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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

閑話 シルビアグラードンの行く末。

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 はぁ……こんな狭い客間に、王女である私をいつまで閉じ込めておく気?
 この事は後でちゃんとお父様に報告するんだから! 
 
「エリザ! ティーを用意して!」

「はいっシルビア王女様」

 エリザが慌てて部屋を出ていく。
 私の専属侍女を用意してくれたのは良かったけれど。
 これだって散々騒いでやっと侍女。本当は有能な執事クリスの方が良かったんだけどな。

「お待たせしました」

 戻ってきたエリザが、机に茶菓子とティーを並べていく。
 
「なんでローズティーなのよ! オレンジティーでしょ!?」

 並べられたティーが思っていたのと違い文句を言うと
「でっですが……ティーだけ言われましたので……」
 言い返してきたので苛立ちは最高潮に。
 思い切り睨んで、入れてきたティーを床にぶちまけてやった。

「はぁ? 何が? ティーって言ったら、言わなくても用意できるのがあんた達の仕事でしょう!? さっさと入れ替えてきてちょうだい!」

「ははっはい! すみませんでした」

 エルザは真っ青な顔で部屋を出ていった。 
 ったく。こんな事もできないなんて……使えない侍女ね。

 などど考えながら、机に置いてある茶菓子を無造作に手に取ると口に入れる。

 バリッ
 この部屋に来てもう三日。いいかげん飽きてくるってもんよ!
 あのウソ発見器には驚いたけど。

 バリボリッ
 まさかこの世界にもそんな代物があるなんて。
 私がソフィアにしようとした事はバレてしまったけれど。
 お父様には適当に言ったらいいのよ。
 無理やり私のせいにされられたとかね、ウソ発見器なんてものをお父様は信じないだろうしね。

 ボリッボリッ
 今回はしくじっちゃったけれど、次は……!?

 「モゴッ!?」

 ドアがノックされたと同時にアイザック様、それに私の専属執事のクリスが入ってきた。

 何事!?

「シルビアお嬢様、今回の件で国王様が国に帰って来いとの事です」

 私が驚いているとクリスがとんでもないことを言い放った。国に帰って来い? だってまだこの先にあるダンジョンのイベントとか一緒にしてないのに!

「……ごくんっ。ちょっと! クリス!? なんで国に帰らないといけない訳? そんな大したことしてないのに!」

「……………はぁ」

 私の言葉を聞いたアイザック様が大きなため息を吐いた後。

「ちゃんと説明しないと分からないのかな? 君はね? 身分が格上である令嬢ソフィアを陥れようとしたんだよ? 大した事してない訳ないよね? だから国に強制送還される訳だし。まぁ当たり前というか、僕からすれば甘いよね?」

 アイザック様はさっき格上って言った? クズソフィアが? 王女である私よりも上!? 

「あのっ? 格上って私はおうっ」
「ああ頭の悪い君に分かりやすく説明するべきだったね? グラードン王国とわが国リストリア帝国はね? 国自体に大きな差があるんだよ。はっきり言って、グラードン王国とわが国の公爵家の領地が同じくらいの広さなんだからね? その意味が分かる?」

 公爵家とグラードン王国が同じ? 何を言って?

「はぁ……分からないか? まぁそんな事僕にはどうでもいい。君は格上の令嬢に無礼な事をした。わが国にそんな危険な女を置いておくわけにはいかないと、決定したんだよ! 分かる? 留学も取り消しだ」

「え? なんでぇ? アイザック様? クズソフィアにちょっと悪戯しただけじゃない! なんで王女の私が!?」

「君がソフィアをクズ呼ばわりする権利はない! 次に言うと僕は君に何をするか分からないよ?」
「ひっ!」

 慌てて私とアイザック様の間にクリスが割って入り頭を下げた。

「申し訳ございません! これ以上無礼な事をしでかす前に、私が責任を持ってこの女をグラードン王国に連れて帰ります!」

 クリスが再び頭を下げるんだけど、今……私をこの女呼ばわりした?

「ちょっとクリス! 誰に向かって偉そうにっ」

 私が次の言葉を言う前に、クリスが私の方を振り返り冷めた目で睨む。

「え? クリス?」

「私は国王様にお願いされて、今まで貴方の専属執事としてお仕事をしておりましたが、それももう終わりました。貴方は国に帰り王女としての身分を剥奪されるのです」

「え? はっ?」

 クリスがあまりに早口で捲し立てるので、理解が追いつかない。
 今……身分を剥奪って言わなかった?

「私は第四王女様の専属執事として使える事になります。では行きましょう」

 クリスが無理やり私の手を引っ張り、部屋から何処かへと連れ出そうとする。
 ちょっと待って!? まだアイザック様とだってちゃんと話をしてないのに!?

 クリスの手を引き剥がそうにもギュッと握り締められ、どうにもならない。

「あっアイザック様! まだお話が!」

「ではクリス頼んだよ?」

 私が必死にアイザック様に助けを求めるも、その目はクリスしか見ていない。

「はい。任せてくださいませ。王の意志でもありますので。では失礼いたします」

 こうして私は無理やり馬車に乗せられて、グラードン王国に戻るんだけれど。
 この時の私はまさかこの後、国王様お父様から身分を剥奪され平民として暮らせと言われるなんて事、考えもしなかったのだ。


 いくら前世が普通の日本人だったとはいえ、王女として何年も生きてきたのだ。
 そんな私が平民として暮らせる訳もなく…….。


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