上 下
1 / 6

第一話

しおりを挟む
 僕は車を駐車場に止めて、久しぶりに来た繁華街をぶらぶらと歩いていた。

 ここは観光名所であり、いつも人が賑わっていて、その光景を見ているだけでも楽しい。
 その途中、僕は新規オープンの派手な立て看板を見つける。

「ん? 出会い喫茶?」

 名前は聞いた事あるが詳しくはわからない。店名は"ラブリーカフェ"、いかにもな名前だなと苦笑いしてしまう。立て看板を見てみると、ソファーに座っている女性達の写真が貼られている。気になった僕は、スマホで軽く検索してみた。

「これは何か面白そうだ。御飯まで時間あるし行ってみるか!」

 少し不安もあったが、興味心の強い僕は構わずテナントビルの中に入ってみる。
 エレベーターで5階まで上がると、扉の向こうは風俗案内所のような、異質な雰囲気に包まれていた。

「こうやって実物を見ると凄いな……」

 僕は目の前の光景を見て一瞬やめようかとも思ったが、店の前に立っていた男が「いらっしゃいませ!」と、声をかけてきたので、観念してそのまま受付に行き入会手続きに入った。
 登録後、その店員に案内されて男性用入口の前に立っていた。入口は遮光カーテンで仕切られており、しかも二重になっている。光を一切入れさせないという構造だ。

「さて、いよいよ店内へ入るぞ」

 あるのはワクワク感とハラハラ感。まるでお化け屋敷に入る気分だなと思いながら、2枚目のカーテンをめくるとそこは異様な光景だった。

「く、暗いな」

 暗い通路と横の壁には大きな窓。窓の向こうには明るく清潔そうな部屋があり、その中では女性達がソファー等に座っていた。女性達はそこで壁にある漫画を読んだり、無料のドリンクバーで飲み物を飲んだり、友達同士でワイワイしてたりと普通にその空間を楽しんでいる。

 一方、暗い通路の中で男に出来る事は自販機でジュースを買って飲む事と、スマホをポチポチといじる事、そして女性がいる部屋を眺めるくらいだ。

 ここまで男女の処遇が違うのか。と戸惑いもあるが、更に料金形態も男と女で全く異なっている。

--- 男性料金システム ---
入会料:3000円
入店料:1000円
トーク料:1000円
外出料:2000円
+女の子へ支払う金
---------------------------

 一方、女性は飲み物、カラオケ等全て完全0円。むしろ登録したらお礼として1000円がもらえる。時には出張の占いやネイルサービスもあり、それすら無料なのである。

 これだけ見たら女性側は天国だが、その代わりそれ相応の条件が存在する。それは店員から呼び出されたら必ずトークルームに行って、男性と10分間お話しないといけない事だ。

 そして、この10分間のトークでお互いが了解したら、一緒に外に出る事が出来る。その際、男性はお店に対して外出料と女性へのお小遣いを支払い、女性はお店側からそのお小遣いを受け取る。

 外出後はお店の知った事ではなく、何かあっても責任を取る事は無い。お互いの容姿を直接見る事が出来て、店員が見守る安全な所で交渉を進めていく。勿論、相手の誘いを断るのも自由であり、更に言えば出会い目的で来る必要すらない。

 とても合理的で男性にも女性にもwin-winなシステムだと言える。その結果、いわゆるパパ活、援助交際の温床になるのは必然だ。

「まったく恐ろしい事を思いつくもんだ」

 僕はこのシステムを素直に感心した。

 暗い通路と明るい部屋はマジックミラーで仕切られており、女性側からこちらを見る事は出来ず、防音もされているので相手側の会話も聞こえる事も無い。

「そうか。ここは……」


 ここは" 女 水 族 館 "


 相手の視線を気にする事なく、女性の生態を観察出来る場所なんだ。僕は繁華街の中に突如現れた、あまりもの非日常空間に圧倒されて時々ラブリーカフェに行くようになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...