私、推しVに認知してもらう為にロボに乗って戦います！

TEKKON

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第5話　どうして？私、ヒールになっちゃった……

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「さぁ、次は驚きのロボを持ち込んできた、水道橋大学ロボットアニメ同好会です！」

　会場から拍手が上がり、「よろしくお願いしまーす」とレポーターの女性タレントが笑顔で同好会チームの所にやってくる。
　不意に目が合った時、レポーターはニコッと笑って会釈するのを見て、知奈は「素敵な人だな」と感じていた。

「えっと。こちらのリーダーはどなた…」
「私です！よろしくお願いします」

　食い気味に答えを返す会長を見て、知奈は一抹の不安を感じた。

「まず、この個性的で素敵なロボの名前を教えてくださいっ！」

「エクスペルド・エンジェル。どうぞ”追放天使”と呼んで下さい！」
「なるほど。可愛らしい彼女が天使ちゃんなんですね～」

　（！？）

　ブンブンブンブン！　と必死に手を横に振る知奈の横で、「その通り！」と会長は大きく頷く。

「しかし、身体が露出したまま戦うのは、あまりにも危険だと思うのですが、これは……」

　おそらく会場にいる全員が一番思ってる事をレポーターが質問すると、会長はその話を遮り「心配ご無用！」と言い放った。

「えっ！？　でも……」

「では証拠をお見せしましょう。岸！　大和田！」
『はい！』

　名前を呼ばれた二人は、袋から解体作業に使われる大型ハンマーを取り出した。
　二人はそのままロボの両脇に立ち、知奈に向かって大きく振りかぶる。

　ま、まさか！？と会場は一気に騒然となった。

『せーのっ！』
「いやぁぁぁっ！」
　
　思わず叫ぶレポーターを尻目に、ハンマーが彼女の身体に叩きつけられる。

　しかし、当たる瞬間「ゴィィン！」と聞いた事の無い音と共に、解体ハンマーはあっさりと弾かれてしまった。
　更にロボ自体はピクリとも動いておらず、衝撃すら感じていないように見える。

「！？」
「見えない壁！？」
「バリアーとか？」

　その光景を見て会場は更に騒然となった。

　先程のショックと驚きでヘナヘナと腰を抜かすレポーターの隣で、会長は説明を始めた。

「これはマジックでも超能力でもありません。ロボの周りは硬化テクタイトという特殊な物質で完全にガードされています。当然、大会の安全基準もクリアしており、たとえ対戦相手の下敷きになっても問題ありません！」

　会長の口から出た"硬化テクタイト"という聞きなれない単語に対して、一部の人から「えええ！？」「マジか！」「嘘だろ！」と驚きの声が上がった。

――硬化テクタイト
　
　それは、少し前に海外で発表された、最先端技術による超物質である。
　ピストル程度では傷もつかない圧倒的な硬度。注視しないと肉眼でも見えないくらいの透明度。
　更に液状にして塗布したり、既存物質に混ぜる事によっても、ある程度の効果を発揮するという、まさに宇宙科学から生まれた夢の物質。それが硬化テクタイトだ。

　まだ研究段階と言われている超物質を、何処の馬の骨かも知らない連中が持ち出して、更に実用化までしている。
　目の前でありえない事が起きている。こいつらは一体……！

　少しずつ会場の雰囲気が変わっていく。

「クククッ。これで私達が只の学生では無い事がお分かりいただけたかな？」

　ざわっ……！！

　威圧するような会長の声に、会場にいる全ての者が過敏に反応した。

「我々、水道橋ロボットアニメ同好会は、貴様らに挑戦状を叩きつける為にここに来た！」

　渡辺は一気に本性を見せていく。

「我々は科学、夢、勇気、ロマンと全てが詰まっているロボットアニメを愛しているし、同じくらいロボバトも愛していた」

「しかし！　最近のロボバトは勝敗に拘って勝つ為のロボしか作らず、その結果、生まれたのが力押ししかしない只の相撲ごっこだ！」

　知奈はその台詞に他のチームが反応したように感じ、彼らの後から怒気が見えてくるようだとさえ思った。

「お前らはルールブックを読んでいるか？　この大会の自由度が高い理由を考えた事があるのか？　技術の発展と新たな可能性がテーマではないのか！」

　ざわ……！　ざわ……！
　会場のどよめきは止まらない。

「夢とロマンの無いロボバトなんて不要だ！　我々が新しいロボバトを見せてやる！　今から楽しみにしておけ！」

　そう言うと会長は他のメンバーに合図して、待機場に戻るぞと促した。

「えっ？　ええっ！？　どうなっているの！？」

　いきなりの超展開に戸惑っている知奈だが、他のメンバーも動き出しているのを見て、ここはついて行くしかないと観念した。

　知奈は観客に向けてペコリと深く頭を下げて、「どうして？私、ヒールになっちゃった……」と思いながら小走りでメンバーを追いかけていった。

　ロボットアニメ同好会はそのまま開会式会場から去っていく。
　会場にいる人達は只々その後姿を見送る事しか出来なかった。

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