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第11話 だから、必ず決勝戦までいらっしゃい
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『追放天使を倒すのはこの私よ!』
『フィフネルの本気を見せてあげる!』
記事には、伊集院まりぃの自信溢れる顔と勇ましい言葉が並んでいる。
それを見て唖然とする知奈と岸と大和田。一方、渡辺会長はとても楽しそうだ。
「我々に挑戦状を叩きつけるとは良い根性だ! 返り討ちにしてあげよう。はっはっは!」
「ちょっとまって。大会途中での参加って認められるの!?」
知奈の至極当然な疑問に山本は答える。
「元々パイロットの変更自体は認められていますが、まさか既存チームごと買収してくるのは予想外でした。まったく伊集院家は無茶をしますねぇ」
知奈は山本さんにだけは言われたくないですと言いかけたが、怖くなって言うのを止める。
「それでもロボの改造は禁止されている。よって天使対策は出来ない。つまり我々の勝ちだ!」
「しかし買収されたチームは、小規模ながら毎回上位に勝ち残る技術者集団です。少なくとも大徳寺工業とは比べ物になりません」
現に1回戦、2回戦も危なげなく勝ち抜けている。風格も感じさせる良いロボなのだ。
「それに伊集院まりぃは性格こそアレですが何でもこなせる天才です。何か秘策があるかもしれません」
「ふむぅ」
「なので、油断しない方が良いでしょうね。 ……って、おや?」
山本がこちらに向かってくる”場違いな集団”に気づいて目を横にやった。
「何……? げっ!」
知奈は思わず逃げたくなった。
「ごきげんよう天使さん。あなたの戦い、とくと見せていただきましたわ!」
まりぃの後ろにいるメイド服集団は丁寧にカーテシーで挨拶をする。
(抜群の気品と可愛らしさを併せ持つフィフネルガールズ。噂には聞いてたけど、確かに他の店とは一線を画する人気店なだけはあるわ)
知奈は彼女達を見て感心していた。
(……ただ、場違いにも程があるわ!)
実際に周りのギャラリーは一体何事かと集まってきているが、明らかに距離を取っている。
「おやおや。敵情視察ご苦労さん。どうだったかな?我々の戦いぶりは!」
「ふぅん。会長さんその顔だと記事を読んだみたいですね。今日はご挨拶に参りましたわ」
メイド達はパンフレットを同好会メンバーにパンフレットを渡していく。
「ねいね様、どうぞ」
「ど、どうも……」
短期間で作ったとは思えない豪華なパンフレット。そしてその中身は……
「うわっ! マジかよ!?」
思わず声を出す岸と大和田。
流石に開いた口が塞がらない会長。
おやおやと苦笑いをする山本。
「ね、ねいねちゃん。これって……」
「う、うん。これは…… ヤバイね」
パンフレットにはチームフィフネルの挨拶。カラーリングを一新して全く違うロボになった”グリフォン”改め”パラスアテナ”のイメージCG。
そして、豪華且つ実践的な戦闘用ドレスを纏った、伊集院まりぃの全身巨大プロマイドがあった。
おまけにオリジナルソングページへのQRコード入り。勿論歌ってるのはまりぃ本人だ。
「…………」
2週間そこらでここまで準備が出来てるのは伊集院家の力だろう。
しかし、ここまで振り切ってるのはきっとまりぃが〇〇だからだろう。
「ふふふっ。あまりもの優雅さに圧倒されたようね。天使は女神に勝てる訳なくってよ!」
「これは参った! このクオリティは恐れ入った! 今すぐメルカリに出品してくるわ!」
渡辺会長はiPadのカメラで早速出品用の写真を撮りはじめる
「そうだ!いい事思いついた! ねいねもオリジナルソング作って売らないか?」
「店長!? いつの間に!」
「ねいねちゃんのオリジナルソング!? いいじゃない早く聴きたい!」
「みぅまで何言ってるのよー!」
……
「ちょ、ちょっと待ちなさいよあんた達! この私を無視するんじゃないわよ!」
イライラしているまりぃが口を挟んできたが、そこへ山本は拍手をしながらまりぃへ近づいた。
「いやー流石伊集院家のまりぃさんです。で、私達と戦うとなると決勝戦になりますが?」
「勿論知ってるわ。私にとって準決勝なんて準備体操よ。私は天使さんを倒す為だけにここに来たんだから!」
「ふぅん。わかりました。決勝戦でお会いしましょう」
楽しそうに笑いながら右手を差し出す内海。
「何であんたと握手しないといけないのよ! ……天使さん? あなたは私が決勝戦で倒して差し上げますわ」
まりぃは内海を無視して知奈に握手を求めてきた。
「えっ? えーっと……」
「いいじゃありませんか。握手しちゃいましょう」
「は、はぁ……」
たどたどしく手を出す知奈の手をしっかり掴んで「だから、必ず決勝戦までいらっしゃい」とまりぃは”ライバル”へ声をかける。
「い、言われなくとも勝ってみせますよ!」
「ふっ。ふふふっ!面白くなってきましたわ!」
恍惚な表情を見せる伊集院まりぃと、それに激しく戸惑っている知奈がいる。
おそらくまりぃはこのシチュエーションに気持ちが昂っているのだろう。
しかし、隣でそれを見ている山本は笑っていない。そして誰に聞かせる訳でもなく呟く。
「まりぃさん。今この時があなたの一番幸せな時間なのかもしれません。あなたは次の試合負けます」
「あなたは準決勝の相手について調べなかったのですか? 勿体ぶらずに次の試合で私達と戦うべきでしたよ」
