上 下
31 / 77
エスメラルダ帝国

魔獣討伐 ③

しおりを挟む
「えっ!?」

 テンペストと唱えると
 嵐の様な突風が吹き荒れ、俺の真上に黒い真空の大きな渦が出来上がっていく。
 
 爆風のせいで立っているのがやっとなほどだ。
 ちょっと待てくれ、これヤバくないか。

 渦は轟々と風を集め、凄いスピードで大きな竜巻を形成していく。

「うわぁぁぁ! 何だあれ?!」
「ヤバいぞ! 逃げろ!」
 
 俺の頭上に広がる竜巻に気づいた冒険者達が、竜巻から逃れようと突風の中、散り散りに逃げる。
 離れた場所まで走っていくと、木々にしがみ付き身を隠している。

 気がつくと。
 その場には俺vs緑色の魔物達の絵図らが出来上がった。

 ギルマスや屈強な冒険者達は、竜巻を恐れ木々の隙間から、静かに俺と魔物の様子を見つめている。

 その間も竜巻は大きくなる一方。

 この竜巻どうしたら良いんだ? これ以上デカくなったらやばくないか?
 今でも恐ろしい大きさだが。

 もう上を見て、デカさの確認をするのが怖い。これ以上大きくなる前に、どうにかしたい。

 緑色した奴らに、飛んでけーっとか言ったほうがいいのか?

 なんてそう思った次の瞬間。

 頭上で渦巻いていた竜巻が、魔物に向かって一目散に飛んで行った。

 ドゴオオオオオオオオンッ!!

 耳をつんざくような轟音の後。
 目の前は爆風のせいで土煙が立ち上がり、何も見えなくなった。

「ゴホッ。稲荷大丈夫か? 吸い込むなよ」
「うゆぅ」
 俺は土煙を吸い込まないように、稲荷をジャケットで包むと、土煙を避ける様に座り込んだ。

 数分もすると、視界がクリアになってきたのか、再び騒がしくなってきた。

「あっあわっ……」
「……何だこれっ?」
「嘘だろ?」

 土煙はおさまったのか?

 俺は立ち上がって前を見る。
 

「…………マジかよ?」


 目の前の景色は、全く別の景色に変わっていた。

 緑色の魔物どころか、生い茂っていた木々も消え去り、ただっ広い平地がどこまでも広がっていた。




★★★



 呆然と立ちつくしていると。


「おいっ! お前は一体何をやったんだ!」
「え?」

 ギルマスが震える足を引き摺り、どうにかこうにか、俺の所にまで歩いてきた。

「何って? 風魔法だが?」
「魔法だって!? あんな厄災級がか!? 召喚獣を使っても、あんな事できないぞ!?」
「んな事言われたって……出来ちまったんだし」

「…………はぁ。信じられねぇ」っとブツブツ言いながら、ギルマスはぶっきらぼうに頭を掻いた。

「だから言っただろ? 俺は魔力なしじゃねーって」
「………計測出来ないほどの魔力。それが本当だなんて……信じられん」

 そう呟くと、その場にへたり込んだ。

 ん? よく見るとギルマスのパンツ……股間のところが濡れてねーか?
 もしかして気付いてねーのか?

「ククッ。ってかギルマスは、あの竜巻がかなり怖かったんすね?」

 俺がそう言うと、ギルマスは眉をピクリと動かし、顔を逸らす。

「………そんな事は……ない」
「そうっすか? お股が怖さを物語っているようだけど?」
「へ? 股? うわっ!?」

 やっと気付いたのか、慌てて恥ずかしそうに股間を隠す。

「こっ……これはだな!? 持っていた水を溢したんだ!」
「へぇ……ソウデスカ。クク」
「わっ笑うな! 水だと言ってるだろ! おいっ!」

 頭から湯気が出てるんじゃねーか? と思うほどに、真っ赤な顔で怒っている。
 全く怖くないけどな。

 流石にいたたまれなかったのか、冒険者たちに報告して来ると、逃げる様にその場を去った。

「あははっ。いい歳こいてお漏らしとか……プププ」

 アイツには嫌な思いさせられたからな。ちょっとスッキリしたわ。

 ん? 

 俺の左腕が光ってる?
 腕というか……サタンのタトゥーが光ってるのか?

「うわっ!?」

 いきなり目の前に、ステータス画面が現れた。

名前 乱道

レベル 31 up↑
種族 人族
力  C/SS up↑
体力 E/SS
魔力 SSS/SSS

スキル 召喚 D/SSS  up↑
                鑑定 E/SS   
                アイテムボックス E/SS



 《レベルアップしたので新たにサタンを召喚できます。さぁ名前をつけて召喚してください》

 え……レベルアップ?

 緑色の奴らを討伐したからか?

 左腕に描かれたサタンが、早く名付けろとでも言っているかのように光り輝く。

 …………名前ってコイツに?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...