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【二幕 第二話 廊下の戦い】
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エレベーターの中からイサリとオウカが外を覗くと、不気味な雰囲気が辺りに漂っていた。
そこは、まったくショッピングモールには存在しないはずの場所。
仄かな明かりは非常灯なのだろう。
ポツンと照らす光で、そこが細長い廊下だと分かった。
「行くわよ」
「ええっ! 本当に!? このままエレベーターで別の階に行った方がいいんじゃないの?」
「恐らく何をしてもこの場所に連れてこられるわ。わたしたちが見た赤いコートの女は、きっと妖魔よ」
「あれが妖魔……」
人間のように見えたが思い返せば、イサリが対峙した細長い男も遠目から見れば人間に思えた。
「姉ちゃんは退魔士なんだから何か感じなかったの?」
「あなたの好きな漫画やアニメのように妖気なんてものは感じられないのよ」
「そういうものなのか」
「とにかく、わたしの後ろにいなさい」
「俺だって姉ちゃんと戦いたい」
「勘違いしないの。背後から何かあるかもしれない。あなたには、わたしの背中を預ける。ちゃんとお姉ちゃんを守ってね」
「姉ちゃん……! ああ、任せてくれ!」
イサリは意気揚々と金剛石の刀を構えて、オウカと背中合わせでエレベーターの外へと進んでいく。
窓ガラスが張られた廊下の両脇の部屋には、妖魔に殺されたであろう人間たちの首が飾られていた。
「ひどい……」
イサリは思わず目を逸らす。
「完全に場所が上塗りされている。これがあの妖魔の得意な空間なのね」
廊下を進んでいく中でイサリたちは異変に気付く。
「なぁ、姉ちゃん」
「ええ。これだけ歩いているのに廊下の終わりにたどり着かないわ」
「延々と続く廊下ってこと?」
「ループしているのかそもそも、とんでもなく長いのかは分からないけれどね」
「あの赤いコートの妖魔を倒せば抜け出せるとか?」
「十分あり得るわ。でも、見なさい」
終わらないと思っていた廊下だったが、曲がり角が見えた。
「イサリ、ここで待っていなさい」
「分かった」
オウカが曲がり角を曲がって前に進む。
すると手前の扉からゆらりと、首の無い死体が現れ、オウカに襲い掛かる。
右手に持つ金剛石の刀で敵を一刀両断にする。
先へ進み、扉の中へ入るオウカ。
中の様子はイサリからは見えない。
が、部屋の中から斬撃や敵を壁に叩きつける音が廊下まで響いてきていた。
窓ガラスをぶち破り、首の無い動く死体が宙を舞って床に叩きつけられた。
扉からオウカが出てき、その後ろを動く死体が追いかける。
「姉ちゃん!」
イサリの声を受け、オウカは振り返ることもなく刀を逆手に持ち替えて動く死体の胸を貫き、そのまま斬り捨てる。
オウカは刀についた塵を一閃して振り払い、さらに先へ進んでいく。
次々に扉から首無し死体が現れては問答無用にオウカへ襲い掛かる。
あの数は不味いとイサリは思い、オウカに加勢しようと一歩足を踏み出したが、足を出した瞬間、彼は尋常ではない圧を全身に感じた。
オウカの間合いは、それほどまでに広かったのだ。
余計なことをすれば、それこそオウカのペースを乱すことになる。
イサリはオウカが言った最初の言葉を信じて、ただ彼女の戦いを見守るのだった。
二体で同時に襲い掛かってくる敵を、オウカは右手に持つ刀と左手に生成した金剛石の鉤爪を使って、巧みにさばいていく。
前方からだけでなく、背後からも敵が迫るが金剛石のナイフを生成し、背中越しに投げつける。
人間二人がギリギリ通れるほどの狭い通路で難なく敵を倒していった。
恐らく最後の部屋であろう場所にたどり着き、中から出てくる妖魔を一閃してすべての敵を撃退させた。
「ふぅ。イサリ、もういいわよ」
イサリは辺りに倒れている敵を見ながら、うへーっと信じられないといった様子でオウカのもとまでやってきた。
「無事?」
「うん。無事だけど……。俺、もう絶対姉ちゃんには逆らわないよ」
「なにそれ? でも、お姉ちゃんを尊敬してくれるのは嬉しいわ」
尊敬というより恐怖なんだけどね、というのは黙っておくことにした。
「それにしても変ね」
「何が?」
「この妖魔たち、手応えが妖魔というよりはまるで無機物。岩やコンクリート、機械を斬ってるみたいだったわ」
「コンクリート斬れる姉ちゃんの方が変だと思うけどね」
「何か言った?」
「いいえ! 何でもありません!」
すぐさまイサリは倒れている死体を検証してみる。
こんなもの間近で見たことなど今までなかったが、少しでもオウカの役に立ちたいという思いから自然と行動に出たのだろう。
「姉ちゃん、見て」
「これは……」
オウカに斬られた箇所をよく見てみると、配線のようなものが血管の代わりになって出ていたのだ。
首の断面を見ると、そこには鉱石や、木片など人間には本来ありえないはずの物が紛れ込んでいた。
