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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百二十一話 妖精王探し

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 とりあえず、妖精王をどうやって探すか……だよね?
 未知なるこの広い異世界で……。

 私について来た妖精さん達を頼りに……ね。チラッと妖精さん達見ると、楽しそうに飛び回り妖精王を探す気など全くないように見える。

…………はぁ。こりゃダメだ。

 ティーゴさん達をこんな事に巻き込んでしまって、本当にゴメンなさい。私は頭の中でそう陳謝するしかなかった。

 
 どうやって妖精王を見つけたら良いのかと、みんなが押し黙り困窮していると。
 ティーゴ様の後ろで、静かに黙っていた女の子が話し出した。

「あの……ティーゴ様。お話を少し聞いていたんですが……」

「カリン?」

 私達の話を聞いていて、何か思い付いたらしい。

「これは私の想察なのですが……お兄っ…グリモワールが禁忌の魔法を使い異世界人達を召喚した時に、この世界の時空が少し歪んだので」
「うん」
「もしかしたらその時に、この国と異世界に繋がる道が出来て……ソフィア様の所の妖精王はそれに巻き込まれこの世界に来たのかな? って」

 ンン?? 異世界人しょうかん? じくう? 何を言っているのか全く意味が分からない。
 
 私の脳内にハテナマークが沢山浮かび、話が理解出来ないでいると。

「そうか……であれば近くにおるんじゃ?」

 そんな私の横で、猫ちゃんの目が爛々と輝き、尻尾をふりふり何かをポツリと呟いた。

 綺麗な尻尾がふわふわと揺れる。

 ああっその尻尾をモフモフしたい! 今はそんな事考えている場合じゃないんだけれども。なんて魅惑的な尻尾なの。

「ソフィアよ!」
「はっはい」

 不意に声をかけられ声が裏返ってしまう。大事な時に邪な事を考えてた自分が恥ずかしい。

「これはワシの勘じゃが、たぶん妖精王はこの辺りにおるぞ。この近くにお主の世界とこの世界を繋いでいる鍵があるはずなんじゃ。お主は何処に現れた? きっとその場所近くに妖精王とやらもおるはずじゃ。そこが時空の歪み」

 鍵? 時空の歪み?

「何処に……? ええと、私は気がつくとこの村近くにある金色の花畑に立っていました」

「金色……? ああっグーテの花か! 村の近くにある森じゃな。よし、そこに行ってみるのじゃ」

 私達はグテ村を出て、自分が気がつくと立っていた。金色こんじき色の花畑がある森へと歩いて行く。

 カリン様のお兄様の体調が、良く無さそうだったので二人は村で待機して貰った。


「ええと……あっ! あそこだわ。この先にあるあのお花畑に気がついたら立っていました」

 グーテの花畑を指差して、場所を教える。

 そこは辺り一面、見事な金色のグーテの花が咲き誇っていた。

ーーあー! そうだった。妖精王様の魔力あっちから感じたんだった。
ーー本当だねー! 忘れてたや。
ーーこの場所妖精王の匂いがあったよね
ーーねーっ。ソフィアに気付いて欲しくて忘れてた。
ーーねぇソフィア。あっちから妖精王の魔力の匂いがする。

 森に入ると、妖精さん達が騒しくなる。どうやら妖精王の場所を思い出したらしい。

「えっ? こっち?」

ーーそうそう!
ーーこっちこっちー! 思い出したんだ。

妖精さん達が森の奥へと飛んで行く。
「わっ! 待って!」
「ソフィア? 急に慌ててどうしたんだよ?」

妖精を追って慌てて走って行こうとしたら、私の異変に気づいたティーゴ様が肩を掴む。

「ティーゴ様! ついて来た妖精さんが言うには、あっちから妖精王の魔力を感じるそうです!」

「なんじゃと? 早速みつけおったのか」
「凄いじゃないか」

 ティーゴ様と猫ちゃんが驚き喜んでくれている。
 早速元の世界に帰れる手掛かりに会えると思ったら、早く行きたくて仕方がない。

「みたいです。さぁ! 行って見ましょう。私について来て下さい」

「了解だ!」

 私は先頭を切って、ガンガン森の奥に向かって歩いて行く。
 そう……その姿は貴族令嬢らしからぬ動きで。
 綺麗なドレスが汚れる事なんて気にする事なく。
 そんな姿を、ティーゴ様が不思議そうに見ていたなんて、知るはずもなく。

