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第0話 この大チャンスを生かさないでどうする!

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「…………」

 水道橋大学近くに「MegaBots」という喫茶店がある。
 そこで同大学のロボットアニメ同好会のメンバー4人は、一通の書類を前に思い思いの表情を見せていた。

「会長、本当に応募したんですか!?」
「何でそんな事をしたんですか!」

 強い口調で会長に詰め寄る岸と大和田に対して、会長と呼ばれた男、渡辺太一は笑いながら答えた。

「ほら、この前の飲み会で盛り上がった話だし、折角思いついたんだから出さないとな」
「しかし、いくらなんでもこれは……!」
「そもそも二流大学、しかも正式なサークルでもない同好会がなんで選ばれたんだ……?」

『……あっ』

 3人はテーブルの一番端にいる男に目をやった。

「ん? どうしました? 私の顔に何かついてますか?」

 山本という常に笑顔の男は、内輪では“御曹司”と呼ばれている。
 彼は謎の人脈を持ち、当たり前に「特報!」と言って、公開前の情報を持ち込んできたりするのた。

 先日の大学祭でアイドル声優グループを呼び、ゲリラライブを行ったのも彼の仕業だという噂すらある。この男ならもしかしたら、と思わざるを得ない。

「とにかくだ! 俺達は21世紀枠を使って“ロボバト“の出場権を手に入れたんだ。この大チャンスを生かさないでどうする!」

 渡辺会長が口にしたロボバトという単語、それは「有人ロボットバトル大会」の略名である。
 少し昔、日米の小さな会社が趣味で「日米ロボットバトル」という企画を立ち上げた。
 2機の有人巨大ロボがぶつかり合い、そして殴り合う。その迫力と”男のロマン”がウケたのだろう。
 それがキッカケとなり、有人ロボバトルブームが起こる。

 今では色んな企業やスポンサーもつき、大きな大会になるとテレビで紹介されるくらいにまで成長した。

 その企業やガチな研究所が参加する国内最大規模の大会に、門外漢であるロボットアニメ同好会が参加する。
 普通に考えたら、いくら特別枠だとしてもあり得ない話だ。

「しかし、私たちの提出したロボコンセプトは、向こうには相当魅力的だと思いますよ?」
 
 それは確かにある。と2人は思った。これは最近のロボットに対するアンチテーゼとして書かれた提案書でもあるのだ。

 恐竜的に進化していく今のロボとは全く違うコンセプト。それを実現させる最新技術の投入。”技術の発展と新たな可能性”をテーマとするこの大会にはもってこいとも言える。

 ただし、その同好会が提唱するロボには大きな問題があった。コンセプト的にパイロットの身体能力が過大に要求されるのだ。

「それにパイロットはどうするんですか!」
「余程の人じゃないと操れませんよ!?」

 必死に辞退させようと説得する岸と大和田に対して、渡辺会長は不敵に笑う。

「安心しろ二人とも。 俺に心当たりがある」
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