死になおり ― 脳出血とICUの少女 ―

TEKKON

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第六話 少女

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 俺はウトウトとした頭のまま、声のした方向にゆっくり顔を向ける。

……まいった。

 そこにワンピース姿の少女が立っていた。
 見た感じ高校生ぐらいだろうか。

「お兄さん、私見えてる?」

 なんてこった。最悪すぎる。
 今までは見える、聞こえる“気がする”だったのに、遂に本物の幻覚、幻聴が始まってしまったらしい。

「やった!お兄さん、お兄さん!」

 なんか凄く喜んでる。
 まるで数年ぶりの恋人と再会してるみたいだ。

 さて、俺は目の前の非常事態に対してどうしたら良いのだろうか。
 かわいい少女が俺の前にやってくる!というこの都合の良い幻を楽しめば良いのか?

……駄目だろ。悪化してしまう。

 俺は今度こそちゃんと眠る事にした。

「…えっ?嘘でしょ!?」
 
 幻覚が戸惑っている。

「ねー。私に気づいてるのわかってるんだよ!?」

 幻覚が焦っている。

「ねーこっち向いてよー! 私に気づいてくれた人は、お兄さんが初めてなんだからさー!」

 そりゃそうだろうな。
 お前は俺が生み出した幻なんだから……

「あ、本当に寝ちゃうんだ…… いいもん。私明日もここにいるからね。その時は私とおしゃべりしてねー!」

 最後まで…… 騒がしい…… 奴だ…………

 眠気が凄い。意識が落ちる。
 俺はそのまま眠りにつくだろう。
 そしておそらく俺は笑っているのだろう。


 こんな気分で眠るのは久しぶりだから。

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