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ヴィルヘルニア帝国

ヴィルヘルミナ帝国へ

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「乱道様……大丈夫ですか?」
「ああ……ちょっと横になったら大丈夫だ。すまないなキャロ、足止めしちまって……」
「そんな、気にしないでください。後一日でヴィルヘルミナに着きますし」

 キャロはそう言って俺の目の前に水を置き「ゆっくり休んでくださいね」と言って馬車に戻って行った。
 情けない姿を見られたくないってのが、分かってくれたんだろう。みんな気を遣ってくれて馬車の中で待ってくれている。
 まぁ琥珀と稲荷は昼寝中だけどな。

 俺は外の空気を大きく吸いながら、横になり空をボーッと一人で眺めている。

 一日目はどうにか耐えたんだが、二日目に我慢の限界が来て気持ち悪くて馬車に乗ってられなかった。

 気づかれないように我慢していたんだが、真っ青になった俺に気づいた我路が『休憩しましょう』と心配して助け舟を出し今に至る。

 ……ったく情けねえなぁ。

 いくら馬車に乗り慣れてないとはいえ、男として恥ずかしすぎる。
 だが馬車になれる気もしねぇ。
 決めた! ヴィルヘルミナ帝国に着いたら、乗り心地のいい馬車を開発するぜ。

「ふぅ……だいぶ落ち着いてきたか」

 吐き気と気落ち悪さがなくなってきた。
 それがなくなると、グルル~っと腹が減ったと音で分かりやすい合図がなる。

 もう昼か。迷惑をかけたし、何か上手い飯でもみんなのために作るか。
 材料は色々あるしな。
 何がいいかな?

 日本にいた頃は料理にこだわって、色んな物を自炊して作っていたからな。

 こっちにある材料でガツンとうんまいの……何にしよう?
 ワイバーンの美味い肉もたんまりあるしなぁ。
 そうだ! 肉じゃが食べてぇな。
 ジャガイモっぽい芋とかにんじん、玉ねぎ、それをエセ王国の調理場からパクッ……んん。拝借してそのままだった。

 最近はずっと我路が料理してくれてたからなぁ。

 てか我路も琥珀もずっと出っ放しなんだよなぁ。
 召喚獣ってそもそもそんな長時間でてられんのか? どう考えてもあいつらがおかしいよな。
 だって召喚獣について書いてあった本には長くて二時間だと書いていた。
 ミントの召喚獣になったタイタンも一時間ほどで、ミントの体の中に戻って行ってたもんな。

 なんてことを考えながら俺は材料を炒めていく。みりんが欲しいところだがないから仕方ない。
 塩、胡椒で簡単に味付けして、仕上げに砂糖、酒、醤油を入れ煮込む。
 男料理なんで目分量なのは勘弁な。

「いい匂いがしてきたなぁ。どっれ味見……んんっ!」

 これってワイバーンの肉の効果なんか? 単純な調味料しか入れてないのにめちゃくちゃうめぇ!

「うんまぁ!!」

 匂いと俺の声につられて、馬車から琥珀が降りて来た。

『美味しそうな匂いがするでち! らんどーちゃまが作ったんでち?』

 琥珀が俺が作った鍋を覗き込む。

「ああ、腹がへったなぁって思ってな。肉じゃが作ったんだよ。みんなを呼んできてくれ」
『わかったでち』

 琥珀はダッシュで馬車に戻ると、キャロと我路が慌てて降りて来た。
 我路の腕の中には稲荷がまだ眠そうに、目を擦っている。

「乱道様! 体は大丈夫なのですか? 料理ならボクのシェフが作るのに! だけど……すごく美味しそうな匂いがしますね」

 キャロはそう言って鍋に顔を近づけうっとりと匂いを嗅いでいる。

『お腹がすいたのでしたら、私が作りますのに……』

 我路は眉尻を下げ、少し申し訳なさそうに俺を見る。

「そんな顔しないでくれ、いつも我路に作って貰ってたからな? たまには俺の料理を食べて貰いたくって。これでも意外とできんだぜ? さぁ食って見てくれ」

 俺はさらに肉じゃがを入れ、みんなに配っていく。

「お肉とお芋……初めて食べる料理ですね……どれ。んんんっ」

 キャロが一口口に入れて破顔する。その顔が見たかったんだよな。

『うううっうんまいでち! スイーツみたいに甘くってうんまいでち!』
『ほう……ジャガイモに旨みが染み込んでいて美味しいですね』
「うまっ、うまっ」

 琥珀と我路も気に入ってくれたみたいだな。
 稲荷なんてさっきまで眠そうだったのに、目を見開きかっ込んでいる。そんなに急いで食べたら、喉詰まらせるぞ?
 
「そう! そうなの! お芋が口の中でほろりと溶けて美味しい旨みが広がって……もぐっ!」

 キャロはどうやらジャガイモが気に入ったみたいだ。
 そればっかおかわりしていた。

 久しぶりに食べた肉じゃがは、日本で食べた時より美味く感じた。
 
 
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