悪役令嬢アルビダ様を幼少期に改心させたらメッチャ良い子になりました。

大福金

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植物スキル

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 アルビダとロビンは次の日早速、薔薇の苗がたくさん植えられている温室に来ていた。本当はスキルを貰ってすぐに試したかったようだが、流石に時間も遅いので、朝早く起きて温室に行くことをロビンと決めた。

 なぜ温室なのかと言うと、庭園のバラは全て庭師が管理しており、スキルを使って薔薇の花に急激な変化があると後々まずいと思い、薔薇の苗を育てている温室で苗を一つもらって、庭の片隅にてスキルを試すと言うことになったのだ。

「じゃあ……まだ蕾もついていないこの苗にしますわ」
『オッケー、じゃあその苗を持って、人目につかない場所に行こう』
「はい」

 アルビダとロビンは邸から一番離れた庭まで歩いてきた。

『流石にここまで来たら誰も来ないだろうね。ここで試そうか』
「はい。少し緊張してきました」
『さっ、薔薇の苗を置いて【植物スキル】と念じてみて』

 ロビンに言われ、アルビダは苗を少し手前に置き、両手を胸の前でギュッと握り締め目を閉じ、心の中で植物スキルと強く念じた。

 ……すると!?

「こっ、これは!?」

 まだ十五センチほどしかなかった小さな苗が、アルビダの身長を超えるほどまで急成長し、大輪の薔薇を咲かせていた。

『ふふふ。これが植物スキルの正体さ!』

 どんなスキルなのか教えてくれなかったロビンが、得意げに話し出した。

『このスキルはね、植物を急成長させたり、枯れた植物を復活させたり、花や果実から蜜を採取できたりと、色々と万能に使えるんだよ』

 ロビンからスキルの内容を教えてもらったアルビダは瞳を輝かせた。

「枯れた植物まで復活出来るなんて……すごいですわ!」
『だよね! 枯れた領民の畑で使ってあげたら泣いて喜ばれるかもね』
「皆様のお役に立てるなら! いくらでこのスキル使いますわ」

 ———それにわたくし、花の蜜がとても気になりますわ。それは蜂蜜とはまた別なのでしょうか?

「ちなみに花の蜜というのは?」

 アルビダは少し恥ずかしそうにしながら、ロビンに質問する。どうやらそんな事を言って、食い意地がはっている思われるのが嫌なのだろう。

『花の蜜が気になるの? それなら試してみる?』

 ロビンに試すと言われ一瞬キョトンとするが、花の蜜が手に入るかも? っと、はっと気付きアルビダは元気よく「はい!」と返事を返した。

『じゃあ……自分の手を、あそこの大きく咲いている薔薇の前に出して、植物スキルを使いながら、花の蜜が欲しいと強く思って?』
「手をですか?」
『だって花の蜜を入れる瓶とか何も持ってないでしょ? だから手に蜜をためるの』
「あっ、わたくしの手に蜜を……わかりました」

 ———薔薇の花さん、あなたの蜜をくださいませ。

 アルビダが蜜が欲しいと強く願うと……?

 「わっ!」

 花の中心から蜜が手のひらにポトポトと落ちてくる。

「ロビン! 蜜が手に!」

 アルビダは興奮して思わず大きな声を上げる。
 両手のひらいっぱいに蜜がたまると、薔薇の花は花びらを散らしてポトリと落ちていった。
 それを見たアルビダは少し泣きそうな目になる。そんな姿を見たロビンが『大丈夫だよ、植物スキルを使えば元気になるから』とい言いながらアルビダの肩までよじ登り、アルビダの手のひらに溜まっている蜜に手を伸ばしチョンっとつけた。

 そしてその手を口まで持っていきパクリと味わう。

『んん! 甘くて美味しいよ。アビィも食べてみて』

「まぁ! ロビンったら」

 ロビンに勧められアルビダも自分の口に手を近づけぺろっと舐めてみた。

「んんっ♡ 甘いです」

 濃厚な甘味と薔薇の香りが口いっぱいに広がりアルビダの顔が綻ぶ。

 気がつくと、ロビンと二人で蜜を全て食べてしまっていた。

『美味しかったねアビィ』
「はい。これはお父様たちにも食べて頂きたいです。あと……手がベトベトになりましたので、綺麗に洗いたいですわ」
『そうだね。僕のせっかくのふわふわボディのお手手もベトベトだしね。手を洗ってこよう』

 手を洗ってきた後、今度は瓶に薔薇の蜜を入れていく。
 瓶の中で蜜は、よく見る飴色ではなく真紅色に輝いていた。
 瓶が透明なので蜜の赤がよくわかる。

 それを使って、ケーキを料理長に作ってもらった物を父にプレゼントした。
 その時の父の歓喜は凄まじかった。『アビィたんが私のために蜜を取ってきてくれた。それでケーキまで……食べてしまうのが勿体無い!』
 父はアルビダが頑張って蜜を採取したと思っていたから。

 まさか……新たなスキルを使って、蜜を採取したなどとは、この時考えもしていなかったのだから。

 それに気づいたのは、料理長が『アルビダ様から、美しい蜜をいただいて……こんなにも薔薇を濃縮したような蜜は初めてみました』と蜜が入った瓶を見せられた時だった。

 そこには真紅色に煌めく蜜が入っていた。

 この時の父の慌てっぷりは半端なかった。

 蜜を見て父が驚愕しているなどと思ってもいないアルビダは、この蜜をジェイデンやリリィにもあげたいなと、考えていたのだった。

 ———リリィ様やジェイデン様も喜んでくれると嬉しいですわ。



★★★


アルビダ「読者ようせい様、いつも応援ありがとうございます! 今日は美味しい薔薇の蜜を作りましたの! すごく楽しかったですわ。この蜜を妖精さんにもお届けできたらいいのですが……できないのが悲しいですわ」
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