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父の凄さと仲のいい二人
しおりを挟む「なっ、何を根拠にそんな事をおっしゃるのです? イングリットバークマン公爵」
アルビダの父の言葉を聞き、顔を歪ませながら反論するも、淡々と言葉を続けていく。
「証拠があると言ったのには、意味があるんですよ」
「……意味?」
意味深なアルビダの父の言葉に、顎に手を置き考え込むリアム。
「私はね、この国いちの鑑定能力を持った男なんですよ。それが何を意味するのかわかりますか?」
「え? この国いち!?」
「そうです。ですから私は国の宰相という仕事も任せられているのです。鑑定で全て嘘を見抜きますからね。この魔具についても、誰から購入して誰がこの魔具を一番初めに使ったか……までね。ここまでいうともうお分かりかと?」
言葉を聞き終えたリアムはハイライトが消えた目をし、ペタリとその場に座り込んだ。
「アルビダ、よく頑張った。その魔具を貸しなさい」
父はアルビダから魔具を受け取ると、懐にしまった。
「このことは全て国王様に報告させて頂きます」
そう言って部屋を出ると、すぐに衛兵を連れ戻ってきた。
気力をなくし座り込んでいるリアムを衛兵が担ぎ父と一緒に部屋を出て行った。
「アルビダもう少しここで待っていてくれ」
そうアルビダに言い残し。
★★★
部屋に残った三人は心を落ち着かせるために、お茶を飲んでいた。
「今日一日で何年分もの時間を濃縮したような濃い時間だったような……すごく変な感じだよ」
「ははっ、確かにサミュの言う通りだね。一日が濃い」
「わたくしは何だか……ドキドキしっぱなしでした」
アルビダがそう言うと、二人がアルビダの方を見つめる。
「アルビダ嬢本当にありがとう! 君がいなければ僕はきっと死んでいた」
「アルビダ嬢本当にありがとう! 君がいなければ僕は大切な半身を殺していた」
さすが双子息ぴったりで途中まで同じ事を話す。
二人は途中から自分たちが真逆のことを言ってることに気付き、目を見合わせクスリと笑う。
そんな二人の姿を見て、アルビダも何だか嬉しくなりつられて笑う。
「こうやって、今笑っていられるのも全てアルビダ嬢のおかげだ。本当にありがとうまさか発作が呪いだなんて分からなかったからね。分かってすぐに王城に会いにきてくれてありがとう」
サミュエルの話を聞きデービットの眉がぴくりと動く。
「えっ、今日偶然会ったんじゃなかったのかな? 二人は前に会ったことがあるの? いつ?」
少し動揺しているデービットにサミュエルは得意げに言葉を返す。
「この前にあった王城のパーティーでね。僕の秘密のガーデンで話していたのさ。ね、アルビダ嬢」
「えっ、そうなの?」
息のあった二人は再び同じ動きをしてアルビダ嬢を見つめる。
アルビダは同じような二つの瞳に注目され少し緊張するも返事を返した。
「えっと、そうなんです。その時サミュエル様は発作の症状で、その時に鑑定で調べてこの呪いが分かったのです」
「アルビダ嬢、それ言って良かったの? 二人の秘密じゃ……」
サミュエルは、それは僕たちだけの秘密だったのでは? とちょっと口を尖らせすねている。
「あっ……つい」
「へぇ~……二人だけの秘密ねえ、それは当事者でもある僕にも詳しく聞かせて欲しいなぁ」
デービットは、ジト目で二人を見つめる。
アルビダはサミュエルとの出来事を、身振り手振りの動きをつけながら、説明した。
その話を聞いたデービットは混乱し動揺が隠せない。
「ええっと。アルビダ嬢……水魔法で神水が出るなんて話、私は聞いたことも見たこともない……ちょっと待ってくれ理解がおいつかない」
「デビィ、君も飲んで分かっただろ? あの苦しさから解放され体が幸せて満たされていく感じ」
両手で頭を覆い混乱しているデービットに、追い打ちをかけるようにさらにサミュエルが話す。