「これって赤いコートの女の仕業?」
「どうかしら。わたしには人為的に思えるわ」
「誰かが死体を使ったってこと?」
「分からないけど、まずはこの廊下から出る方法を探しましょう」
そこは、まったくショッピングモールには存在しないはずの場所。
仄かな明かりは非常灯なのだろう。
ポツンと照らす光で、そこが細長い廊下だと分かった。
「行くわよ」
「ええっ! 本当に!? このままエレベーターで別の階に行った方がいいんじゃないの?」
「恐らく何をしてもこの場所に連れてこられるわ。わたしたちが見た赤いコートの女は、きっと妖魔よ」
「あれが妖魔……」
人間のように見えたが思い返せば、イサリが対峙した細長い男も遠目から見れば人間に思えた。
「姉ちゃんは退魔士なんだから何か感じなかったの?」
「あなたの好きな漫画やアニメのように妖気なんてものは感じられないのよ」
「そういうものなのか」
「とにかく、わたしの後ろにいなさい」
「俺だって姉ちゃんと戦いたい」
「勘違いしないの。背後から何かあるかもしれない。あなたには、わたしの背中を預ける。ちゃんとお姉ちゃんを守ってね」
「姉ちゃん……! ああ、任せてくれ!」
イサリは意気揚々と金剛石の刀を構えて、オウカと背中合わせでエレベーターの外へと進んでいく。
窓ガラスが張られた廊下の両脇の部屋には、妖魔に殺されたであろう人間たちの首が飾られていた。
「ひどい……」
イサリは思わず目を逸らす。
「完全に場所が上塗りされている。これがあの妖魔の得意な空間なのね」
廊下を進んでいく中でイサリたちは異変に気付く。
「なぁ、姉ちゃん」
「ええ。これだけ歩いているのに廊下の終わりにたどり着かないわ」
「延々と続く廊下ってこと?」
「ループしているのかそもそも、とんでもなく長いのかは分からないけれどね」
「あの赤いコートの妖魔を倒せば抜け出せるとか?」
「十分あり得るわ。でも、見なさい」
終わらないと思っていた廊下だったが、曲がり角が見えた。
「イサリ、ここで待っていなさい」
「分かった」
オウカが曲がり角を曲がって前に進む。
すると手前の扉からゆらりと、首の無い死体が現れ、オウカに襲い掛かる。
右手に持つ金剛石の刀で敵を一刀両断にする。
先へ進み、扉の中へ入るオウカ。
中の様子はイサリからは見えない。
が、部屋の中から斬撃や敵を壁に叩きつける音が廊下まで響いてきていた。
窓ガラスをぶち破り、首の無い動く死体が宙を舞って床に叩きつけられた。
扉からオウカが出てき、その後ろを動く死体が追いかける。
「姉ちゃん!」
イサリの声を受け、オウカは振り返ることもなく刀を逆手に持ち替えて動く死体の胸を貫き、そのまま斬り捨てる。
オウカは刀についた塵を一閃して振り払い、さらに先へ進んでいく。
次々に扉から首無し死体が現れては問答無用にオウカへ襲い掛かる。
あの数は不味いとイサリは思い、オウカに加勢しようと一歩足を踏み出したが、足を出した瞬間、彼は尋常ではない圧を全身に感じた。
オウカの間合いは、それほどまでに広かったのだ。
余計なことをすれば、それこそオウカのペースを乱すことになる。
イサリはオウカが言った最初の言葉を信じて、ただ彼女の戦いを見守るのだった。
二体で同時に襲い掛かってくる敵を、オウカは右手に持つ刀と左手に生成した金剛石の鉤爪を使って、巧みにさばいていく。
前方からだけでなく、背後からも敵が迫るが金剛石のナイフを生成し、背中越しに投げつける。
人間二人がギリギリ通れるほどの狭い通路で難なく敵を倒していった。
恐らく最後の部屋であろう場所にたどり着き、中から出てくる妖魔を一閃してすべての敵を撃退させた。
「ふぅ。イサリ、もういいわよ」
イサリは辺りに倒れている敵を見ながら、うへーっと信じられないといった様子でオウカのもとまでやってきた。
「無事?」
「うん。無事だけど……。俺、もう絶対姉ちゃんには逆らわないよ」
「なにそれ? でも、お姉ちゃんを尊敬してくれるのは嬉しいわ」
尊敬というより恐怖なんだけどね、というのは黙っておくことにした。
「それにしても変ね」
「何が?」
「この妖魔たち、手応えが妖魔というよりはまるで無機物。岩やコンクリート、機械を斬ってるみたいだったわ」
「コンクリート斬れる姉ちゃんの方が変だと思うけどね」
「何か言った?」
「いいえ! 何でもありません!」
すぐさまイサリは倒れている死体を検証してみる。
こんなもの間近で見たことなど今までなかったが、少しでもオウカの役に立ちたいという思いから自然と行動に出たのだろう。
「姉ちゃん、見て」
「これは……」
オウカに斬られた箇所をよく見てみると、配線のようなものが血管の代わりになって出ていたのだ。
首の断面を見ると、そこには鉱石や、木片など人間には本来ありえないはずの物が紛れ込んでいた。
「これって赤いコートの女の仕業?」
「どうかしら。わたしには人為的に思えるわ」
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