 この事で怒ったのが精霊王様。
 精霊の力が宿る大切な木々を消されてしまったのだから。
 沢山の甘味を渡してどうにか許して貰った。
 だけど精霊の森近くでの魔法訓練を禁じられてしまった。

 ……自業自得なんだけど。練習が出来なくなるのは困るなぁ。

 お屋敷で魔法の練習が出来ないから、どうしたもんかと悩んでいたら『練習出来ないなんて! フィアたんが可哀想』と、お父様が魔道具を駆使した魔法訓練場を建ててくれた。
 この施設は魔法学園の練習場よりもレベルが高い。
 お父様? さすがにヤバすぎですよ、魔法学園の施設を上回るとか。出来上がった時、驚きすぎて声裏返っちゃったじゃないですか!

「うん! 良い感じだよソフィア。広範囲ではなくて、小さな範囲に強力な魔力をギュッと濃縮出来ている。これならどんな魔物も一撃で終わりだな」

「やったー! 魔力調整のレベルが上がってきてるって事ですよね」

 褒められて嬉しくて、ついその場でピョンピョンと飛び跳ねてしまう。

「ふふ。そうだね」
「これもファーブル様のおかげです!」

 ファーブル様と笑い合う。

 精霊王様が言っていた、スタンピードが近々起こるとの予言から、はや二週間の時が過ぎた。
 なぜ私は魔法の練習を必死にしているのか?

 それには理由がある。

『いつ発生するか? などの詳しい日程は分からないのう』と精霊王様に言われ初めは愕然としたが、時を長く生きている精霊王様の近々というのが、半年と分かりホッと胸を撫で下ろし、来たるその日までに魔法訓練することを決めたのだ。

「フィア。イチゴケーキを持ってきたよ」

「イチゴケーキ♡  わぁアイザック様! ありがとうございます。甘いものが欲しかったんです」

 私は休憩しましょうと、訓練場に設置された寛ぎスペースへとご機嫌に向かう。
 その後をファーブル様とアイザック様がついて来る。

「アイザック……ケーキの配達ありがとう♪」
「ファーブルに持ってきたんじゃないけどね?」
「ええ? つれないなぁ」
「あ~。はいはい」

 三人が寛ぎスペースに入ると、すぐに扉が再び開かれる。

「おう! 剣の練習にきたぜ」

 アレス様が練習に来たとガハハと笑いながら、寛ぎスペースに入ってきた。

「アレス? 練習なら、ここじゃないよ? この場所は休憩するところだからね」

 アイザック様がそう言うも。

「おおっイチゴケーキじゃねーか! 俺好きなんだよな」

 そう言って、何食わぬ顔でソファーにドカッと座るアレス様。空気を読まないのは天才的ですね。

「はぁ……これはお前じゃなくて、ソフィアに持ってきたんだが?」
「アイザック? そんな硬いこと言うなよ。女々しいぞ?」
「うるさいよ!」

 そんな二人を見かねた私は間に割って入る。

「まぁまぁアイザック様。美味しい物は、みんなで楽しく食べた方が美味しいから。仲良く食べましょ?」

 そう言って満面の笑みを浮かべる。

「「「ぐっ……」」」

 するとなぜか三人は黙ってしまった。
 どうしたのかな?




 ソフィア達が仲良くイチゴケーキを頬張っている中。
 ジーニアスだけは別の場所にいた。



「ヒロウナ譲。久しぶりだね」
「…………ジーニアス様!?」



★★★


コメントありがとうございます。返信できなくて申し訳ありません。全て読んでニマニマしています。
執筆のやる気につながってます。感謝。お返事返せる時に、必ずさせて頂きますので気長に待って頂けたらと。

そんなわけで、コミカライズは読んでいただけましたか?
めっちゃ良かったですよね?
私は毎回動くソフィア達に癒されております。

今回はジーニアスをカッコ良く描いていただけて、大満足の私です。
終わり方のせいか、コメントを見るとジーニアスの評判がよろしくない。次話で好感度上がって欲しいなと願ってます。

私が一番キュンっとトキメイたのは、ソフィアのお父様アレクの痩せた姿。
めちゃめちゃカッコ良きでした。

漫画家様に、アレクのイメージを伝えるのに、ずうずうしくもデップ様の画像を送った私。

色気があるイケオジ様が、アレクのイメージだったのです。
そんな無茶振りを、漫画家である甲羅まる大先生は叶えてくれたのです!
はぁ♡感謝

そんなお話を聞いちゃって、再びアレクを見ると……見えてきますよね?♡

次のコミカライズの更新日は、5月2日予定です。次の更新日まで私はワクワク待機です。

本業の仕事の忙しさピークも過ぎましたので、白豚令嬢の更新を定期的にしようかと思います。
毎週金曜日の六時です。

よろしくお願いします。






 
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