64 / 164
やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
第百十九話 不思議な少年
しおりを挟む(良かった! 優しそうな人発見! この村の事とか、ここが何処なのかとか色々教えて貰わないと!)
ソフィアは慌てて少年に話しかける。
「あの! この村は何て言う村なんですか?」
「えっ? この村はグテ村だよ」
「………グテ村?」
(グテ村?! ええ? 初めてきいたわ……リストリア 王国にある街や村の名前は全て勉強したはずなのに……グテ村なんて知らない。覚えてなかったのかな。困ったな余計に分からなくなってきちゃった……)
ソフィアが一人悶々と考えていると、今度は少年の方から質問される。
「あのっ……さ? ええと何があったのか教えてくれないか? この男達の事も気になるし……」
少年が地面に疼くまる男達をチラリと見る。
「あっ! そっ……そうですよね」
(やばい! 何だか怪しまれてるわ……この屈強な男達を私がやっつけたなんて……上手に説明しないと、私の方が悪人扱いされちゃう。ええと……そうだわ! 先に貴族令嬢らしい自己紹介して怪しくないアピールをしなくちゃ!)
「んんっ! 私は……ソフィア・グレイドルと申します」
そう言うとソフィアは、綺麗な所作でカーテシーを披露する。それを見た少年は驚き固まる。
「あっ……おっ俺はティーゴだっ…です。宜しくなっ……です」
(よしっ! 作戦成功ねっ……動揺して私の事を怪しんでる余裕がなくなったわ! )
ソフィアは心の中でガッツポーズを決める。
「ププッ! 敬語はいいですよ。話しやすい話し方で!」
「そっ……そうか? それは助かるよ。俺っその……敬語は苦手で……ははっ」
ティーゴと言う少年は頭をポリポリと掻き、少し困った顔で笑っている。
(よし! 次は……迷子で私の方が襲われたんだと、上手くアピールしないと)
「ええと……ティーゴ様。実は私、この場所が何処か分からないんです。その……元いた場所からいきなり全く知らない場所。この村の近くに移動して……この村を見つけたので、誰かに話を聞こうかと思って村に入ったら。この人達に無理矢理この場所に連れ去られて……ちょっと…抵抗したら…こんな事に。……えへへ」
ソフィアはそう言い終えると、ここ一番の笑顔で笑う。どうやらティーゴに良い印象を与えようと必死な様だ。
だが……ティーゴは、ソフィアが話した内容で頭がいっぱいになり、ここ一番の笑顔など全く見えてない。
「おいおい! ちょっと待ってくれ! 入ってくる情報が多すぎる! とりあえずソフィアは襲われそうだったんだよね? コイツらに」
ティーゴにそう言われると、男達は必死に腹から声を出し。
「………ぐぅっ! ちょっ……ちょっとじゃねぇ! あの女は悪魔だっ!」
「ヒィャァァァァァ!」
「怖い怖い怖い……」
男達は震えティーゴに助けを求めた。
(ちょっと! 人を化け物みたいに! これじゃ私が悪いやつみたいじゃない!)
ソフィアはティーゴの反応が気になりチラッと見ると……明らかに……ジト目で疑わしそうに自分を見ている。
「ええと……この人達にいったい何をしたの?」
(ヤバイ……絶対私の事怪しんでる!)
「えっ?……えへへ…」
そこに追い討ちをかけるように、男達がティーゴの足元にすがり捕まえてくれと懇願しだす。
ソフィアは再び身振り手振りを必死に交えて、自分は悪い事はしてないと、正当防衛だと伝えるのだった。
(……ふぃーっ……良かった。どうにか信じてくれた)
★ ★ ★
男達を魔法で縛り終えると、ティーゴは少し真剣な顔で再び話し始める。
「あのさ……ソフィアは急に知らない場所に移動したとか……言ってただろ?」
「はい」
「俺の仲間に物知りな奴がいるんだよ。そいつの所に行って、その話を相談してみないか? 俺にはちょっと難しくて分からないからな」
「物知りな方が? 是非是非お願いします! ありがとうございます」
ティーゴの案内でグテ村を歩いて行く。
その横をフェンリルと狐が歩いている。
「こいつは銀太って言うんだ。ソフィアはフェンリルが怖くないんだな」
「そうですか、この可愛い子はフェンリルの銀太ちゃんですか! ふわふわの毛並みが美しいですね」
『ふふふっ! そうなのだ! 我の毛並みはいつも主がブラッシングしてくれるからの? フンス』
銀太はソフィアに褒められて嬉しいのか、しっぽブンブンが止まらない。このままだと回転しかねない勢いだ。
『特別に我の毛並みを触ってもいいのだ!』
「わぁ! ありがとう銀太ちゃん」
『なっ! 妾だって尻尾がふわふわで触ると気持ち良いのじゃ』
「ぷぷっ……この二尾の狐はコンちゃんだ」
銀太ばかり誉められ羨ましいのか、狐のコンちゃんまで尻尾をアピールしだした。
「ふふっコンちゃん。ありがとうふわふわね」
クスクスッ
「銀太がこんなに直ぐに懐くなんて珍しいな。コンちゃんもだけど」
「……えっ?」
「あっその。怖くないの? 銀太はフェンリルなのに」
「はい! 全く。 私もフェンリルのお友達がいるので! まだ小さな子供ですがリルって名前で可愛いんですよ。ふふ」
リルを思い出したのか蕩ける笑顔で答える。
「そうか! ソフィアもテイマーなのか。初めて出会ったよ、同じフェンリルを使役している子に」
そう言ってティーゴは嬉しそうに、ニコニコと話す。
「……テイマー? テイム?」
(初めて聞いた言葉だわ。テイマーって何? そんなの勉強してない……)
そんなソフィアの様子を見たティーゴが少し不思議そうに首を傾げる。
「ええっ?……うーんとじゃあ、ソフィアのジョブは何なの?」
「え? ジョブ?? とは?」
(どー言う事? さっきから言ってる単語の意味が全く分からないわ。ジョブって何?)
