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エスメラルダ帝国
九尾の狐の名前
しおりを挟む幼子はどうやら琥珀と気が合うのか、琥珀が幼子を肩車し仲良く俺の前を歩く。
何をやってるんだか。
二匹は何を話してるのか、楽しそうにキャッキャと笑い合っている。
そんな二匹を見ていたら、琥珀が振り返り『らんどーちゃま、この九尾の名前はなんでち?』っと言って来た。
「え? 名前?」
そうか……そういやコイツ名前がなかったんだ。これから一緒にいるんだ名前は必要だよな。
「名前かぁ……?」
何が良いかな? 九尾の狐……狐って言えばおいなりさん……いなり! おおっ! 稲荷良いな。
「琥珀決めたぜ! そいつの名前は稲荷だ!」
『イナリでちか……ふむ。琥珀の次にカッコ良いでちね』
俺は琥珀に肩車された幼子の頭を撫でながら、青銀色した綺麗な瞳をじっと見つめる。
「お前の名前は稲荷だ。いいな?」
「いにゃい……?」
俺は口を大きく開けてわかりやすく発音する。
「い・な・り!」
「いにゃり」
「い・な・り!」
「いにゃり」
何回教えても「な」が言えない稲荷。
「あははっまぁいいか。これからよろしくな稲荷!」
「うゆ!」
稲荷がにちゃあっと笑い、頭を大きく上下にふる。
『イナリよろしくでち! ワレは琥珀様でち!」
「ワエ! ワエ! キャフフ」
稲荷はワエ! ワエっと言いながら楽しそうに笑う。
『ちっ違うでち! ワレは琥珀でち!』
琥珀が必死に自己紹介するも稲荷は「ワエ!」「らんちゃ!」っと名前を呼びながら俺達を見た。
「おおっちゃんと分かってるっぽいぞ!」
『分かってないでちよ! はぁ…… ワレにはかっこいい琥珀という名前があるんでちよ?』
「はははっまぁ良いじゃねーか。そのうち言えるようになるって!」
口を尖らせプンスカ怒っているので、俺は琥珀の頭を撫でてやる。
『ぐぬぬ……折角らんどーちゃまが付けてくれた特別な名前でちのに……』
ああそう言う事か、俺が付けた名前だからちゃんと言って欲しかったのか。
可愛い奴め!
「琥珀~っ!」
『わっぷ!? そんな強く抱きしめたらクルチイでちっ』
思わず琥珀をきつく抱きしめすぎたみたいだ。
あまりに可愛いこと言うからな? ついだ。
★★★
俺たちは稲荷と出会った森を抜けて、街道をひたすら歩いて行く。
拝借した地図をみる限り、この街道をまっすぐ歩いていくと、街があるみたいなんだよな。早く街に行って旅の準備を色々と揃えたいからな!
半日ほど歩いて行くと。
「お!? あれが城下町の入り口か?」
大きなアーチ型の門に「城下町イスカンダル」って書いてるのが見える。不思議な文字なのに読めるんだよなぁ。いまだに慣れねえ。
あれ? みんな街に入る時に何かを見せている。もしや入り口で検問してるのか?
俺は琥珀を見る。
『なんでち?』
二足歩行で歩く謎の生物。
流石に怪しすぎんだろ!
「琥珀? ちょっとタトゥーに戻ってくれねーか? そのっ疲れただろ?」
お前が怪しいから戻ってくれとは、流石に言えない。
『ええ? ワレは疲れてないでちよ! まだまだ余裕でち』
琥珀が余裕でちと、いつもの様に踏ん反り返る。まぁそうだわな……困ったな。
「それがな? お前みたいなカッコイイ召喚獣を連れてたら目立って仕方ないんだよ! こんな事は言いたくなかったんだけどな? こればっかりは仕方ねーよな。お前ってばカッコ良くって、目立ちすぎるんだからな……」
俺は少し大袈裟に、琥珀の大好物であるカッコいいをアピールする。
案の定琥珀は、鼻の穴を膨らませ。フンスっと言うと。
「それはぁ……仕方ないでちよね? ワレはカッコ良すぎでちから……』
「アアソウダヨナ……」
『仕方ないでちね?』
琥珀は目を細めドヤりながらタトゥーに戻っていった。
「はぁーっどうにかなった」
大きく溜息を吐いた時、稲荷と目が合った。
「うゆ?」
そうだった、コイツはどうする? とりあえず獣人族ってやつに見えるのか?
ただ城下町に獣人族が居なかったら目立つよな……。
マントで耳と尻尾を分からないように隠して、俺が抱いてたら人族の幼子に見えるだろ。
「稲荷おいで」
「う?」
俺は稲荷を抱き、少し緊張しながら門へと歩いて行った。頼むから何も起こりませんように、と願いながら。
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