嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金

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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百九十一話 ルーンの過去

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 見つかったのは良いんだけど、ルーンはぐったりと動かない。

「ルーン!?」

 みんなにはその姿は見えないから、それが分かるのは私だけ。
 ルーンに近寄り両手でそっと持ち上げる。
 そんな私の姿をみんなは不思議そうに見ている。
 アイザック様とシャルロッテの二人はルーンの姿は見えていないけど、光を感じ取っているようだ。

「フィア? その手にルーンがいるんだよね?」

 アイザック様が私の手をジッと見つめる。

「はい。でもグッタリしていて動かないんです。今にも消えてしまいそうで……」
「それは……ルーンの状態が良くないって事だよね?」
「……はい。せっかく見つける事が出来たのに」

 私が泣きそうな顔でそう言うと、アイザック様は少しの間黙り込んだ後、「じゃあフィアの魔力を送ってあげたら? だってフィアの魔力は精霊王様までも虜にする魔力だよ?」といって微笑む。

「私の魔力……」

 確かにシルフィやウンディーネと、妖精達はみんな私の魔力は美味しいって言っていた。
 やってみる価値はある!

 私は両手に魔力を集めるようにイメージする。
 魔力の送り方なんて正直分からない。だってみんな好き勝手に私の魔力を食べていたんだから。
 でも私の魔法はイメージで発動する、だからこれが正解のような気がしている。
 両手に気持ちを集中すると、手が光り輝いてきた。それは両手のひらで抱き締めているルーンの体も同じ。

 ルーンの体が白く光っている。
 これは私の魔力がルーンに届いている証拠。



 数分もすると。




 ーーううん? ふぇ?

 あくびをしながらルーンが起き上がる。

「ルーン! 目が覚めたのね」

 ーーうわっ!? ソフィア。そんなに強く握りしめたら苦しいよぅ。

「わっごめんね!」

 興奮のあまり、ぎゅっと強く握りしめてしまっていた。

 ーーふふ。ソフィアありがとう。

 わたわたと動揺している私の姿を見て。
 ルーンがクシャリと笑う。
 こんな幼い顔をしてたんだね。あの時はもっと大人なイメージだったなと思う。

 とりあえずルーンを助けられて良かった。アイザック様。アイデアありがとうございます。



★★★


 心配しているみんなにルーンの無事を報告する。

 見えてはいないけど、みんなが拍手喝采で喜んでくれた。


 落ち着くとルーンが過去の事をポツリポツリと話してくれた。

 ルーンがなぜ、このダンジョンに何百年も閉じ込められていたのか。

 それは。

 私が想像していた何倍も悲しくて壮絶な過去だった。

 映像で見た、残虐非道を繰り返していた王女。
 その女性王女こそが、ルーンと初めて契約を交わした人族だった。

 王女も初めは普通の人だった。普通よりもちょっと魔力は高かった程度の。
 だけどルーンと契約した事により、ちょっとでは無くなってしまった。
 誰も王女に逆らえないほどの、絶対的な魔力の持ち主となってしまった。

 闇の力で人々を恐怖で支配する。
 そのせいで王女は勘違いしてしまった。

 皆は自分の言う事を聞く駒だと。

 王女が怖くて誰も逆らえない。
 自身の父親である国王でさえも、王女を恐れ従うしかなかったのだから。

 そして私の見た映像。あの残酷な出来事が起こってしまう。

 ルーンはそれを悔やんだ。契約したことさえも後悔した。

 だから、王女と一緒に自分までこのダンジョンに封印した。
 もうこんな事が二度と起こらないようにと。
 無惨に殺され、このダンジョンに放置された魂を沈めるために。

 ルーンが悪くないのに。

 どうして全ての責任を、ルーンが背負うの?
 
 悔しくって泣けてくる。

 そんな人ばっかりじゃないのに。

 ルーンは初めて好きになった人に裏切られただけなのに。

 ーーソフィア? 僕のために怒ってくれてありがとう。

「そんなの当たり前だよ! だってルーンは悪くない。悪いのは王女だよ」

 ーーふふ。そうかも知れない。でも僕はね? 王女の事を嫌いになれないんだ。だからこの悲劇は僕の責任。

「それは……違う。うぅっ」

 もうなんで自分が泣いているのか分からない。でも涙が止まらない。

 ーーソフィア泣かないで? 僕はね君に感謝してるんだ。本当に。 何百年もこの場所で、怨みのせいで昇天できずにいた魂を、君は全て浄化してくれた。

「それは……偶然というか……たまたまと言うか…… 」

 突然功績を褒められ、涙がひっ込む。

 ーーふふ。面白い事を言う。たまたまで何百年も蠢いていた怨念が浄化されないからね? ソフィアありがとう。

 そう言ってルーンは私のおでこにキスをした。

 ん? 暖かい。これって!?

 ーーソフィアこれからよろしくね?


「ああああああ!?」

 どうやら私はルーンと契約しちゃったみたい。



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