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第17話 太一さん。それ本気で言ってる?
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――次の日の夜。
「どうしたんだろう?」
「あんなねいね初めて見た」
今日のエンジェル・ハイロゥは明らかに雰囲気がおかしかった。
ロボバトがキッカケて大盛況になった店は、当然ねいね目当てで来るお客様も多い。そのねいねの様子が変だと、店全体に影響が出るのは当然の事だろう。
「はぁっ……」
知奈は事ある毎にため息をつき、
「あ、すみません……」
注文間違いも発生している。どう見ても”心ここにあらず”な状態だ。
…………
いつもは深夜配信がメインなのに、どうして最後の配信が夜8時からなの?
そもそも決勝戦が夜8時に時間変更になるのがいけないわ。いつも通り昼にやりなさいよ!
私はほづみ君の為にロボに乗って戦ってきた。頑張って練習も欠かさずやってきた。
それなのに、こんな事になってしまうなんて。もうロボに乗る理由なんて無いじゃない!
…………
知奈の頭の中では上の言葉が延々と繰り返されている。
「ねいねちゃん。ちょっと休もう?」
「ううん。 身体を動かした方が気が紛れるから……」
(ダメだ。 ねいねちゃん完全にメンタルやられちゃってる)
初めてみるねいねの消耗しきった姿に、みぅは動揺していた。
* * *
「うわぁ。 本当にダメになってる」
「これは困りましたねぇ」
話を聞いて様子を見に来た同好会メンバーも、それぞれ困った表情を見せている。
「どうした。元気出せねいね! たとえ生配信が見れなくともアーカイブがあるではないか! 決勝戦が終わった後にアーカイブを見たらいいじゃないか!」
「太一さん。それ本気で言ってる?」
鋭い目つきで渡辺会長を睨むねいね。
「うっ……!」
その迫力に流石の渡辺も気圧される。
「ルールではパイロット変更は許されているんですよね。今から他の人にチェンジするのは可能ですか?」
そのまま、知奈は渡辺と山本に詰め寄る。
「サイズ調整等の問題はありますが、一応可能ではあります。しかし、実際にそれが出来るかどうかは、あなたが一番わかるでしょう?」
「なら、パイロットが体調不良という事にして、不戦敗にでもすればいいわ! どうせあいつには勝てないんだから!」
「そんな事が簡単に出来る訳無いだろう! それに戦う前から勝てないというのは間違っているぞ!」
「私にとってもう勝ち負けなんて関係ないんです! 戦う理由はもう私には無いんですよ……」
自らの言葉で現実を改めて認識した知奈は、だんだん表情を曇らせてしまう。
「…………」
場の雰囲気がいよいよ怪しくなってきた時、店長はねいねをバックヤードに呼び出した。
「あちゃー。行ってくるね」
バックヤードに弱々しく歩いてゆく知奈を、他の皆は心配そうに見送った。
「これは、最悪の展開も考えないといけませんね」
「まったく。これからクライマックスというのに!」
「ねいねちゃん……」
…
……
………
知奈がバックヤードに来た時、店長は椅子に座り黙々と事務作業をしていた。怒られると思っている知奈は、無言で店長からの言葉を待っている。
「あー。ねいね。話は聞いている。ヘルプを呼んだからもう今日は帰っていいぞ。気分転換に美味しいモノでも食べてゆっくり休んでくれ」
そう言うと、店長は財布からお金を出すと、それをねいねに渡そうとした。
「え!? そんな。私は……」
「今までの頑張りとお店への貢献を考えたら、これくらい当然だ」
「でも……」
「それに、落ち込んだねいねをお客様に見せたくないしな。落ち着くまで休んでも構わないから、出勤する時は前もって言ってくれ」
店長は有無を言わせず、強引にお金をねいねの手に握らせる。
「あと、決勝戦をどうするかはねいねに任せるよ。どんな結論になっても俺からは何も言わないから。今まで最高のパフォーマンスをありがとう」
「あ、ありがとうございます……」
ここまでされたらもう何も言う事は出来ない。知奈はお言葉に甘える事にした。知奈は私服に着替えて淡々と帰り支度をする。
「みぅ、ごめん。後よろしくね」
「う、うん。ゆっくり休んでね!」
みぅは無理矢理笑顔を見せて帰るねいねを見送る。心に何かを秘めながら。
「ねいねちゃん。私は……」
「どうしたんだろう?」
「あんなねいね初めて見た」
今日のエンジェル・ハイロゥは明らかに雰囲気がおかしかった。
ロボバトがキッカケて大盛況になった店は、当然ねいね目当てで来るお客様も多い。そのねいねの様子が変だと、店全体に影響が出るのは当然の事だろう。
「はぁっ……」
知奈は事ある毎にため息をつき、
「あ、すみません……」
注文間違いも発生している。どう見ても”心ここにあらず”な状態だ。
…………
いつもは深夜配信がメインなのに、どうして最後の配信が夜8時からなの?
