嫌われ者の【白豚令嬢】の巻き戻り。二度目の人生は失敗しませんわ!

大福金

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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百七話 白馬

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 次にする事も決定し、私達が食堂でのんびりとお茶を飲んでいると、金色に輝く鳥が飛んできてお父様の肩に留まった。

 その鳥を見たお父様の眉間に皺がよる。これって連絡に使う魔法鳥だよね。お父様は何故あんな顔を……?

「お父様この鳥は……魔法鳥では?」

「そうだね……はぁ……ったくクソ陛下の奴。なんでこんな絶妙なタイミングで手紙をよこすんだ?」

 お父様は何やら一人ぶつぶつと独り言を言いながら、魔法鳥がよこした手紙を読んでいる。
 それを見たジーニアス様が魔法鳥の色を見て驚く。

「グレイドル公爵様、この鳥は国王陛下からですよね?」

「……ああそうだ」

 ジーニアス様曰く、魔法鳥には様々な色があるらしく。
 一般的な連絡に使われる魔法鳥の色は青色、緊急を要する連絡に使う時は赤色の魔法鳥が使われているんだとか。

 さらには高位貴族が使う魔法鳥は銀色、そして王族の連絡に使われるのは金色に輝く魔法鳥なんだとか。
 そう、この金色に輝く鳥がお父様の肩に毅然と止まっていた。

「はぁ……何だって今なんだ! まだこれからフィアたんとする事がいっぱい……」

 手紙を読み、ぶつぶつと怒りを露わにする父アレクを見て、私は手紙に何かよからぬ事が書かれていたのかと心配になってきた。

「あの……お父様? 国王陛下は何を? 王都で何かあったのですか?」

 お父様は心配そうに見つめる私の頭を優しく撫でる。

「大した事じゃないんだ。フィアたんが心配するような事は全くなくてね? だけど! 凄く不本意だけど! お父様は至急王都に戻らないといけなくなったんだ」

「えっ? 今すぐにですか?」

「そうなんだ。私もフィアたんと一緒に村を訪れながら王都に帰る予定だったんだけどね……はぁ」

 お父様は大きく溜息を吐くと、肩の上で待っている魔法鳥に返事を返した。

 すると魔法鳥はお父様の肩から舞い上がりヒュンッと飛んで行った。

「お父様……本当に大丈夫なのですか?」

「ああ……フィアたんが心配する必要は全くないから! 本当にたいした用事でも無いのに陛下の奴が……ゴニョ」

「へっ? なんて?」

「んん″っゲフンッ! とりあえずお父様は王都に至急帰らないといけない、心配だけど! アイザック殿下、ジーニアス、君達にソフィアの事を任せる! 無事に! 小さな怪我などもさせぬ様に! 無理させないでね! 頼んだよ!」

「「はいっ!」」

 お父様は二人の肩を軽く叩きソフィアをギュッと抱きしめると、宿屋を出て馬小屋に繋がれていた翼の生えた馬バイコーンに乗り空に飛び立った。

「じゃあ頼んだからね? くれぐれも長居はしないように! 早く王都に帰ってくるんだよ」

「分かりました! お父様お気をつけて」

 お父様を見送ると、私達も宿屋を後にした。

「さてと僕達も出発の準備をするか!」
「準備ですか?」

 アイザックとジーニアスが準備をすると張り切っていた。

 一体何の準備が必要なのかな?  だって食料はアイテムボックスにいっぱい入ってるし……聞いた方が早いわね。

「何をするんです?」

「まずは馬車を引っ張ってくれる馬を購入しないと。僕達馬なしの馬車でこの辺境の村に飛んで来たんだから」

 あっ! そうだった。私達飛んで来たんだった。引っ張ってくれる馬がいないんじゃ、また精霊王様に頼んで飛んでいく事になるんだ。

「この村で馬が購入できるのですか?」

 そう質問するとジーニアス様が瞳をキラキラとさせ、答えてくれた。

「もちろん! この村はね街と言ってもおかしくない程に大きな村で栄えているからね、有名な馬の調教師がいる厩舎もあるんだよ?」

 さすがジーニアス様だわ。何でも知っている。

「わぁそうなんですね! 馬を見に行くの楽しみだわ。ねっシャルロッテ」
「そうですね! 私も馬を見に行くのは初めてなので、楽しみですわ」

 私はシャルロッテとワクワクしながら厩舎へと歩いていった。

 厩舎に着くと想像よりも広い場所にたくさんの馬が並んでいた。自由に歩いている馬もいる。

 私達が近づくと、この厩舎の調教師や店主達が急いで走ってきた。

「女神様に聖女様! このような場所に何の用事で?」

 またここでも女神様……うう。
 これはもう訂正のしようがないのよね。諦めが肝心よね。

 私は女神様呼びのことは恥ずかしいが、スルーして話を続ける事にした。

「あのう……馬を購入させて頂きたいと思いまして」

「女神様に馬ですか? 任せてくださいこの厩舎イチの馬を用意致します!」

 店主がドンっと胸を叩いた。

 店主が用意した馬はどれも毛艶も美しい良い馬だった。かなり高そうな馬。

「この厩舎で最高に良い馬達です! よく走るし体力もある、それによく言う事を聞く賢い馬ですよ」

「ほう……これは中々良い馬だ、王都でもこんな良い馬は中々出回らない」

 アイザック様が感心する様に馬をじっと見ている。

「そうでしょう、そうでしょう。特別な方にしかお出しいない馬達ですから」

 店主とアイザック様が馬について話してる中、私は奥に繋がれた一匹のひときわ大きい白馬が気になった。
 この厩舎の馬達はみんな自由に歩いたり、手前の方に並び見に来る客に見やすいように立っているのにその大きな白馬だけは奥でひっそりと隠れる様にいた。

 私はその白馬のことがどうしても気になって、店主に聞いてみた。

「あの? 何であの白馬はあんな奥に繋がれているんですか? あの場所だとお客様からも見えないし……」

「ああ……アイツはね? この厩舎イチ大きくて力も強く、戦場を駆け回る騎士様の馬にもなれる程に強い馬なんだが……問題があってね? アイツは人嫌いで人が触ろうとすると噛みつこうとしたり、蹴ろうとするもんだからね。どうにも出来なくなってあんな奥に繋いでるんです。可哀想だけどこのままじゃ処分するしかない馬なんだ」

「処分ってそんな!」

 役に立たない馬は処分されるのは理解しているけど……そんな話を聞いてしまったら、どうにか出来ないかなと考えてしまう。

 私に触れないかな? 
 私の魔力は妖精さんが虜になるみたいだし、人嫌いの馬さんも虜にならないかな?

「あの馬を触ってみても良いですか? 何かあったらすぐに離れますので」

「アイツに? まぁ女神様だから大丈夫か? 無理そうならすぐに離れてくださいね」

「はい! もちろんです」

 店主さんは少し心配そうだけど、見に行く事を了承してくれた。良かった!


「ソフィア大丈夫?」

 私達の会話を聞いたアイザック様が心配そうに見つめる。その目はやめた方が良いと言っているよう。

「大丈夫です。私……あの馬が少し気になったので様子を見てくるだけです。危険なら直ぐに離れますから心配しないでください」

 馬に近づくと、ギロリッと睨みをきかす様にこちらを見てくる。

 ふふふっ。そんな顔をしてられるのも今の内だけなんだから。私には秘密道具があるんだからね。

 私は店主から貰った人参を、馬の前に出した。

 ブルルル!?

 人参を見た馬の様子が激変する。涎を垂らし人参を必死の形相で見ている。

 そうこの人参はただの人参ではない、私の魔力をたっぷりと染み込ませた特製人参。

「ふふふ? お馬ちゃんこの人参が欲しいの? だったら私に頭をなでなでさせてくれる? 触らせてくれたらいーっぱい人参あげるよ?」

 私は追加で特製人参を出した。

 ブッルウ!

 白馬は私の言ってる事がが分かるかの様に前に頭を出した。

 「撫でで良いって事?」

 ブルルウ♪

 馬は早く撫でろと言わんばかりにソフィアに頭を押し付ける。

「ふふっ……ありがとう」

 危険どころか話が分かる賢い白馬じゃない。

 私は馬の頭を優しく撫でた。

 馬は私から貰った人参を恍惚とした表情で食べていた。ふふふ。やはり私の魔力は美味しいらしい。妖精や神獣でもない普通の白馬にも分かるなんて! もしかして私この力で動物使いになれちゃう?

「ふふふっ」

 白馬を手懐ける事が出来て、にやにやしていただけなのに。何故かその姿を見た店主達が、私の事を「女神様は暴れ馬をも手懐け虜にするのか」なんて言ってたなんて勿論知る由も無かった。

 更にはアイザック様、ジーニアス様、シャルロッテの三人までもが店主と同じようにうっとりと自分を見ている事も。

 白馬は私の魔力が美味しくって虜になっただけなんだけど。側から見れば、優しい女神様が暴れ馬を手懐けた様しか見えなかったようだ。

 周りがどんな風に自分の事を見てるか気付いていない私は、一人ホクホクと白馬を助ける事が出来たことを喜んでいた。





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