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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百四十七話 お父様の……

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 お父様の目が笑ってない。笑顔ではあるんだけれど、それは口元の口角が上がっているだけ……だって、こんな表情する時は大体いつも、この後でお説教が待ってるんだもん。

 嫌だけれど、話を聞かないと終わらない。諦めてお父様の所に歩いて行かないと。

 私がすぐそばまで近寄ると、いつもの様にくしゃりと笑う、破顔した笑顔で微笑んでくれた。
 あれ? お説教じゃない? そうだよね。良く考えたら人助けしたんだもの、それで怒られるとかおかしいもの。うん。そうよ。

 などと一人勝手に納得していると、お父様が話しかけてきた。

「ソフィア? まずはだね? その全身が神々しく輝いているのは何故だい? その姿はまるで天から舞い降りた天使だよ」

「えっ……輝いて?」

 自分の体を見ると……本当だ! また輝いちゃってる! この発光の仕方はシルフィ達みたいだよ。

 こんなの理由なんて説明出来ないよ。だって自分が分かってないのに……困ったな。

「それが……そのう。癒しの魔法を使うと偶にこの様になるのです」

 お父様は、私の話を真剣な面持ちで聞いてくれているが、その内容が理解しがたいのか、途中で何度も首を傾げる。その気持ち私も同感です。

「ええとだね? ソフィアはイヤシデアール侯爵に何か癒しの魔法を使ったのかい?」

「はい! 元気になあれと強く願ったら、ええと……そう! エリクサーが出来ました。それを侯爵様に飲んでもらいました」

「ブッッ! ちょっ……!? フィアたん? 今なんて!? エリクサーって言ったかい?」 

 何故かお父様がエリクサーと言う言葉に、かなり動揺している。

「はい! そうですよ。さすがお父様、エリクサーを知ってるんですね。実は私は良く分からなくて」

 私が返事を返すと、目をまん丸に見開き驚いているお父様。今の会話に驚く要素ありました?

「ん゛ん゛……ええとフィアたん? 君は良く知らないのに、伝説の秘宝と言われているエリクサーを作っちゃったのかい?

「……はい」

 なんだろう……お父様の様子がさっきから変だ。顔色が赤くなったり、青くなったりと忙しい。それに伝説の秘宝って何よ。エリクサーにはそんな厨二病的な二つ名があるの?

 一人で困惑していると、少しの沈黙の後。お父様がアイザック様の方を見つめる。何か質問でもあるのかな。

「アイザック殿下? 貴方はこの事を知っていたのですか?」

「ええっ!? いいいやっまさか! ソフィアの魔力は桁違いだとは思ってましたが、まさかエリクサーまで作れるなんて! 知らなかったですよ」

「…………はぁぁっ、そうですか。この事は、ここだけの話でお願いしますね? 陛下には私からタイミングを見て話しますので」
「もちろんです!」

 二人は深く頷きあった後に私の方に振り返り「もう一度エリクサーを作っくれ」と鬼気迫る勢いで言ってきた。二人ともお顔が怖いです。

「ちょっと待って下さいね」

 入れる器がないと、折角作っても意味無いからね。私は先程使ったグラスを再び手に取り、イヤシデアール侯爵様の時と同じ様に強く願った。

「出来た……!」

「ソフィア! そのグラスをもっと良く見せてくれないか?」

 お父様が瞳を爛々とさせてグラスを見ている。

「はい。どうぞ」

 私はお父様にグラスを手渡した。そのグラスを手にとると、お父様とアイザック様それにジーニアス様までもが加わり。
 目を白黒とさせている。きっと鑑定で情報を見ているのかな? みんなはその情報を見て驚愕しているんだろう。

 そんなに驚くことなのかな。エリクサーの情報は学園でも勉強しなかったし……もしかして国家機密案件なんだろうか?

 私はこの後しばらく、お父様達が冷静に落ち着くのを静かに黙って見ている事しか出来なかった。
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