そもそも決勝戦が夜8時に時間変更になるのがいけないわ。いつも通り昼にやりなさいよ!
私はほづみ君の為にロボに乗って戦ってきた。頑張って練習も欠かさずやってきた。
それなのに、こんな事になってしまうなんて。もうロボに乗る理由なんて無いじゃない!
…………
知奈の頭の中では上の言葉が延々と繰り返されている。
「ねいねちゃん。ちょっと休もう?」
「ううん。 身体を動かした方が気が紛れるから……」
(ダメだ。 ねいねちゃん完全にメンタルやられちゃってる)
初めてみるねいねの消耗しきった姿に、みぅは動揺していた。
* * *
「うわぁ。 本当にダメになってる」
「これは困りましたねぇ」
話を聞いて様子を見に来た同好会メンバーも、それぞれ困った表情を見せている。
「どうした。元気出せねいね! たとえ生配信が見れなくともアーカイブがあるではないか! 決勝戦が終わった後にアーカイブを見たらいいじゃないか!」
「太一さん。それ本気で言ってる?」
鋭い目つきで渡辺会長を睨むねいね。
「うっ……!」
その迫力に流石の渡辺も気圧される。
「ルールではパイロット変更は許されているんですよね。今から他の人にチェンジするのは可能ですか?」
そのまま、知奈は渡辺と山本に詰め寄る。
「サイズ調整等の問題はありますが、一応可能ではあります。しかし、実際にそれが出来るかどうかは、あなたが一番わかるでしょう?」
「なら、パイロットが体調不良という事にして、不戦敗にでもすればいいわ! どうせあいつには勝てないんだから!」
「そんな事が簡単に出来る訳無いだろう! それに戦う前から勝てないというのは間違っているぞ!」
「私にとってもう勝ち負けなんて関係ないんです! 戦う理由はもう私には無いんですよ……」
自らの言葉で現実を改めて認識した知奈は、だんだん表情を曇らせてしまう。
「…………」
場の雰囲気がいよいよ怪しくなってきた時、店長はねいねをバックヤードに呼び出した。
「あちゃー。行ってくるね」
バックヤードに弱々しく歩いてゆく知奈を、他の皆は心配そうに見送った。
「これは、最悪の展開も考えないといけませんね」
「まったく。これからクライマックスというのに!」
「ねいねちゃん……」
…
……
………
知奈がバックヤードに来た時、店長は椅子に座り黙々と事務作業をしていた。怒られると思っている知奈は、無言で店長からの言葉を待っている。
「あー。ねいね。話は聞いている。ヘルプを呼んだからもう今日は帰っていいぞ。気分転換に美味しいモノでも食べてゆっくり休んでくれ」
そう言うと、店長は財布からお金を出すと、それをねいねに渡そうとした。
「え!? そんな。私は……」
「今までの頑張りとお店への貢献を考えたら、これくらい当然だ」
「でも……」
「それに、落ち込んだねいねをお客様に見せたくないしな。落ち着くまで休んでも構わないから、出勤する時は前もって言ってくれ」
店長は有無を言わせず、強引にお金をねいねの手に握らせる。
「あと、決勝戦をどうするかはねいねに任せるよ。どんな結論になっても俺からは何も言わないから。今まで最高のパフォーマンスをありがとう」
「あ、ありがとうございます……」
ここまでされたらもう何も言う事は出来ない。知奈はお言葉に甘える事にした。知奈は私服に着替えて淡々と帰り支度をする。
「みぅ、ごめん。後よろしくね」
「う、うん。ゆっくり休んでね!」
みぅは無理矢理笑顔を見せて帰るねいねを見送る。心に何かを秘めながら。
「ねいねちゃん。私は……」
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