「えっ……分からないの?」
二人がそんな会話をしていると、可愛い小鳥がティーゴめがけて飛んで来た!
『ティーゴの旦那! 大丈夫か?』
どうやらこの鳥も話が出来るようだ。この少年ティーゴの周りの動物達は不思議な事に、皆人語を話している。
「大丈夫だよ! 急に居なくなって心配かけてゴメンな?」
『なっ? 違うよ! 俺が聞いてるのはその横にいる女の事だよ』
「えっ? なんで?」
『そいつ化け物並みの魔力持ちだぜ? ティーゴの旦那より上かもな』
「ええ?!」
ティーゴは、思わず銀太を撫でているソフィアを見る。
(ちょっと待って……あの可愛い小鳥ちゃん何を言いだすの? 私の事化け物なみって言わなかった? 聞き捨てならないわよ?)
『スバル、心配せずとも大丈夫じゃ此奴は良い奴なのだ。ソフィアのよしよしも気持ち良いのだ』
『そっそうなのか? まぁ? 銀太がそう言うなら……大丈夫か?』
可愛い小鳥はスバルと言う名らしい。
スバルは銀太の背中に乗ると、ソフィアに頭を撫でてもらっていた。
「おいおいスバル? 言うだけ言っておいてそれはないだろ!」
ティーゴが少し呆れた顔でぶつぶつと文句を呟いていた。
そこに新たな二人の男女と猫が加わる。
(また仲間が増えたわ。やっと人が登場ね。あの人達が物知りな人なのかしら?)
ソフィアは銀太達を撫でながらティーゴ達の様子を伺う。
「……んん?」
誰かとヒソヒソと内緒話をしている様に見える。しかし大きな銀太が邪魔でよく見えない。
(……猫と真剣な顔で話してる? 前世で言う所のメインクーンみたいな猫ね……可愛い! よく見えない……近寄ってみようかな)
ソフィアはティーゴの所に歩み寄る。すると目に入ったのは、喋る猫と真剣な表情で話をしているティーゴだった。
「やっぱり猫ちゃんと話してた! 可愛い」
「えっ?」
ティーゴが気付いた時には、ソフィアは不思議な喋る猫を撫でていた。
「こりゃやめんか!」
「わっぷっ」
不思議な猫はシッポでソフィアの顔を撫で、ヒラリとかわす。そしてソフィアの事を「渡り人」だと言った。
「………えっ? 渡り人? 私が?」
(渡り人って何ですか? 意味が分からないんだけど……)
「ええと……この猫がさっき話してた物知りな仲間、パールだ」
「パールちゃん……」
(物知りな仲間は猫? なの? 後ろに立ってる人達じゃないの? 色々とツッコミどころが満載で……一体何から質問したらいいんですか?)
物知りな仲間が猫だと知り、頭を悩ませるソフィアだった。
136
お気に入りに追加
11,661
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魅了が解けた元王太子と結婚させられてしまいました。 なんで私なの!? 勘弁してほしいわ!
金峯蓮華
恋愛
*第16回恋愛小説大賞で優秀賞をいただきました。
これも皆様の応援のお陰だと感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
ありがとうございました。
昔、私がまだ子供だった頃、我が国では国家を揺るがす大事件があったそうだ。
王太子や側近達が魅了の魔法にかかり、おかしくなってしまった。
悪事は暴かれ、魅了の魔法は解かれたが、王太子も側近たちも約束されていた輝かしい未来を失った。
「なんで、私がそんな人と結婚しなきゃならないのですか?」
「仕方ないのだ。国王に頭を下げられたら断れない」
気の弱い父のせいで年の離れた元王太子に嫁がされることになった。
も〜、勘弁してほしいわ。
私の未来はどうなるのよ〜
*ざまぁのあとの緩いご都合主義なお話です*
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。