「不思議な子だな……。貴族様が何も気にせずに森の中に入るとか……普通は嫌だと思うんだが」
「確かにのう……不思議な娘じゃのう。良い意味で貴族令嬢とは思えんのう」

 ふと後ろを振り返ると、何やらティーゴ様と猫ちゃんは呆けた顔をして立ち止まっている。
 ちょっと? ポーッとしてる場合じゃないんですよ?

「ティーゴ様ー! 何してるんですか? 置いていきますよ」

「あっ……っと! ゴメンゴメンッ待ってくれ」

 私の頭に乗っているスバルちゃんが、ティーゴ様をさらに煽る。

『ティーゴの旦那! 何ポーッとしてんだよ。早く妖精王とやらを見つけてさ! 約束の肉祭りしようぜ。俺は早く肉祭りがしたいんだ』

『良い事を言うなスバル! 我も同感だ』


 スバルちゃんと銀太ちゃんが気になる発言をする。ちょっと待って……肉祭りって言った? 
 何て素敵で魅力的な言葉なの。

「そうだったなスバル。早く見つけて異空間で肉祭りしようぜ」

 肉祭りと聞いて俄然やる気が出てきた私の足は、さらに速度を増す。

「あっつっ」

 突然足に強烈な痛みが……?!

『大丈夫なのか?』

 痛みで足がふらつき倒れそうになるのを、銀太ちゃんが支えてくれた。ありがとう。

 ティーゴ様達がそんな私を、心配そうに見つめる。こんな事くらいで水を差したくないのに……。

「だっ大丈夫! ちょっと……この道無き道を歩くのが難しくて……森は歩き慣れてるんですが、この森はかなり地面がでこぼこしてる上にこの靴じゃ……」

 足を摩りながら靴を見る。
 街歩きなら平気なんだけど、森を歩くとなるとなぁ。この服も。

 なんでこんな動き難い服と靴で来てしまったんだろう……せめてブーツを履いていたら良かった、なんて今さらそんな事考えても仕方ない。

「森は歩き慣れてる? 貴族令嬢が?……そんな事よりソフィアの足を治すのが先だな」

 ティーゴ様が心配そうに私の足を見る。

「足ですか? 大丈夫ですよ」
「え? 大丈夫そうには見えないけど」

「治れ」

 私はそう祈り赤く腫れた足に触れると、瞬く間に治癒された。

「一瞬で足が治った。ソフィアは回復魔法も使えるのか……凄いね」

 一瞬で治癒した私の足を、ティーゴ様は目をまん丸にして驚き見つめる。……しまった。やり過ぎたかも? 誤魔化さないと。

「えへへ……少し……だけなんですよ……ただ制御が上手く出来ないんだけど」

「いや……制御と言うか……俺がいいたいのは。はぁまぁ良いか」

 ティーゴ様は何やら言いたそうだったけど……口籠ってしまった。

 そして、私の服装について再度話し始めた。

「でもその服と靴じゃあ動き難いよな……あっ!」

「へっ?」

 突然ティーゴ様が、何かを思い出したかの様に叫ぶと。

 
「ソフィア、良かったらこの服とブーツを使ってくれ。豪華で煌びやかじゃないけど、森を歩くならこれくらいラフな服の方が良いかなと……」

 ティーゴ様はアイテムボックスから出した服とブーツを、少し自信無げに私に渡してきた。
 ティーゴ様も、珍しいアイテムボックス持ちなんだ。

 さらに渡してくれた服は極上の肌触りだった。

「わっ! えっ! こんな素敵な洋服と靴を私が頂いて良いんですか? すっごく嬉しいです。ありがとうございます」

「そんなに喜んで貰えると俺まで嬉しいよ。その服と靴は俺の仲間達が作ってくれた物なんだ」
 
 ティーゴ様は少し照れ臭そうに笑った。その人達の事が大好きなんだろうなと、伝わってくる。
 しかしこんな素敵な服を作れる仲間がいるなんて、ティーゴ様一体何者なんだろう……。

