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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百六十八話 ランチタイム

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 午前の授業終了の鐘の音がなり響く中、みんなはガヤガヤと席を立ち、昼食へと向かう。

 私もいつもなら右に同じなんだけど、今日は違っていた。なぜなら席の周りは、異様な空気を醸し出していた。

 ニコニコと私の机の前に立つグラードン王女、その横で少し怪訝そうに見るダイアナ、シャルロッテはそんな二人の様子を一歩後ろでどうしたら良いのか対応に困っている。

「さぁ。昼食に行きましょう! カフェテリアでお食事ですか?」

「私達はお弁当を持って来ていて、中庭でいつも食べているんです。グラードン王女はお弁当など用意してないでしょう? お食事はまた今度ご一緒するという事で……」

 われながら中々上手い逃げ方じゃ? などと思いつつ、さっと立ち上がり立ち去ろうとすると。

「なぁんだ? そんな事でしたら、私も用意させますわ! クリス? 今すぐ私のお弁当を用意して?」

 グラードン王女がそう言うと、どこからともなく初老の男性が現れ「分かりました。おまかせ下さい」と頭を下げ再びどこかへ消えて行った。

 ええー!? どこに居たんだろう!? クリスという人は隠密か忍びの手練だろうか?

「さっ行きましょう」

 グラードン王女は私達のようすなどお構いなしといった感じで、食事に行こうと急かす。
このなんとも言えない空気は気にならないのだろうか?
 やはり一国の王女ともなると、周りの事なんて気にならないのかな。
 なんでもワガママが通ってしまうから余計に自己中心的になるのかも……この体の元持ち主ソフィア・グレイドルもそうだったもんね。

「ではシャルロッテ、ダイアナ行きましょうか」
「「はい」」

 私達はお気に入りの秘密の場所ではなく、中庭にあるガゼボにてお弁当を食べる事にした。あの場所は私達だけの特別な場所だから。

「外で食べるのも気持ち良くて良いですね。クリス? このスープはもう要らないわ。味がイマイチね」

「はっ」

 どうやってこの場所を見付けて来たのか、クリスという執事さんはシェフらしき男性を数名連れてガゼボに登場すると、いきなりテーブルを出し料理を何品も並べていく。それをお皿に美しく盛り付けると、グラードン王女の前に差し出す。
 
  その様子を私達は呆然と見ていた。そんな様子に気付いたグラードン王女は何を思ったのか、品定めでもするかのように私達のお弁当を見ていく。

「あら、シャルロッテさんは質素なお弁当ですのね?」

「私はいつも自分で作っていますので……凝った料理は入ってなくて、ですがソフィア様やダイアナ様は素晴らしいお弁当ですよ」

 質素と言われシャルロッテが少し困った顔で自分のお弁当を貶す。

 そんな事言わないで? シャルロッテのお弁当は栄養満点で味付けだってシェフ顔負けなんだから!
 私が言い返そうとする前にダイアナが口を開く。

「あら? シャルロッテのお弁当の良さが分からないなんて、王女様ともあろうお方が……」

 少しバカにしたように言い返すダイアナ。それに気付いたグラードン王女の顔が少し歪む。

「なっ!?」

 だがダイアナはそんな事お構いなしに言い含める。

「私とソフィア様は、シャルロッテのお弁当と中身を交換するのを、いつも楽しみにしてますのよ? ねぇソフィア様」

「えっええ。そうなの。私達はいつもお弁当のオカズ交換が楽しみでして」

 おおうっ。急にふられてビックリしちゃったよ。

 さらにダイアナは、追い討ちをかけるように捲し立てる。

「グラードン王女はお気に召さないようですので、三人でいつものように交換しましょう。ね? シャルロッテ」

「はっはい」

 仲良くキャッキャウフフとお弁当のオカズを交換しながら食べる三人とは対象に、その横で豪華な料理を黙々と静かに食べるグラードン王女。

 なんなのこのシュールな絵面は!? グラードン王女も本当に何がしたいんですか?



 食べ終えるとグラードン王女が再び口を開いた。

「ええと幾つか少し、ソフィア様とシャルロッテに質問したいのですが、二人は【聖なる乙女達と悪の女王】というゲームをご存知かしら?」

「えっ……聖なる?」
「?」

 私とシャルロッテは顔を見合わせ小首を傾げる。
 何だろう? グラードン王国で流行っているゲームなんだろうか? 初めて聞いたな。

「リストリア王国にはないゲームですね。ちょっと分かりかねます」

 私がそう答えると、グラードン王女は少しバカにしたようにクスクスと笑う。

 なによう。ゲーム知らないだけでバカにするとか少し失礼ですよ?

 
「あら? 知らないのですか? とても面白いゲームですのに」
(どうやら二人とも、私のような転生者じゃないようね。じゃあ、やはりバグか何かで屑ソフィアが良い子になってるんだわ。もしかしたら私の様な転生者で、ゲーム知識を駆使してるんじゃ? って思ったけど……知らないなら、ゲーム知識のある私の一人勝ちね。ヒロインのシャルロッテはゲームの時よりおバカさんぽいし。何故かもう一人のヒロイン、アイリーンはいない。まぁ邪魔者が居ないのはラッキーよね。私はみんなを出し抜いて推しのアイザック様と……)

「ぐふっぐふふ」

 今度は頬を染め薄気味悪く笑うグラードン王女。

 この後いくつか質問した後、満足したのか「ではお先に失礼します」と言って嵐のように去って行った。

 本当に何がしたいんですか? わざわざ一緒に食事する意味あった?

 去った後、ダイアナは何故自分だけ質問されなかったのか?「私はゲーム知識もないバカに見えたのでしょうか?」と口を可愛く膨らませて怒っていた。

 確かにダイアナが怒るのも無理は無いほどに、私とシャルロッテばかりに他にも色々と質問していた。なんなんだろう……?

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