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やり直しの人生 ソフィア十三歳魔法学園編

第百一話 魔力

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「んんっ!ええとっ……皆さん取り敢えず村に帰りますか?」

 私はできるだけ大きな声を出し、騎士団や村人達みんなに聞こえる様に話した。
 
 だってこのままこの場所をどれだけ必死に探してもビックボアは出てこない。
 だって私のアイテムボックスの中に入ってるから。

「えっ? ですがソフィア様、まだ消えたビックボアの謎が解決していません」

 グレイさんが困ったように話しかけてきた。
 それを聞いたアイザック様は、なんとも言えない顔をして私を見る。何かを察したのだろう。

 ええと……そんな顔させてしまってごめんなさい。

 私が困った顔をしてアイザック様を見つめ返すと、片目を閉じて微笑んだ。
 これは任せてって事? ウインクしたよね?

「とりあえずだ、何も無いここにいても仕方ない! 村の結界の事もあるし一旦帰ろう」

 アイザック様が遠くを見ながら、グレイさん達に命令した。

「はっ! わかりました。確かに結界のこともあります。ビックボアのことは気になりますが村に一旦帰りますか」

 グレイさん達騎士団の後をついて村へと帰る事になった。

ーーソフィア? ビックボアのことは言わんのか?

 短い尻尾プリプリしながら、私の横を歩く精霊王様が、面白そうに聞いてくる。これ絶対この状況を楽しんでるな。

「…………後で言います」

 村に着くと、広場でシャルロッテが座り込んでいた。

 その周りを村人達が囲い皆涙を流しお礼を言っていた。


「シャルロッテ!」

 私は慌ててシャルロッテの所に走って行った。

「ソフィア様! 今やっと最後の結界を張り終えた所です。ふふ少し疲れちゃいましたが無事に全て張り終えることが出来ましたよ。私頑張りました」

 疲れているだろうにシャルロッテは美しく微笑んだ。
 うう……眩しい女神様の様に神々しい。

 確かに村に神聖な空気が漂っているのが分かる。上を見ると薄い膜が村に張られていた。

「これが結界?」

ーーそうじゃ! あの娘はがんばった様じゃのう。じゃが無理しすぎておるみたいじゃぞ? もう魔力が殆ど残っておらん。

「は? 残ってない?」

 精霊王様に言われて再びシャルロッテをよく見ると、神々しく見えるが顔から脂汗が流れている。 
 桃色の頬も青いような気がする。

ーーこのまま放っておくとあの娘倒れてしまうぞ?

 なんですって? シャルロッテが倒れる? 精霊王様が恐ろしいことを言い出した。

「そんなっどうしたら良いの?」

ーー簡単じゃ。ソフィアの魔力を分けてあげれば良いんじゃよ。

「私の魔力? いくらでも分けるよ! どうすれば良いの?」

ーーんん? それは分からんが……

「ちょっ!? 肝心の所が分からんじゃ無いでしょ! ちゃんと教えて!」

 一番大事な事を言わないので、思わず精霊王様を抱き上げユサユサと激しく揺らす。

ーーぐっ! こりゃ辞めんか! そうじゃ! おでこをくっ付けて魔力を送ってみたら

 え?
 おでこをくっ付ける?
 私は精霊王様を下に置くと、シャルロッテの前に座り頬を両手で挟んだ。

「ふぁっ!? あっあの? ソフィア様?」

 なぜかそれだけで、シャルロッテの青ざめた頬は赤く紅潮してきたが、精霊王様はおでこをくっ付けると言っていた。

 私はそのままシャルロッテに顔を近づけおでこをくっ付けた。

「あっあわ………」

 こんな至近距離は流石に嫌なのか、シャルロッテが困惑の悲鳴をあげるがごめんね?
 魔力を送る為だから、少しだけ我慢して。

 ええと? おでこをくっつけた後どうすれば良いの?
 魔力の送り方なんて知らない、でも私はシャルロッテに届けと必死に願った。

「………ああっ暖かい。ソフィア様から温かいとても心地良い何かが……」

 よし! 私の何かがシャルロッテに流れていくのが分かる。きっとこれが魔力なんだ。

 数分もすると、シャルロッテの魔力が満タンになったのが分かる。

「ふう……」

 私はシャルロッテから離れた。
 凄いこんな事まで出来るなんて、創造神様チート能力をありがとうございます!


 元気になった筈なのに、シャルロッテは頬を紅潮させまま固まりしばらく動かなかった。
 大丈夫かな? 私の魔力が合わないとかじゃ無いよね?

 ふと横を見るとアイザック様とジーニアス様が立っていて、なぜか自分達にも魔力を分けてくれと言い出した。

 いやいや?
 二人とも魔力満タンですよね?

 そう言って断ると、泣きそうな顔をしてシャルロッテを羨ましそうに見ていた。

 その姿を精霊王様は転げ回って笑っていたけど、そんなに笑うこと?

 二人には、私の魔力がそんなにも美味しそうに見えたのかな?





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