嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金

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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百七十五話 魔法ペア練習

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「さぁペアになって魔法訓練を開始しますよ。皆さん二人組になりましたか? 相手がいない方は教えて下さいね」

 ソウ先生がキョロキョロと辺りを見回しながら前を歩いて行く。
 ちゃんと二人ペアになっているか確認しているようだ。

 私のペアはと言うと…………はぁ。

「ソフィア様よろしくお願いしますね」
「はい。シルビア様よろしくお願いします」

 シルビア様が私の二メートル離れた先で軽く会釈する。
 お願いされてペアになったんだけど
 何を企んでいるのか分からないので全く気を許せなくて、一人ずっと緊張している。

「はい! 皆さんが二人組になっているのを確認しましたので、これからペアの魔法練習を始めたいと思います。まずは私とファーブル君で見本を見せるので、それを見て下さいね」

 ソウ先生がそう言ってファーブル様と十メートルほどの距離をあけて立つ。
 何をするんだろう? 
 みんなが興味津々と言った様子で、ソウ先生とファーブル様を見つめる。

「では始めます。ファーブル君お願いします」
「へーい」

 ファーブル様が返事を返すと、二人の間に直径五メートルはある大きな石がズズズっと地面から現れた。

「この大きな石を私とファーブル君であの旗がある所まで一緒に運んで行きたいと思います。見てて下さいね」

 二人で石を運ぶ? 共同作業っと事か。どうやってするのかな?
 興味津々に様子を見ていたら。

「ファーブル君行きますよ? 準備は良いですか?」
「いつでも」

 二人が魔力を左右から放ち大きな石を持ち上げて旗があるところまで運んでいく。
 そうか……これはお互いで魔力調整をしながら運ばないと、石の高さが違って上手く運べないんだ。
 お互いが均等に魔力を送って浮かすことが重要。
 って事はペアの魔力が均等でなければ、浮かす事はどころか移動させる事だって難しいだろう。

 ん? ちょっと待って? それって私が魔力調整をミスったら……
 シルビア様に大きな岩がぶつかっちゃう!?

 まさかシルビア様はそれを狙って?! いやまさか……でも。
 思わず想像してブルっと身震いしてしまう。

「さあ、始めますよ~。みんなの間に岩を登場させますね」

 ソウ先生がみんなに掛け声をかけると、目の前に岩が登場した。
 それはファーブル様が動かした大きな岩ではなくて、直径一メートルほどの大きさの岩。

 良かった……あんな大きな岩を一緒に動かせる気がしなかったから。

「いきなり協力して大岩を動かせと言っても難しいので、まずは目の前にある岩を二人で浮かしてみて下さい。それができたペアから、私達のところにある大岩を旗の所まで動かして貰います」

 なるほど……あの大きな岩は最後の仕上げね。
 ドキドキするなぁ。
 相手がシャルロッテかダイアナなら良かったのに。
 ついつい愚痴を言いたくなってしまう。

「ではソフィア様始めましょうか」
「はっはい」

 シルビア様がニヤリと笑って、岩に手をかざした。
 笑っているんだけど、よく思えないのはなんでだろう。

「「せーのっ!」」

 私とシルビア様が同時に魔力を岩に送る。
 そーっと! 小さな水球を作った時を思い出して。
 均等に魔力を送るのよ!

 するとふんわりと岩が浮かぶ。

「おおっ……浮かんだ!」

 次の瞬間、浮き上がった岩が何故かシルビア様に向かって飛んで行き落ちた!

「シッシルビア様!? 大丈夫ですか!」

 慌ててシルビア様の所に駆け寄ると、間一髪の所で石がそれシルビア様をかすめただけすんだ。

「良かったぁー!」

 何もなくて安堵する私をシルビア様はギロリと睨み一瞥する。

「ソフィア様はそんなにも私の事がお嫌なんですね。酷いですわ! 一緒に仲良くしたいのに。こんな事をするなんて!」

 急にシルビア様が立ち上がり大声で私に問いかける。

「え? 私は何も?」
「だって私に向かって、岩を当てるように飛ばしたでしょう?」

 シルビア様が私を睨み糾弾してくるが、そんな事全く覚えはない。
 なんならちゃんと魔力調整出来てたと自信さえある。

「そんな事してないです」
「現に岩が私の所に飛んできて、大怪我をする所だったんですよ?」
「それが私のせいだと?」
「他に誰がいるんです? 私が自ら自分の方に飛ばしたとでも?」
「それは……」

 大袈裟にシルビア様が騒ぐものだから、みんなが訓練するのをやめ私達の周りに集まってきた。

「おいおいどうしたんだい? 何かあったの?」

 とうとう騒ぎを聞きつけ先生までもが私たちの所にやって来た。
 するとシルビア様は瞳に涙を溜めて先生の所に走って行く。

「それがソフィア様にワザと岩をぶつけられそうになり、大怪我をしそうになって……怖かった」
「え? ソフィア君が?」

 シルビア様の話を聞き先生が怪訝そうに首を傾げる。

「本当にソフィア君がそんなことを? 信じられないんだけど……」

 先生が困った顔でそう言うも「じゃあ私が石を自分の所にぶつけたとでも?」と言い返す。

「う~ん。それは……」

 そんな様子を見ていた他の生徒たちが騒ぎ出す。
 心配したシャルロッテとダイアナが、私の所に駆け寄り「ソフィア様はそんな事しません! 勘違いです」と声を揃えて言ってくれる。ありがとうその気持ちだけで嬉しいよう。

「ええと? 誰の魔力のせいでそうなったか、分ければ良いよね?」

 どうしたら良いんだと、先生が困惑してる中。
 ファーブル様が前に出てそう言った。

 え? 誰の魔力のせい? そんな事分かるの?

 私が驚きファーブル様を見ると、右目をパチリと閉じて「大丈夫」っと声を出さずに口を動かして言ってくれた。

 なんだかそれだけで、さっきまで胸の内にあったモヤモヤとした不安な気持ちが消えていった。
 
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