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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
閑話 アイザック達は……
しおりを挟むアイザックside
精霊王が突然ソフィアを連れ去った為、「水の女神様が拐われた」と騒ぐ村人達の対応にアイザックとジーニアスはおわれていた。
「はぁ……精霊王様は一体何処にソフィアを連れて行ったんだ! いくら精霊王様が一緒だとはいえ……はぁっ……」
(ソフィアに何もなければ良いんだけど、心配だよ)
パニックになっていた村人を、どうにか納得させる事が出来たアイザックは、水場近くにあるベンチに、倒れ込む様に座り大きな溜め息を吐く。
「本当にね! せめて僕らには何をしに行くのか、説明くらいして欲しかったよ……ソフィアの事だって心配だし……はぁ」
隣に座るジーニアスも、村人達への対応に疲れ、ベンチの背もたれにしなだれかかる。
「二人とも、そんな顔しないで下さい。大丈夫ですよ! きっと何か素敵な事をしに行ってるんです」
シャルロッテは、そんな二人とは正反対にソフィアが次は何をしてくれるのかと、少しワクワクしている様だ。
「シャルロッテ嬢……そうは言ってもね……? ソフィア達が村から出て行って、かれこれ三十分以上はたっている。あまり時間が経ちすぎると、また村人達が心配して騒ぎだしかねない。その時に何も聞いてない僕らは、何の説明も出来ないんだよ?」
アイザックが先の事を想像し頭をかかえる。
「……それはそうですけど……」
精霊王様がついているので何の心配もないが、確かに何をしているのかは知りたかったなとシャルロッテは考えていた。
そんな時だった。
「…………冷たっ? 頬に水?」
シャルロッテが空を見上げると、キラキラと輝く大量の雨が村に降り注いだ。
「わぁっ! 冷たっ? 何で晴れているのに大量の雨が?」
アイザックとジーニアスは慌てて屋根がある場所に避難する。
見上げた空は不思議な光景だった。キラキラと太陽が輝く中、黒い雲ではなく、白く輝く雲から雨が村に降り注ぐ。
村人達は一斉に外に出て、雨を体中に浴びる。
「雨だー! 一ヵ月ぶりの雨」
「なんて気持ちの良い雨なんだ……体が癒される」
「本当に……ああ。満たされる」
「これは……雨なの? 美味い」
「どんどん力が漲る」
村人達が恍惚としながら雨を浴びている。中には泣いている者もいた。
シャルロッテは屋根に隠れる事なく、村人達と一緒に雨を楽しそうに浴びていた。
雨を余りにも美味しそうに口を開け飲んでいる村人達をみて、真似をして雨水を舐めてみると……。
「!! これは……ただの雨水じゃない」
何かに気付いたシャルロッテは、アイザック達の所にかけよる。
「アイザック殿下! これは雨水じゃありません」
「何だって?」
(確かに雨水にしては余りにもキラキラと美しい)
慌ててアイザックも外に出て雨を浴びる。
「……これは、回復……ポーションの様に体が……それだけじゃない」
アイザックは降ってくる雨を両手で受け止めゴクリッと飲んだ。
「美味しい……これはソフィアの水だ!」
「やっぱり!ソフィア様のお水ですよね」
シャルロッテは嬉しそうにクルクル周り雨を浴びる。
「……こんな大量に……ソフィアの水を?」
(ソフィアのやつ一体何をしてるんだ? 癒しの水をこんなふうに雨で降らせるとか……規格外すぎるよ!)
ふとアイザックが村人達の方に視線をやると、やせ細っていたはずの村人達の体は、少しふっくらとし、頬が艶々と健康的な色になっている。
「……ちょっと待ってくれ! うそだろ。浴びるだけでここまで回復するとか!」
(ソフィアは何してくれちゃってるんだ? これじゃ本当に水の女神様じゃないか)
アイザックは固まり、その横でシャルロッテは、村人達と水の女神様への感謝の踊りを、雨の中楽しそうに踊っていた。
まだこの後、ソフィア達が帰って来たら、アイザックが立ったまま気絶しそうな報告が待っているのだが……。
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