嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金

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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百十五話 水の女神様

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「ねぇ……こんなに沢山キィの実がなったんだし、お土産に持ってかえろうよ」

ーーふむ? 村人達にか?

「そう! 栄養価も高いフルーツはキィ村の人達が食べたらバッチリだと思って! これなら痩せ細っていた体もすぐに元気になるよ」

ーー確かにのう……我も食べたいし……そうじゃ! 帰ったらコレで何か甘味を作ってくれ。キィの実は甘くてジューシーじゃからのう。美味い甘味が作れるはず……シシッ。

精霊王は涎をたらしながら、ニマニマとほくそ笑む。

「はいはい……」

 ソフィアはそんな精霊王をジト目で見つめ返事を返す。

 相変わらず食いしん坊なんだから。でもキィの実の甘味は良いアイデアね! きっと皆も喜ぶわ。

 でも……キィの実をどうやって取ろうかな。いっぱいあるからなぁ。効率よく取らないと時間かかって、みんなに心配かけてしまう。

 ソフィアが少し困った顔でキィの実を見ていると、それに気付いた精霊王が問いかける。

ーーなんじゃ? そんな顔して。

「へっ?あっ……どうやってキィの実を取ろうかなって考えてて……」

ーーなんじゃそんな事……我にまかせるのじゃ。

 精霊王は、短い両前足を天に上げた……すると、すぐに小さな妖精達が集まってきた。
 そして妖精達はキィの実をもぎ取ると、ソフィアの前に置いていく。

「……えっ?」

 この妖精達の行動に驚き精霊王を見かえすソフィア。

ーーふふん。妖精達に頼んだんじゃ。これなら直ぐにキィの実が集まるのじゃ。フンスッ!

 精霊王は褒めて欲しそうに、どうだと得意げにソフィアを見る。

「わぁ! 凄いよ精霊王様! ありがとうございます。珍しく役に立つ事を……」

ソフィアは精霊王の頭をヨシヨシと撫でる。

ーーそうであろ。後半の部分は余計じゃがの?

 そう言ってジロリとソフィアを見る。

「ええ?……余計な事言ったかなぁ? 良いじゃん! ねっ? ありがとうございます」

 ソフィアは少し目を逸らすとガシガシと再び精霊王を撫でた。

ーーわっこりゃ! 乱暴に撫でるでない!

「えへへ♪ ありがとうございます」

ソフィアが精霊王と戯れてる間に、目の前には数え切れない程のキィの実の山が完成した。

「わっ……こんなにも! 凄いっこんなに取ったのに、木にはまだまだいっぱいキィの実が実ってる!」

 凄いわ! ここにあるだけでも全ての村人達に行き渡るだけの十分な量があるのに!
 木にまだあんなに実ってるなんて! これならまた村人達がこの山に取りに来ても大丈夫ね。

 良かった。

「ようしっ! アイテムボックスに入れるね」

 ソフィアがそう言うと目の前にあったキィの実の山は消えた。

「さて! 村に帰ろう。ノームお願いね」

ーー任せて! そのかわり僕にもさっき精霊王様が言っていた、甘味とやらが食べたいな。いい?

ノームは鼻先をソフィアに擦り寄せる。

「ふふっ……もちろんよ! いーっぱい作ってあげる」

ーーやったー!

ノームは喜び足をパタパタさせて飛び跳ねる。

 キィの実はかなりジューシーだから……何をつくろうかな? ふふっ。


★  ★   ★



「ただいまー!」

ノームに乗ったソフィアが、みんなが集まっているキィ村の水場に戻ってきた。

「ソッ! ソフィア! どこに行ってたんだい?」
「そうだよ! 急にいなくなるから……僕達心配したんだよ?」
「心配しました」

ソフィアの元に急いで集まる三人。

「えへへ……心配かけてゴメンね? 精霊王様がいきなり……後でこの事はゆっくり話すから」
「……ちゃんと話してもらうからね? まぁソフィアが無事で安心した」

 そう言ってアイザックは、ノーム乗ったソフィアを抱いておろした。

「みょっ!」

 突然抱き抱えられ驚くソフィア。

 そしてそのままギュッと抱きしめた。

「もう黙って行くなんて事しないでよ?」

 アイザックはそう言うと、ソフィアを見つめ優しく頭をなでる。

「はわっ……わっ」

 ソフィアは急に抱きしめられ、頭を撫でられ……もう、どうして良いのか分からずに固まる。

「アイザック! 何してるんだ」

 それを見たジーニアスが二人を引き剥がし、ソフィアを自分の所に寄せた。

「なっ……ジーニアス」

 アイザックはせっかくの抱擁を邪魔されキッとジーニアスを悔しそうに睨む。
するとジーニアスの横でまだ顔を赤らめ固まっているソフィアが目に入る。
それを見たアイザックは頬を染め口元を抑え呟いた。
「ソフィアが照れてる……可愛い」


 そんな中、シャルロッテはサッとソフィアの横に立ち手を握る。

「ふふッ皆様仲良しですね」

「はっ? シャルロッテ嬢? どー見てそう思うの?」
「そうだよ!」

 アイザックとジーニアスは慌て反論するも、シャルロッテはソフィアの手を握りニコニコと幸せそうに笑っていた。

 すると一部の村人達がソフィアに気付き。
「水の女神様だ!」と騒ぎ出した。

「水の女神様が帰ってきたぞー!」
「皆、感謝をしないか!」
「水の女神様にお礼を!」
「ああっ水の女神ソフィア様!」

 その声に固まっていたソフィアもハッと正気に戻る。

 水の女神様って? 何?

 それに村人達の姿、やけに元気になってない? あんなに痩せほそりグッタリしていたのに。頬とか艶々してるよね?
 私が居ない間に村人達に一体何があったの?

 ソフィアが村人達を見て驚いていると、アイザック達は「あちゃー……気付いちゃったか」「はぁ……大変な事になるぞ」と言い溜息をはいた。

えっ? 大変な事?

 ソフィアはその意味が分からず、少し困惑するも、直ぐにその意味を理解した。

「ちょーーっ! 何でみんな私の前に平伏すの? ちょっ? やめて? なんで?」

 村人達がどんどん集まり、ソフィアの前で祈る様に両手を合わせて、平伏していく。
 口々に「水の女神様ありがとうございます」と呟きながら。

「わっわっ……私は、水の女神様とやらじゃないですけどー!?」

 そんなソフィアの横でアイザック達は、苦笑いするしかなかった。




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