「それは……本当にその通りで、私はあんなにも苦しい思いを君にさせていたんだと思うと、今も胸が締め付けられるよ」
「もうそれは良いんだよ! 終わりよければ全てよしさ」
サミュエルは隣に座っているデービットの背中をバンバンと叩く。
「ったく。君は昔から能天気で、そんなサミュにどれだけ僕は救われたか。呪いをかけられたのが僕だったらきっと君みたいに前向きに生きられなかったよ」
デービットがサミュエルの頭をクシャクシャと撫でた。
———本当に仲がいいんですね。そんな二人だからこそ、お互いのこと信頼しを疑わなかったんですよね。素敵な関係ですわ。
アルビダはそんな二人の姿を微笑ましく見ていた。
★★★
「今日は何だかすごい一日でしたわ」
『大活躍だったねアビィ』
ロビンがアルビダの頭を撫でる。
一連のやらなければならない事をやり終えた父が迎えにきたので、アルビダはやっと自分の部屋に帰ってきた。
そこでベットに横になりながらロビンと今日あった出来事を話している。
『どうする? 疲れているだろうし、今日の配信はやめとく?』
ロビンがアルビダの頭を優しくポニポニと撫でながら質問する。
「大丈夫です! だって妖精さんたちから頂いた特別な水魔法だったから、解呪できたんですし……ちゃんと報告したいです」
『そっか、アビィは本当に良い子良い子、じゃあ配信始めようか』
ロビンはむくりと起き上がると、ベッドからぴょんっと飛び降りた。
アルビダもその後に続いてベッドから降りる。
『じゃあ配信はっじめっるよー♪』
ロビンが首からぶら下げた時計に触れいつもの配信画面が登場した。
〝アビィたん! お疲れ様スパチャ〟
〝呪いの王子様はどうやったスパチャ〟
〝呪いの解呪はできたかいスパチャ〟
〝今日も可愛いねスパチャ〟
いつものように恒例のスパチャ合戦が始まるのだが、今日はいつもと少し違った。
妖精たちがはアルビダが解呪しに行っている事を知っているので、結果がどうだったのか心配で気になって仕方がない模様。
初っ端から、サミュエルの質問で溢れかえる。
「もちろん! 妖精さんたちから頂いた、水魔法を使って神水を出し、ちゃんと解呪できました。ありがとうございます」
そう言って画面に頭を下げた。
さらにアルビダは、双子のデービットに呪い返しになったことや、その黒幕は第一王子のリアムだったと告げると、妖精たちが騒然とし出した。
〝ちょっ、まっ、それって本来なら、アビィたんが黒幕にされちゃうんだよね〟
〝未来の断罪回避してる! やったじゃん〟
〝本来なら、リアム王子じゃなくてアルビダ様が何故かサミュエルを呪った人物にされているんだ〟
〝私たちが知っている未来はそうよね〟
〝ちょっと待って、サミュエル王子の呪いが解呪できた時も、デービット王子に呪い返しのイベントなんてなかったぞ〟
〝これは……未来をどんどん変わっている! アビィたんの断罪も全て回避できるかもしれない〟
「えっ……わたくしが黒幕だった!? そんな未来は嫌です」
アルビダは羅列されていく文字を必死に読み、自分が黒幕になっていたことに驚きを隠せない。
〝待って待って! アビィたんそんな顔しないで! 回避できたんだから。もう大丈夫〟
〝黒幕だった未来は消滅したんだ!〟
〝今日いっぱい頑張ったからだね〟
〝良かったねフラグ回収したよ〟
〝これからもいっぱい応援しもうす〟
妖精たちの優しい言葉に、アルビダの表情が緩む。
「……えへへ。ありがとうございます。妖精さん大好きですわ」
妖精たちに今日一番の笑顔で笑いお礼を言った。
アルビダに笑顔で大好きと言われた妖精たちの興奮は大騒ぎ。
この日のスパチャが過去最高を叩き出したのは言うまでもない。
★★★
アルビダ「読者さん、今日はとても色んなことがありましたが、サミュエル様とデービット様を救えました」
ロビン『今日はいっぱい頑張ったもんね』
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