問答無用!でランキングブレイカー!! ースキル、グラビアこそ最強最高ですー

心絵マシテ

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全てを知る者

106話 新学期

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「此処じゃ、ここでホバリングせい!」

 ササブリが念話にて指示を出してきた。
 ヘリコプターじゃないんだからと言い返そうとしたら、マジでホバリングできた。
 ダイハードでGOというゲームでつちかわれた俺の飛行テクは、マダマダ衰えていない。
 特にハイジャックに脅されながら、旅客機を飛ばさないといけないミッションに散々、苦労させられた。
 犯人が発砲してくる銃弾を上手く避けながら操縦しないと、ジェット機を飛ばす前に、操作キャラの頭が噴き飛んでいる。

 プレイヤー側にとって理不尽な使用になっているクソゲーではあるが、愛すべきクソだからこそやり遂げようとする意思が生まれる。
 最後には旅客機ごとホワイトハウスに突っ込んでいったのは狂気の沙汰であった。
 それこそUSAウサの連中が報復にかちこんできそうなほどの勢いだ。

 ――――と思い出話はここまでだ。
 俺はできることをやって見せた。あとはササブリがどうやってマーダの居城を見つけるかだ……。
 すぅーと、息を吸い込んで魔王が天に向かって大声を轟かせる。

「もう、いいかい!?」

「マーダ、ダヨョョョ!!」

 天上で反響するササブリの声。
 しかし、返ってきたのは叫んだ言葉ではなく、それに対する応答だった。
 確かに、マーダは近くに潜んでいる。
 予想が確信に変わると、ササブリはさらに続けた。

「もい、いいかい!?」

「マーダ、ダヨ――――ン!!」

 さっきとは微妙に違う、少しフランクな感じになってきた。
 このまま、友好を深めていけばマーダも心を開いて城に招き入れてくれる。
 などと、妄想を膨らませながら、ほくそ笑む。
 マーダの心など、この俺が盗んでやる。

「もぉ――う、いいよぉおおお!!!」

 人が調子づいている傍から、諦めにも取れる悲痛な叫びが届いてきた。
 まるで、恋人に別れを告げるような……慟哭どうこくにも聞こえ何故か、俺の方へと精神的に押し寄せてくるものがあった。

「いや! ちょっ……待てよぉおおお!! 今、玄関を開けるからさぁ」

 普通になっさけねぇ――声がした。明らかに動揺して空に亀裂が走る。
 サンダル履きのマーダが今にもやってきそうだが……さすがにそう都合よくとはいかない。
 割れた硝子のように崩れ去る光学迷彩バリア、大空を漂う天空の城がようやくオデマシになられた。

「行くぞ! このまま勢いにのってマーダをランキングブレイクしてやる」

 城の中庭に滑るようにしてファルコンXを着陸させる。
 途方もなく広大な城のおかげで問題なく目的地につけた。

「ここが、マーダの根城……グランパレスじゃ!!」

「お爺ちゃんみたいな響きだな、ん?」

 到着そうそう、自分の身に降りかかる異常に俺は困惑してしまった。
 城壁も中庭も、そしてそこにある草花でさえも、しっかりとしたブロックでできている。
 直に触れても植物のソレとは違うツルツルとした感触が手に伝わってくる。

「ササブリ、この城……全体的にLEG〇ブロックみたいになってねぇーか!? これには元祖トイレサラスキッズの俺もビクリしたよぉぉお!!」

 まるで故郷を離れ、海外にやってきた留学生ように片言で驚く俺を蔑ろにして、軽薄な魔王は城の中へと入ってゆく。
 凹凸のない滑らかな道を俺は全力で駆け出すと、意味もなくスライディングを決め滑走してみせる。
 小学生なら誰でも一度はやってみたい芸当だ。
 まさか、このようなカタチで成就するとは……世の中まだまだ捨てたものじゃない。

 城の中へとダイブする俺……そこに広がる景色は、春の息吹を感じる桜並木の遊歩道だった。
 一瞬、何が起きたのか? 脳が情報処理の負荷に耐えきれず、危うくフリーズしかけた。
 今、目にしている光景は前世の記憶……このセカイとは異なる場所を象徴したような架空の場所に俺は迷い込んでいた。
 小鳥のさえずりが聞こえる中、ブレザー姿の女学生が俺を抱えながら走っていた。

「ササブリ? いや、ササちゃん!」
 彼女の顔は、どう見ても俺が知っているアイドルと瓜二つだ。
 驚きつつも声をかけようとするが、声が出せない。

「ヤバイよぉ~、新学期初日から朝寝坊するなんて……ちゃんと目覚しかけたのにぃぃぃ!!」

 慌てふためく様子に、少女は登校中で遅刻しそうになっているようだ。
 どこか、アニメチックなシチュエーションに鼻がむずかゆくなった。
 ところが、あるはずの鼻がない……それどころか……道端に映る俺の影は全体的に四角くなっているのは……気のせいだろうか?

「ああん、もう! なんか今日の食パン、ずっしりとして重いよぉおお! いくら徳用サイズだからって大きすぎだよ~」

 少女の些細な泣き言が、俺を狂気の世界へと引きずり込んでいったのは、言うまでもない。
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