 それよりこの服に着替えたいんだけども、ここは森で……着替える様な場所もないし……

 私がどうやって着替えようかと困っていたら

「よし、ここで着替えるといいのじゃ」

 猫ちゃんがあっという間に簡易な小屋を魔法で作ってくれた。

「一瞬で木の小屋が現れた……これを猫ちゃんが? 作ったの?」

 いくら小さな丸太小屋といっても、あんな一瞬で作れるなんて、元いた世界でだって聞いた事ない。

 本当にティーゴ様達って一体……何者?


★  ★  ★




「はぁー♪ 何て素敵な着心地なの……モフモフ達に包まれているみたい……こんな服を知ってしまったら、他の服が着れない体にされてしまったわ……」

「ブフォ! 言い方な? 語弊がある言い方はやめてくれよ。服の着心地を気に入ってくれたのは嬉しいんだけどな」

「この洋服なら何処まででも飛んで行けそうです。さぁ行きますよー。妖精達が言うには、妖精王がいる場所まであと少しらしいです」

 着替えた私の足は早かった。さっきとは別人の様に森をスイスイと歩いて行く。

 最高だわ。このブーツなんて歩き易いの!

 もはや走っているかの様な速さで、楽々と森を抜けれる。

 五分ほど進むと、誰の目でみても分かるくらいに小さく光る何かが集まっている場所があった。

「いたわー!」

 私は光るその場所目掛けて勢いよく走って行く。

「これは……トカゲの赤ちゃん?」

 大きな大木の根元に、掌程の大きさの赤いトカゲ? の様な生き物が横たわっていた。

「この子が妖精王らしいです」

 私は弱っているトカゲを手で掴み抱き上げた。
 すると次の瞬間パチッと閉じていたトカゲの目が見開き、勢いよく私の頭に飛び乗って来た。

「へあっ?」

ーーはぁーっ! 助かったぜ。美味い飯が自ら歩いて来てくれるなんて! マジで死ぬかと思った……。ああっうんまー! 何だこいつの魔力は?! なんて美味さなんだ。

 ええと……トカゲみたいな妖精王さん? だよね? いきなりそれはどうかと思うんだけど? 人をご飯みたいに……。

ーー久しぶりの魔力メシは美味いなぁ……最高だ

 飯飯と……少しイラッとしかけていたら、ティーゴ様が怪訝そうに私を見る。

「ソフィア……そのう。トカゲの声が聞こえるんだが……」

 ひいっ! まさか今のを聞かれて?

「……ティーゴ様にも聞こえますか?」

「……ええと……トカゲが美味い美味いって…」

 聞かれちゃってるー! なんか恥ずかしい。

「あわっ……そのっ。私の魔力が妖精にはご馳走様で……」

 私がどうやって上手く説明しようかなと困っていたら。

ーーさっきからトカゲ、トカゲって! 俺は炎の妖精王、サラマンダー様だ。ありがとうな助けてくれて。

 そう言って翼を広げてふわりと飛んだ。その姿は小さなドラゴンの様だった。

「「炎の妖精王?!」」

 探していた妖精王を見つける事が出来たみたいだ。
 想像していた妖精王の姿とは違ったんだけど。
 シルフィやウンディーネみたいに人型だと思ってたから。

「良かった……これで帰れる」

 これでひと段落だと思うと、ほうっと安堵の息がもれた。


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