上 下
143 / 164
やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百九十一話 ルーンの過去

しおりを挟む
 見つかったのは良いんだけど、ルーンはぐったりと動かない。

「ルーン!?」

 みんなにはその姿は見えないから、それが分かるのは私だけ。
 ルーンに近寄り両手でそっと持ち上げる。
 そんな私の姿をみんなは不思議そうに見ている。
 アイザック様とシャルロッテの二人はルーンの姿は見えていないけど、光を感じ取っているようだ。

「フィア? その手にルーンがいるんだよね?」

 アイザック様が私の手をジッと見つめる。

「はい。でもグッタリしていて動かないんです。今にも消えてしまいそうで……」
「それは……ルーンの状態が良くないって事だよね?」
「……はい。せっかく見つける事が出来たのに」

 私が泣きそうな顔でそう言うと、アイザック様は少しの間黙り込んだ後、「じゃあフィアの魔力を送ってあげたら? だってフィアの魔力は精霊王様までも虜にする魔力だよ?」といって微笑む。

「私の魔力……」

 確かにシルフィやウンディーネと、妖精達はみんな私の魔力は美味しいって言っていた。
 やってみる価値はある!

 私は両手に魔力を集めるようにイメージする。
 魔力の送り方なんて正直分からない。だってみんな好き勝手に私の魔力を食べていたんだから。
 でも私の魔法はイメージで発動する、だからこれが正解のような気がしている。
 両手に気持ちを集中すると、手が光り輝いてきた。それは両手のひらで抱き締めているルーンの体も同じ。

 ルーンの体が白く光っている。
 これは私の魔力がルーンに届いている証拠。



 数分もすると。




 ーーううん? ふぇ?

 あくびをしながらルーンが起き上がる。

「ルーン! 目が覚めたのね」

 ーーうわっ!? ソフィア。そんなに強く握りしめたら苦しいよぅ。

「わっごめんね!」

 興奮のあまり、ぎゅっと強く握りしめてしまっていた。

 ーーふふ。ソフィアありがとう。

 わたわたと動揺している私の姿を見て。
 ルーンがクシャリと笑う。
 こんな幼い顔をしてたんだね。あの時はもっと大人なイメージだったなと思う。

 とりあえずルーンを助けられて良かった。アイザック様。アイデアありがとうございます。



★★★


 心配しているみんなにルーンの無事を報告する。

 見えてはいないけど、みんなが拍手喝采で喜んでくれた。


 落ち着くとルーンが過去の事をポツリポツリと話してくれた。

 ルーンがなぜ、このダンジョンに何百年も閉じ込められていたのか。

 それは。

 私が想像していた何倍も悲しくて壮絶な過去だった。

 映像で見た、残虐非道を繰り返していた王女。
 その女性王女こそが、ルーンと初めて契約を交わした人族だった。

 王女も初めは普通の人だった。普通よりもちょっと魔力は高かった程度の。
 だけどルーンと契約した事により、ちょっとでは無くなってしまった。
 誰も王女に逆らえないほどの、絶対的な魔力の持ち主となってしまった。

 闇の力で人々を恐怖で支配する。
 そのせいで王女は勘違いしてしまった。

 皆は自分の言う事を聞く駒だと。

 王女が怖くて誰も逆らえない。
 自身の父親である国王でさえも、王女を恐れ従うしかなかったのだから。

 そして私の見た映像。あの残酷な出来事が起こってしまう。

 ルーンはそれを悔やんだ。契約したことさえも後悔した。

 だから、王女と一緒に自分までこのダンジョンに封印した。
 もうこんな事が二度と起こらないようにと。
 無惨に殺され、このダンジョンに放置された魂を沈めるために。

 ルーンが悪くないのに。

 どうして全ての責任を、ルーンが背負うの?
 
 悔しくって泣けてくる。

 そんな人ばっかりじゃないのに。

 ルーンは初めて好きになった人に裏切られただけなのに。

 ーーソフィア? 僕のために怒ってくれてありがとう。

「そんなの当たり前だよ! だってルーンは悪くない。悪いのは王女だよ」

 ーーふふ。そうかも知れない。でも僕はね? 王女の事を嫌いになれないんだ。だからこの悲劇は僕の責任。

「それは……違う。うぅっ」

 もうなんで自分が泣いているのか分からない。でも涙が止まらない。

 ーーソフィア泣かないで? 僕はね君に感謝してるんだ。本当に。 何百年もこの場所で、怨みのせいで昇天できずにいた魂を、君は全て浄化してくれた。

「それは……偶然というか……たまたまと言うか…… 」

 突然功績を褒められ、涙がひっ込む。

 ーーふふ。面白い事を言う。たまたまで何百年も蠢いていた怨念が浄化されないからね? ソフィアありがとう。

 そう言ってルーンは私のおでこにキスをした。

 ん? 暖かい。これって!?

 ーーソフィアこれからよろしくね?


「ああああああ!?」

 どうやら私はルーンと契約しちゃったみたい。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。