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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百五十話 孤児達を助けよう

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「まった見た事もない、身綺麗なお坊っちゃん達にお嬢さん達だねぇ。こんな場所に、一体何の用があるんだい?」

 私達が呆然と立ち尽くしていたら、少しふくよかな叔母さんが声をかけて来た。

「あっ……私達は孤児院に用があって」

「孤児院によう? あんた達がかい?」

 用があると言うと、少し怪訝そうに、私達を見定める様に上から下まで見てくる。
 この場所では、かなり浮いているみたいだから、怪しんでるのかな。

「用事って孤児あのこ達をどうする気だい?」

「それはですね。僕からお話しさせて下さい。僕達は孤児院に寄付に来たのです。するとこの惨状が目に入りましてね? 驚いていた所です」

 不穏な空気を感じとったアイザック様が、一歩前に出て女性に説明してくれる。おばさんもアイザック様の笑顔にポ~っとしている。
 おばさんまでタラシちゃうなんて、さすがですねアイザック様。
 私はアイザック様に向かって、小さくガッツポーズを送った。
 すると何故か残念そうな目で私を見返して来た。んん? なんで?

「なんだぁ。そうかい! 変な目で見ちゃってゴメンよ。子供達を拐って、奴隷にする貴族が居るらしいって、街で噂になっててね。まさかと思ってしまってさぁ。仕事中にあんた達を見かけて慌て飛び出して来たのさっ。私はあの端っこで、小さな食堂をしているミザリーってんだ。宜しくね」

  ミザリーさんは気立てのいいおばさんで、毎日食堂で余った料理を孤児院に届けているんだそう。でも全く量が足りなくて、子供達はやせ細っていく一方で、心配していたんだと、孤児院まで一緒に歩きながら色々と教えてくれた。

 孤児院の前に立つと、建物のオンボロ具合がより分かる。今にも倒壊しそうだ。至る所に穴があいているし……これは色々と忙しくなりそうだわ。

 そして肝心の子供達はと言うと、私達が目の前に立っても、驚きもせず虚ろな目で座ったままだった。驚く体力さえも無いのかもしれない。

 よく見ると服もボロボロだし、みんな臭う。何日も体を洗ってないんだろう。初めて出会った時のラピスの様だ。
 そう言えばラピス元気にしてるかな? 私の事心配してないかな。しばらく御屋敷に帰ってないから。この街がひと段落したら公爵邸に帰ろう。学園も許可をもらっているとはいえ、休み過ぎだしね。

 よしっ! まずはこの子達を元気にしてあげないとね。元気と言ったら癒しのお水でしょう。

 外に座っている子達も、手を繋いだりして食堂に連れて来た。机と椅子もボロボロだけれど、どうにかみんなが座れた。
 子供達の数は全部でええと……三十人くらいかな?

「ソフィア様? 食堂に子供達を集めてどうする気です?」

 シャルロッテが、期待に満ちた瞳で私を見つめる。そんなに期待されると困るんだけれど……

「何も食べてないお腹に、お肉はビックリすると思うから、簡単デトックススープを作ろうかなと」
「わぁ! 素敵ですね」

 調理場を借りて、アイテムボックスに入っている道具とお野菜があれば余裕だわ。ふふふ……すぐ食べれるようにと、調理済みのお野菜が入ってるのよね。あっ豆腐も入れよう。

「調理場かい? 案内するよ」

 調理場はどこかなと探す前に、ミザリーさんが教えてくれた。
 本当に親切な人だ。その後夜の仕込みがあるからと、お店に戻って行った。

「よしっ作るわよ」
「私もお手伝いしますね」

 大きな寸胴鍋に、手から癒しの水を出していれる。そこに野菜と豆腐を入れて軽く調味料で味付けするだけで、アッサリスープの完成。

「シャルロッテ、私がお皿にスープを入れるから、子供達に配ってくれる?」
「はいっ! 任せてください」

 さぁ! 三十人以上いたからね、頑張るぞー! お代わりするかもしれないから、後二つくらい同じように寸胴鍋にスープを作ろう。
 色々とアイテムボックスに入れてて良かったぁ。やっと日の目を浴びる時がきたわ。

 スープを配り終えると、子供達は手をつけず、じっとスープを見つめるだけだった。

「あのう……食べて良いんですよ?」

 食べて良いと言っても、手を動かさず食べようとしない子供達。口からは分かり易くヨダレが垂れているのに、どうして?

 私とシャルロッテが困惑していると、建物を見て回っていたジーニアス様がその様子を見て「大丈夫だよ? この食事を食べたからといって、君たちに何かしたりしないから」そう言ってクシャリと優しく笑った。

 ジーニアス様の、あんな笑顔は珍しい。初対面の人にそんな顔を見せたりしないのに。

「じゃあ……食べても何もしない?」

 一番大きな少年が、震えながら聞いてきた。大きなと言っても六、七歳ぐらいかな。

 そうか、いきなり知らない人に施されても怖いだけだよね。今まで何もされて来なかったんだから。さすがジーニアス様だわ。

「大丈夫です! これは貴方達が今まで頑張ったご褒美なのでいっぱい食べても大丈夫なんです」

「ほんと?」
「ほんとよ?」

 私がこれ以上ないくらいの笑顔で返すと。

「「「「「わぁぁぁぁ!」」」」」

 子供達が一斉にスープを飲みだした。スプーンなんて使わずに、直接お皿を持って飲み干していく。時に足をパタパタと動かし、喜びの感情をあらわしている姿がまた可愛い。

「美味しいね」
「幸せだね」
「ああ……なんだか胸が暖かい」
「ううっ……美味しっ」

 泣きながら、口いっぱいにスープを詰め込む姿を見て、私とシャルロッテは胸が熱くなり、知らないうちに泣いていた。

 良かった……喜んで貰えて。


 次はお風呂や建物を直して、仕上げの肉祭りといきますか。だってみんなの喜ぶ顔がもっとみたいんだもの。



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