私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います！

TEKKON

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第7話　追放天使の力を見せてあげるわ！

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　ガガガガッ！
　ガキィィィン！
　……ゴンッ！

　重い金属音が幾度となく聞こえて来る。その都度歓声が沸き、スピーカーから聞こえる実況のテンションも上がっていく。

　（一回戦も順当に6試合まで進み、もうすぐ私達の出番がやってくる）

　知奈は”白い天使”と一つになり、コンセントレーションを高めていく。メカニックも各パーツの取り付け具合等を最終確認して、データロガーを凝視している。
　その光景を楽しげに見ている会長と山本。知奈も含めてみんな気分が高まってるように見える。

　そこに外に出ていた岸と大和田が帰ってきた。

「会長ー。例の奴撮ってきましたよ」
「やはりアレ半端じゃないですよ……！」

　岸が持ってきたiPadに群がる男4人。ここからは何も見えないけど、どうやら前試合の様子らしい。

「……うわぁ。見かけ倒しを願ってたけど、中身もガチ本物じゃないか。大人げない！」
「あのチート企業は遂に本気出してきましたね。抽選会で当たらなくて本当に良かったです」

　4人の会話を聞く限り、どうやら相当ヤバいロボがいるらしい。と知奈は理解した。

　（と、いうかそんな事よりも目の前の試合に集中してよ！）

　と言いたくもなるが、ロボット好きの集まりなんだ、仕方ないか。と知奈は思う事にした。

「ねいねちゃん。どう？」
　
　隣にきてくれたみぅの声が心地良い。

「そういえば、みぅは他の試合は見ないの？」
「だって、見たら怖くなっちゃいそうで……」

　みぅはとても弱気そうな顔を見せた。

　（そっか。みぅはモニター越しじゃなく直接見るの初めてなんだよね。元々こういう所には来ないみたいたし……）

「みぅ。もし怖くなったら私の試合も…」
「ううん！　ねいねちゃんの試合だけは死んでも見るから。後ろで見守るから！」

　そう言って知奈の目をじっと見つめるみぅ。
「……ありがとっ！」と知奈は笑顔で返した。
　
　その時、試合終了を告げるサイレンの音と大歓声が聞こえてきた。
　
　次の試合に備えてスタッフが同好会チームを所定の場所まで誘導する。
　会場からは前の戦いで動かされたり、破壊された障害物を元に戻している音が聞こえていたが、それも少しずつ聞こえなくなってきた。

「いよいよだ……！」

　渡辺会長の声で同好会メンバーが入場口に目を向ける。それと同時に照明とBGMが落とされて、全観客の視線が双方の入場口に注がれた。

『お待たせしました。それでは第7試合を開始します！　水道橋大学ロボットアニメ同好会と大徳寺工業の入場です！』

　その声に反応して眩しい光と華やかな音が会場を包み、戦う2機のロボが戦いの場に入ってきた。

「……あれ？いつもより人多くないですか？」

　知奈は拍手や声援がいつもより大きいと感じていた。

「まぁ、今回のダークホースだからな。うわはははは！」
「というよりも興味心でしょうねぇ。私達の情報は全然公開されていませんから」

　普通、開会式後にチームやロボの詳細情報が公式情報で伝えられる。だか、同好会だけは“何故か”シークレット扱いだった。
　また誰かさんが何かを企んだのだろうが、それが更に他チームの顰蹙を買ってしまうのだ。

　特に反対側にいる対戦相手、大徳寺工業は1番同好会チームを敵視していた。事ある毎に「俺達は当て馬か？ふざけるな！」と批難と文句を繰り返しているのだ。

　その大徳寺工業が持ち込んできたロボの名前は【激打丸3号】という。デカい2本の腕を振り回す”大徳寺デンプシーロール”を必殺技にしている。全長3.8m、重量4t の車輪付き3脚モデルだ。

　これは日米ロボットバトルに登場したクラタスと近い構成になっており、いわゆる基本形だと言われるタイプである。

　その激打丸率いる大徳寺チームは一足早く自陣に到着して、観客に対して大徳寺デンプシーロールを見せつけるパフォーマンスを始めていた。

「おーおーおー。早速技を見せるなんてバカなのかねぇ。そのリズムや弱点を晒してるだけじゃないか」
「で、ねいねさんはどこを狙えば良いかわかりますね？」
「さっき教えてくれた箇所でしょ？　多分大丈夫……　よっと！」

　そう言うと、知奈はロボを軽くジャンプさせてウォーミングアップを始めるが、その動きを見て観客は追放天使にくぎ付けとなった。

　それは動きがあまりにも人間的すぎるからだ。
　遠くから見たら人と勘違いする人すらいるだろう。それくらい柔軟性とバネのある常識離れしたロボなのだ。

　この動きを見せられると、先の硬化テクタイトと合わせて”未来から来たロボット”だと観客は思い知らされる。
　しかし、観客の大半はその追放天使の敗北を予想していた。

　この前のパフォーマンスで天使が硬いのは良くわかった。柔軟性も驚くくらい高い。しかしどうやって戦う？　どうやって勝つ？　そのビジョンが欠片も見てこない。

　激打丸の重量は4t。一方、追放天使はどんなに重く見積もっても1t未満。4倍以上の重量差は致命的だ。どうにもならない。つまり捕まって潰された時点で身動きが取れず、敗北判定を受けるのだ。

『それでは両チームの代表は握手をしてください！』

　ゆっくり中央に向かい握手する2人。その片方は今にも相手を殺しそうなくらい睨み続け、もう片方はにへらにへらと笑いながら軽い足取り戻ってくる。

　その穏やかではない光景を見て「私達、完全に悪役だねぇ」と笑う山本とは対照的に、岸と大和田は不安になっていた。
　一方、知奈は丹念に”身体”を動かし続け、みぅはその姿をじっと見つめていた。

「さてと。追放天使の力を見せてあげるわ」

『それでは、第7バトル……開始！』

　司会の声と共に開始のサイレンが会場に響き渡った。

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