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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
第百二十七話 キィ村を出発
しおりを挟む「……ふう」
長かった異世界報告会も終わった。話したい事はいっぱいあったけど、こんなに長引くとは思わなかった。
それにはもちろん理由がある。
まずはジーニアス様。カチンと固まっていたのに、急に「ぼっ僕にも信頼の抱擁をしてくれないか? アイザックだけずるい」などと言い出し、話に割ってはいるので余計にすすまない。
それにハグは、してくれって言われてするもんでもない。改まると何だか恥ずかしい。
また今度に……と断ると、この世の終わり見たいな顔で落ち込むので……物凄く恥ずかしいのだけどハグをジーニアス様とすると、今度は「なんでジーニアスの時は顔が赤くなるんだ」とアイザック様が言い出し、再びアイザック様にハグをして、次はシャルロッテ………。
なんでこうなった。
この後、村の宿屋に戻ってお昼ご飯を皆で食べた。その時に今後の事を相談した結果、この後キィ村のみんなに挨拶をし、村を出発する事にした。
★ ★ ★
出発する前にキィ村を見て周ると、枯れていた畑が蘇っていた。
水場もキラキラと輝いている。
全く別の村の様に生き返っていた。
「凄い……別の村みたい」
そうポツリと呟くと、アイザック様が少し誇らしげに教えてくれる。
「僕らも頑張ったんだよ? ねっシャルロッテ嬢、ジーニアス」
「そうさ、僕は魔道具を作ってこの村に街灯を付けたんだ」
ジーニアス様も得意げに話す。
「私とアイザック様は、魔法で畑を耕したり種を植えたりしたんです」
「そうなんだ! 初めて土魔法を畑耕す事に使ったよ。それに不思議な事が起こったんだ!」
「そうなんです! 種を植えたら直ぐに新芽がピョコンと生えてきて! 驚きました」
「それを見た村人達がさ、これは水の女神様の奇跡だぁー!って大騒ぎだったよ」
私がいない間にも、みんながキィ村の為に頑張ってくれていた事が、なんだか凄く嬉しかった。
村人達の為にした事を話す友人達の姿が、眩しくて誇らしく思えた。
最後の水の女神様は……気になるけど。
★ ★ ★
「ありがとうございます! 水の女神様からキィを頂けるなんて」
「女神様……本当にありがとうございますっうう」
「村を助けてくれてありがとう」
「お水美味しかったよ」
私は列を成す村人達一人一人に、キィの実を手渡している。
キィの実を受け取るときに、皆が頭を下げ一言お礼を言ってくれる。
村長さんにまとめてキィの実を渡そうと思っていたんだけど、「村人達が皆お礼を言いたいので、水の女神様から村人達に手渡して頂けませんか」と頭を下げて懇願されたので今に至る。
手渡すときに泣いて感謝されると、自分まで貰い泣きしそうに何度もなってしまった。
女神様って言われると、凄く申し訳ないし、恥ずかしかったけれど。
手渡して、村人達と話しが出来て本当に良かった。
みんなにキィの実を配り終えた後に、ビックボアの塊肉も渡した。
塊肉を渡すのは良いけど、「このまま渡したら直ぐに腐ってしまうから、多く渡すことが出来ないのが残念だわ」と私が言うと「僕に任せてくれ。ソフィアがビックボアを討伐してくれたおかげで、大きな魔石が大量に手に入ったからね」
っと言って、村の集会所にジーニアス様が、大きな保冷庫を魔道具で作ってくれたのだ。
これには村長さんも腰を抜かし驚き固まっていた。
村長さんは、何年かかってもこの保冷庫のお金を払いますと言っていたのだけど、ジーニアス様は「大丈夫です、これは僕からのプレゼントです」と断固として断っていた。
ジーニアス様カッコいいじゃないですか。
この後沢山の村人達に見送られながら、私達はキィ村を旅立った。
「ありがとうございます! また遊びに来ますねー」
出発したのが昼過ぎで。次の街に到着するのは夕方らしい。
次はどんな街なんだろうか?
楽しみだな。
アイザック様が言うには、辺境の村やキィ村も治めている領主様のお屋敷が、街の近くにあるんだとか。
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