その呟きは現実のものとなってしまうのか。それとも山本の杞憂に終わるのか。
――それは2週間後に明らかになる。
『フィフネルの本気を見せてあげる!』
記事には、伊集院まりぃの自信溢れる顔と勇ましい言葉が並んでいる。
それを見て唖然とする知奈と岸と大和田。一方、渡辺会長はとても楽しそうだ。
「我々に挑戦状を叩きつけるとは良い根性だ! 返り討ちにしてあげよう。はっはっは!」
「ちょっとまって。大会途中での参加って認められるの!?」
知奈の至極当然な疑問に山本は答える。
「元々パイロットの変更自体は認められていますが、まさか既存チームごと買収してくるのは予想外でした。まったく伊集院家は無茶をしますねぇ」
知奈は山本さんにだけは言われたくないですと言いかけたが、怖くなって言うのを止める。
「それでもロボの改造は禁止されている。よって天使対策は出来ない。つまり我々の勝ちだ!」
「しかし買収されたチームは、小規模ながら毎回上位に勝ち残る技術者集団です。少なくとも大徳寺工業とは比べ物になりません」
現に1回戦、2回戦も危なげなく勝ち抜けている。風格も感じさせる良いロボなのだ。
「それに伊集院まりぃは性格こそアレですが何でもこなせる天才です。何か秘策があるかもしれません」
「ふむぅ」
「なので、油断しない方が良いでしょうね。 ……って、おや?」
山本がこちらに向かってくる”場違いな集団”に気づいて目を横にやった。
「何……? げっ!」
知奈は思わず逃げたくなった。
「ごきげんよう天使さん。あなたの戦い、とくと見せていただきましたわ!」
まりぃの後ろにいるメイド服集団は丁寧にカーテシーで挨拶をする。
(抜群の気品と可愛らしさを併せ持つフィフネルガールズ。噂には聞いてたけど、確かに他の店とは一線を画する人気店なだけはあるわ)
知奈は彼女達を見て感心していた。
(……ただ、場違いにも程があるわ!)
実際に周りのギャラリーは一体何事かと集まってきているが、明らかに距離を取っている。
「おやおや。敵情視察ご苦労さん。どうだったかな?我々の戦いぶりは!」
「ふぅん。会長さんその顔だと記事を読んだみたいですね。今日はご挨拶に参りましたわ」
メイド達はパンフレットを同好会メンバーにパンフレットを渡していく。
「ねいね様、どうぞ」
「ど、どうも……」
短期間で作ったとは思えない豪華なパンフレット。そしてその中身は……
「うわっ! マジかよ!?」
思わず声を出す岸と大和田。
流石に開いた口が塞がらない会長。
おやおやと苦笑いをする山本。
「ね、ねいねちゃん。これって……」
「う、うん。これは…… ヤバイね」
パンフレットにはチームフィフネルの挨拶。カラーリングを一新して全く違うロボになった”グリフォン”改め”パラスアテナ”のイメージCG。
そして、豪華且つ実践的な戦闘用ドレスを纏った、伊集院まりぃの全身巨大プロマイドがあった。
おまけにオリジナルソングページへのQRコード入り。勿論歌ってるのはまりぃ本人だ。
「…………」
2週間そこらでここまで準備が出来てるのは伊集院家の力だろう。
しかし、ここまで振り切ってるのはきっとまりぃが〇〇だからだろう。
「ふふふっ。あまりもの優雅さに圧倒されたようね。天使は女神に勝てる訳なくってよ!」
「これは参った! このクオリティは恐れ入った! 今すぐメルカリに出品してくるわ!」
渡辺会長はiPadのカメラで早速出品用の写真を撮りはじめる
「そうだ!いい事思いついた! ねいねもオリジナルソング作って売らないか?」
「店長!? いつの間に!」
「ねいねちゃんのオリジナルソング!? いいじゃない早く聴きたい!」
「みぅまで何言ってるのよー!」
……
「ちょ、ちょっと待ちなさいよあんた達! この私を無視するんじゃないわよ!」
イライラしているまりぃが口を挟んできたが、そこへ山本は拍手をしながらまりぃへ近づいた。
「いやー流石伊集院家のまりぃさんです。で、私達と戦うとなると決勝戦になりますが?」
「勿論知ってるわ。私にとって準決勝なんて準備体操よ。私は天使さんを倒す為だけにここに来たんだから!」
「ふぅん。わかりました。決勝戦でお会いしましょう」
楽しそうに笑いながら右手を差し出す内海。
「何であんたと握手しないといけないのよ! ……天使さん? あなたは私が決勝戦で倒して差し上げますわ」
まりぃは内海を無視して知奈に握手を求めてきた。
「えっ? えーっと……」
「いいじゃありませんか。握手しちゃいましょう」
「は、はぁ……」
たどたどしく手を出す知奈の手をしっかり掴んで「だから、必ず決勝戦までいらっしゃい」とまりぃは”ライバル”へ声をかける。
「い、言われなくとも勝ってみせますよ!」
「ふっ。ふふふっ!面白くなってきましたわ!」
恍惚な表情を見せる伊集院まりぃと、それに激しく戸惑っている知奈がいる。
おそらくまりぃはこのシチュエーションに気持ちが昂っているのだろう。
しかし、隣でそれを見ている山本は笑っていない。そして誰に聞かせる訳でもなく呟く。
「まりぃさん。今この時があなたの一番幸せな時間なのかもしれません。あなたは次の試合負けます」
「あなたは準決勝の相手について調べなかったのですか? 勿体ぶらずに次の試合で私達と戦うべきでしたよ」
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