上 下
145 / 164
やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百九十三話 束の間の日常

しおりを挟む
「フィアたん! 無事でよかった」
「ソフィアちゃん」

 ルーンを連れてお屋敷に帰ると、お父様とお母様にギュッと抱きしめられる。
 二人とも顔が青ざめお母様に至っては目が真っ赤だ。
 どうやら先に学園から、ダンジョンで何があったのか連絡があったらしく
 心配してお屋敷のホールで二人揃って待ってくれていた。

 魔法鳥からのメールを見てお父様はワナワナと震え、お母様は卒倒したらしい。
 一体どんなふうに伝えたのだろう? 
 もしかして……ありのままを伝えたんだろうか?
 ふと、みんなが恍惚とした表情で、私の事を女神様と呼んでいた姿を思い出す。

 ———ひっ!

 まさかあれを? 困ったな。なんて言い訳しよう? なんて考えていたら。

「こんな事ならダンジョン研修なんて行かせなければ良かった。何が一悶着だ、そんなレベルじゃないだろーが! 死んでもおかしくない状況じゃないか」

 お父様が頭から湯気を出し、ブツブツと怒っている。そんな姿をお母様が冷ややかな目で見ている。

「アレク怒る気持ちも分かりますが、少し落ち着きましょうね? 今はソフィアちゃんの無事を喜びましょう?」

「あっああ。そうだったね」

 お母様に冷たく注意され、冷静になったお父様が私を見て微笑む。

「お父様、お母様、心配をおかけして申し訳ありません」

 私は改めて二人に頭を下げた。そして頭上をフワフワと浮かぶルーンをチラリと見る。
 新たに妖精と契約した事も伝わってるよね?
 だからルーンの事も話とかないと。

「あのう……それで……この頭上を飛んでいるのが、新たに契約したルーンです」

「「え?……契約?!」」

 お父様とお母様が目をまん丸に見開き驚いている。
 あれ? 妖精と契約した事は伝わってない?
 もしかして余計なこと言っちゃった?

「フィフィ……フィアたん? よっ妖精と契約って!? また増えたの!?」

 お父様が慌ててキョロキョロと見回し、ある場所でピタリと止まり目を細めた。それはルーンがフワフワと浮かんでいる所。

「私にはハッキリ見えないが、あの辺りを飛んでいるのが、新たに契約した妖精かい?」
 お父様がそう言ってルーンがいる場所を指差す。

 小さな頃からたくさんの妖精さん達が私の周りに居たので、お父様もいつの間にか妖精の光を捉える事は出来るようになっていた。

「新しく契約した闇の妖精ルーンです」

 そう言うとルーンが私の肩に乗る。

「……闇の妖精?」
「はい。このルーンがいなければ、私たちはダンジョンから無事に脱出する事は不可能だったと思います」

 私はそう言ってルーンの頭を人差し指で撫でる。

「おおおっ! ルーン様ありがとうございます。貴方様のおかげでソフィアは元気に帰ってきてくれました」

 お父様は何度も何度もルーンに向かって頭を下げた。
 そんな姿を前にルーンはと言うと。

 ーーそっそんなっ……僕だってソフィアに助けられたわけだし……

 ルーンは少し照れ臭そうに私の後ろに隠れてしまった。

 ふふっ……照れているけれど、嫌なわけじゃなさそう。

「さぁさぁ、ご飯を食べましょう。今日はソフィアちゃんの好物ばかりを用意したのよ」
「わぁ♡」

 お腹空いてたんだ。ふふふ楽しみ。




★★★




 食事を終え部屋に戻ると、私のベットで我が物顔で寝ているもふもふ二匹。
 可愛いフェンリルのリルと……精霊王様。

 ウサギ姿の精霊王様は腹を出し、気持ち良さそうにプスプスっとイビキをかきながら寝ている。

 王の威厳はどこに?

 ーーソフィア! おかえりっ。

「リルただいま。良い子にしてた?」

 いち早く私の姿に気付いたリルが私を見つけ飛びついてきた。
 はぁ……ほんっと可愛い。
 私はリルを抱き上げフワフワのお腹に顔を埋め、めいっぱい匂いを吸い込む
 お日様の良い匂い……癒される。

 ーーふふっくすぐったいよソフィア。

「だってリルが可愛いんだもん」

 私がリルと戯れていると。

 ーーお帰りソフィア……!? おっお前っルーンじゃねーか!

 シルフィがどこからか飛んできて、私の肩に座るルーンを見て驚く。

「ただいまシルフィ。ルーンの事知ってるの?」

 ーーそりゃあね。妖精王は皆知ってるよ。ただルーンだけはずっと……何百年も存在すら分からなかったから。
 ーー久しぶりだね。シルフィ。まさか君までソフィアと契約しているなんて。

 ルーンがシルフィの所に飛んでいき、二人は仲良さそうに握手を交わす。

 ーーははっ契約してるのはオイラだけじゃないけどな?
 ーーえ?
 ーーどうも~♪私もいるわよ。
 
 ひょこっとウンディーネが顔を出す。

 ーーはぁ!? ウンディーネまで!?

 この後さらにノームや精霊王様の事まで知り、信じられない! ソフィアは何者なんだ!? っとルーンは目を回すのだけれど。
 

 気持ち良さそうに寝ていた精霊王様の爆弾発言で、それどころじゃなくなってしまった。


★★★

 ホワイトデーに♡♡♡
 コミカライズ最新話更新です。
 もうね。小さなソフィアとアイザックが可愛すぎなんです。
 アーンの所で悶え癒されました。
 ぜひ私と同じ気持ちになってくださいね♡

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。