64 / 77
エスメラルダ帝国
旅立ち
しおりを挟む
「……もう行っちゃうの?」
ミントが俺の足にしがみ付き離れない。
「やだよう。もっと乱道様と居たい。一緒に森にだって行きたいし、召喚獣のこと教えてもらいたいし……それにそれに」
「ミント……俺もな? 出来る事ならもう少しここに居たいんだけどな? この街を抜けるとある、【ヴィルヘルミナ帝国】に用事があるんだ。それが終わったら、またこの街に帰ってくるから、それまで召喚獣を使ってお前が下民街をよくして行くんだ。頼んだぞ?」
そう言って足にしがみ付いているミントを抱き上げる。
「僕が……街を?」
「そうだ」
「僕に出来るかな?」
「何言ってるんだよ、ミントなら余裕だぜ?」
俺はそう言ってミントの頭を撫でる。
「えへへ」
ミントは少し照れ臭そうに笑う。
昨日はアノめんどくさい出来事(ルミ野郎に振り回されたアレな)を終えて町に戻ると、待ってくれていたミントの家で飯をご馳走になり、一緒のベットで寝た。(目が覚めると琥珀と稲荷が腹の上で寝ていて、身動き取れなくて金縛りにあったのかと焦ったのは秘密)
ミントは病気の母親、それに頼る父親もいない事から、自分がしっかりしなきゃいけないと思って、ずっと生きてきたんだろうな。誰にも甘える事なく。
そんなミントが俺に甘えてくれるのは本当に嬉しい。
だから街を離れるのは、正直俺だって寂しい。
でも俺は幻獣族という稲荷の謎を解明しないと行けない。
召喚獣のタイタンがミントの新たな支えになってくれるといいんだがな。
「分かった。僕……乱道様が帰ってくれた時に、ビックリさせるね! 楽しみにしててね」
ミントがそう言って小さな手で、誇らしげに自分の胸を叩いた。
「それは楽しみにしてるぜ?」
「乱道様~!」
キャロが勢いよく走ってきた。
「はっはぁ……。出発の準備ができました。いつでもヴィルヘルミナ帝国に向けて街をでれますよ」
「おっそうか。ありがとうキャロ!」
「もちろん、街での出国に関するいろいろな手続きも完了しています!」
キャロが誉めてと言わんばかりの顔をする。
頭を俺に突き出して。これは撫でてと言うアピールか?
「感謝してるぜ」
そう言ってキャロの頭をワシャワシャと撫でた。
「ひゃわっ!?」
おっと……つい耳まで触ってしまった。
★★★
「乱道様! 僕待ってるからね!」
タイタンに乗ったミントが大きく手を振る。
「「「「「大召喚士様ありがとうございました」」」」」
下民扱いされていた街の人たちが頭を下げ、俺を送り出してくれる。
もう下民紋が消え失せたから、下民なんて括りはないんだがな。
みんなに見送られながら国境の門をくぐり馬車で通り抜けた。
この街はこの世界に来て初めて楽しいと思えた、いい思い出ばかりの街だから……なんだろう。街が小さくなっていくにつれなんとも言えない寂しい気持ちが。
『らんどーちゃま? どうしたんでち? 寂しいでちか? 仕方ないでちねぇ。ワレがよちよちしてあげるでち』
琥珀が俺の頭をポンポンと撫でる。ふわふわ肉球のなんとも言えない感触が。
気持ちは嬉しいんだが、琥珀のドヤり顔がいただけない。『どうでち~? ワレは優しいでち。誉めてもいいんでちよ?』 って言わんばかりの顔をして俺をみる。
鼻の穴膨らんでるぞ?
