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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編
第百五話 女神様再び
しおりを挟む「ふふっ……旅行に来たみたい」
私は初めて泊まる宿屋を前に興奮していた。
お父様曰く、この村一番の綺麗な宿屋らしいのだけど、すごく申し訳なさそうに「こんな宿屋にフィアたんを泊める事になるのは心配だ。メイドもいないし……一人で大丈夫かい?」と部屋に入るまでずっと不安げに私を見ていた。
私はお父様にとって、どんなに出来ない子供のイメージなんだろう。シャルロッテだって一緒の部屋に泊まるのに。
まぁ……この世界の貴族令嬢は殆ど自分付きのメイドにお世話して貰うので、自分で何かするイメージが無いのかもしれない。でも私には、一人で何でもしていた日本人の記憶もある。
メイド達がいない部屋にシャルロッテと一緒に泊まるのが、ワクワクして楽しみで仕方ない。実は誰かと一緒にお泊まりするのは初めてなのだ。
「ふわぁー! 可愛いお部屋ね最高!」
「本当ですね! 辺境の村でこんなにも素敵なお部屋に泊まれるなんて……それもソフィア様と一緒に」
部屋に入ると、思わず二人で感嘆の声が溢れ出る。
私達が泊まる部屋は一番良い部屋だと宿屋の店主さんが言っていた。
広さは前世でよくあるダブルルームなんだけど、家具や調度品が日本ではなくヨーロッパ調なので外国に旅行に来て宿泊している気分。
異世界なんだけど……少し前世のことを思い出してしまう。
シャルロッテと海外旅行に来たみたい! ああっ! 幸せ。
「ふふ……私誰かと一緒にお泊まりするの初めてなんです。お友達もいなかったので、その初めてがソフィア様で嬉しいです」
シャルロッテはそう言いながら、頬を桃色に染めニコニコと微笑む。
可愛い顔で余りにも嬉しい事を言ってくれる。
「シャルロッテ!私もよ」
私はベッドに座るシャルロッテをギュウっと抱きしめる。
「キャ! ソフィア様」
突然抱きしめられたので、驚き頬がさらに紅潮するシャルロッテ。
可愛いすぎですよ?
「ふふふっ」
そんなシャルロッテをニマニマしながら見ていると
「私もぎゅーっです」
シャルロッテがギュウっと抱きしめ返してきた。
「ソフィア様。私は貴方と出会えてからずっと幸せです。これからもずっとお友達でいて下さいね」
「……もっもちろんよ!」
私達は其々のベットに入っても、今日一日あった出来事を話したりした。
場所のせいかまたそれが楽しくって、興奮してなかなか寝付けなかった。
★ ★ ★
「おはようございます」
目が覚めると、朝食の準備が出来たと部屋に呼びに来てくれたので、一階にある食堂にシャルロッテと一緒に降りるとすでにアイザック様とジーニアス様がテーブルを囲っていた。
「おはようフィアよく眠れた?」
「はいぐっすり眠れました」
「それは良かった」
アイザック様が天使の様な眩しい笑顔で微笑む。
朝から後光が溢れています。
「さぁ立ってないで座って?」
アイザック様に手を引かれ私はそのまま横に座ることに。
「あっ! またアイザックは…….」
ジーニアス様が少し顔を顰め、何やら言いたそうに席を立つが、すぐに座った。
あれ? この席に座るのダメだった? 私が困った顔をしてジーニアス様を見ると
「ゲフッ! ああ気にしないで? 座ってねソフィア。なんでも無いから……シャルロッテもどうぞ」
そう言って私に微笑みシャルロッテをエスコートした後、すぐさまアイザック様をジト目で見ていた。うーん……よく分からないけど二人は仲良しなんだよね?
四人で仲良く朝食を食べていると、この宿屋に泊まっていた人達が、私やシャルロッテの所にやって来ては「女神様、聖女様ありがとうございます」とお辞儀をしクッキーやらケーキなどの甘味や食べ物を机に置いていく。
私達のテーブルは、あっという間に貰った甘味や食べ物でいっぱいになった。
……これ四人で食べ切れる量じゃない。
そんな所にお父様が一番最後にやって来た。
「おはようフィアたん。ベットは硬くなかった? ぐっすり眠れたかい?」
「はい楽しくって少し夜更かししてしまいましたが、ぐっすり眠れました」
「それは良かった」
そう言ってお父様は私の額に軽く口付けをすると、私の横に座った。
右側がアイザック様、左側がお父様、気のせいかも知れないけど二人の席が近い。
三人並んで座っているんだけど、太ももがつきそうな距離。
あの? 二人とも近くない?
「フィアたん? 朝からすごい量だね。こんなに沢山食べるのかい?」
お父様がテーブルに並ぶ甘味や料理の量に驚いている。
「ええとこれは……」
私が返事に困っていると、また新たな人がテーブルに訪れ「女神様、聖女様。この村を助けてくれてありがとうございます」と言って私とシャルロッテに深々とお辞儀をし甘味をテーブルに置いていった。
村人達は、神様にお供え物をしている気分なんだろうか?
「ちょっ?! なんでフィアたんのことを女神様と? 確かに女神の様に美しいのは分かるが………」
お父様が驚いている間にも、何人もの村人や騎士それに冒険者達までが私の事を女神様と呼び頭を下げていく。
流石にお父様も不思議に思ったのか、冒険者を呼び止め質問した。
「君? なんでこの令嬢のことを女神様と呼ぶんだね?」
「なんでっですか? 俺のこの右腕は千切れていた。その手をここにいる女神様が元通りに治してくれたんですよ」
「なっ?フィア…….が?」
それを聞いたお父様が驚き私を見る。
「私の亭主は魔獣に食われて足が無くなっていた。なのにそこに居られる女神様が全て治してくれた! 無くなった足ももとどうりさ! ああ……今思い出しても女神様の奇跡は……ふぅううっ」
「僕の父ちゃんもだ!
死にそうだったのに女神様が助けてくれたんだ!」
冒険者の言葉を皮切りに女神様に助けてもらった自慢大会が始まった。
その話をお父様は目を見開き倒れそうになりながら必死に聞いていた。
あの……もう勘弁してください。
女神像がどうどん凄くなって私とかけ離れていってます。
「フィアたん? この話は昨日聞いてないよ?」
お父様が私をジロリと見つめる。
あの……これはそのう別に隠していた訳じゃなくて……ビックボアの話で終わっちゃったから……ああっ言うの忘れてたなんて絶対言えない。
アイテムボックスの中に入ってる、残りのビックボアの事だって話してないのに。
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