「うゆっ!」
「んん?」
稲荷までが俺の膝の上に立ち、頬を撫でてきた。琥珀の真似をしているんだろうが……琥珀と違って一生懸命で可愛い。
そうか。俺は稲荷までが心配するような顔をしていたんだな。
……反省。
「乱道様はみんなから好かれていますね」
そんな俺たちの様子をキャロが微笑ましく見ている、なんだか少し恥ずかしい。
そんな目で見ないでくれ。
「ヴィルヘルミナ帝国か。どんな国なんだろうな」
俺がそう呟くと。
「ふふふ。我が国は楽しいですよ? 乱道様を招待できる事、今からワクワクしています」
キャロが楽しそうに話す。そうか一応王女様だもんな。
ヴィルヘルミナ帝国の国境まで三日か。
馬車酔いしないといいな。
ミントが俺の足にしがみ付き離れない。
「やだよう。もっと乱道様と居たい。一緒に森にだって行きたいし、召喚獣のこと教えてもらいたいし……それにそれに」
「ミント……俺もな? 出来る事ならもう少しここに居たいんだけどな? この街を抜けるとある、【ヴィルヘルミナ帝国】に用事があるんだ。それが終わったら、またこの街に帰ってくるから、それまで召喚獣を使ってお前が下民街をよくして行くんだ。頼んだぞ?」
そう言って足にしがみ付いているミントを抱き上げる。
「僕が……街を?」
「そうだ」
「僕に出来るかな?」
「何言ってるんだよ、ミントなら余裕だぜ?」
俺はそう言ってミントの頭を撫でる。
「えへへ」
ミントは少し照れ臭そうに笑う。
昨日はアノめんどくさい出来事(ルミ野郎に振り回されたアレな)を終えて町に戻ると、待ってくれていたミントの家で飯をご馳走になり、一緒のベットで寝た。(目が覚めると琥珀と稲荷が腹の上で寝ていて、身動き取れなくて金縛りにあったのかと焦ったのは秘密)
ミントは病気の母親、それに頼る父親もいない事から、自分がしっかりしなきゃいけないと思って、ずっと生きてきたんだろうな。誰にも甘える事なく。
そんなミントが俺に甘えてくれるのは本当に嬉しい。
だから街を離れるのは、正直俺だって寂しい。
でも俺は幻獣族という稲荷の謎を解明しないと行けない。
召喚獣のタイタンがミントの新たな支えになってくれるといいんだがな。
「分かった。僕……乱道様が帰ってくれた時に、ビックリさせるね! 楽しみにしててね」
ミントがそう言って小さな手で、誇らしげに自分の胸を叩いた。
「それは楽しみにしてるぜ?」
「乱道様~!」
キャロが勢いよく走ってきた。
「はっはぁ……。出発の準備ができました。いつでもヴィルヘルミナ帝国に向けて街をでれますよ」
「おっそうか。ありがとうキャロ!」
「もちろん、街での出国に関するいろいろな手続きも完了しています!」
キャロが誉めてと言わんばかりの顔をする。
頭を俺に突き出して。これは撫でてと言うアピールか?
「感謝してるぜ」
そう言ってキャロの頭をワシャワシャと撫でた。
「ひゃわっ!?」
おっと……つい耳まで触ってしまった。
★★★
「乱道様! 僕待ってるからね!」
タイタンに乗ったミントが大きく手を振る。
「「「「「大召喚士様ありがとうございました」」」」」
下民扱いされていた街の人たちが頭を下げ、俺を送り出してくれる。
もう下民紋が消え失せたから、下民なんて括りはないんだがな。
みんなに見送られながら国境の門をくぐり馬車で通り抜けた。
この街はこの世界に来て初めて楽しいと思えた、いい思い出ばかりの街だから……なんだろう。街が小さくなっていくにつれなんとも言えない寂しい気持ちが。
『らんどーちゃま? どうしたんでち? 寂しいでちか? 仕方ないでちねぇ。ワレがよちよちしてあげるでち』
琥珀が俺の頭をポンポンと撫でる。ふわふわ肉球のなんとも言えない感触が。
気持ちは嬉しいんだが、琥珀のドヤり顔がいただけない。『どうでち~? ワレは優しいでち。誉めてもいいんでちよ?』 って言わんばかりの顔をして俺をみる。
鼻の穴膨らんでるぞ?
「うゆっ!」
「んん?」
稲荷までが俺の膝の上に立ち、頬を撫でてきた。琥珀の真似をしているんだろうが……琥珀と違って一生懸命で可愛い。
そうか。俺は稲荷までが心配するような顔をしていたんだな。
……反省。
「乱道様はみんなから好かれていますね」
そんな俺たちの様子をキャロが微笑ましく見ている、なんだか少し恥ずかしい。
そんな目で見ないでくれ。
「ヴィルヘルミナ帝国か。どんな国なんだろうな」
俺がそう呟くと。
「ふふふ。我が国は楽しいですよ? 乱道様を招待できる事、今からワクワクしています」
キャロが楽しそうに話す。そうか一応王女様だもんな。
ヴィルヘルミナ帝国の国境まで三日か。
馬車酔いしないといいな。
97
お気に入りに追加
1,374
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?
青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。
魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。
※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる