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全てを知る者
104話 笑って堪えて
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「この機体について、ずいぶんと詳しいな?」
「ふん。ここに来る道中、ババアが執拗に説明してきたからのぅ……嫌でも覚えたわ」
「そんで、これがシズエさんが俺に渡そうとしていたものか……」
「はぁ? 何を言っておるか! この機体は我のもんじゃい。主は我のセグウェイを破壊したではないか!」
コイツ……気づいていやがったのか。
大切なセグウェイを失った代わりに、ファルコンXを要求する魔王。
俺としては普通にいらない機体だから快く譲ってやりたい。
ただ、みすみすセグウェイを手放したくなかったのは俺も同じだ……おまけついでに、仲間みたいなのも失ってしまった。
決して悪気はなかったのだ……その辺りの心情は察してほしい。
「合体できないファルコンなんて、飛ばしても移動と偵察ぐらいにしか役立たないだろう。お前の好きにしろよ、ササブリ」
「ほほぉー、妙に聞き分けが良いな~。マイトよ、何を企んでおる?」
ん? んん? どうして、そこで疑われるんだ?
しかも、常に俺がケチ臭い奴のような言い方をしやがって……。
あらぬ疑いをかけられて、不満たらたらだったが、言い返す気力も起きなかった。
婆さんのことといい、この部屋は人にとって有害な場所だったようだ。
少しずつ精気を吸い取られている。
俺が他者よりも長い時間、耐えられるのは魔王との契約のおかげだろう。
普段から、魔に触れていたから耐性がついた……そう思いたい。
「しかしのう。今のままではコイツは、大空に飛び立てぬ」
ササブリがポンポンと機体を軽く叩いた。
何か言いた気な口ぶりは、あからさまに俺からの問いを待っている。
お便りコーナーじゃねぇんですけど……。
半ば観念しつつ、話に乗っかる。
「意味深な発言だな? 燃料でも入っていないのか?」
「いや逆じゃ、ファルコンXは呪詛の力で起動する。しかしながら……ちぃーと、ばかしエネルギーが溢れすぎて、機体の制御が上手くいかないのじゃ……!」
聞くんじゃなかった……。
特級ではなく、まさかの特急呪物。そうファルコンXは呪われている。
そういえば、以前……俺にパンツ泥棒の濡れ衣を着せた魔女が言っていた。
「呪いは早いモノ勝ち」だと。
呪いには、精神的なモノと肉体的なモノの二種類があり、すでに呪われている者は、追加の呪いを受けつけない。
シズエ婆さんの容態からして、ファルコンXは精神的な呪いを与えてくる。
見た者の欲情を掻き立てるスパンコールのズボンは、この系統に該当する。
それを見抜いて俺にこの厄介なモノを引き渡そうとしたのだろう。
早い話……勇者なんて耳障りの良い言葉に俺はまんまと躍らされたわけだ。
最初から、呪われている奴なら誰でも良かったのだ。
「なら、俺が搭乗するしかないだろうな。俺なら、この機体の呪いを打ち消しスパンコールによって稼働させられるはずだ!」
勢いづいて言っているが、自分でも何をほざいているのか分からない。
真面目なていで話を進めるが、常に顔は半笑い状態である。
「ぷぷっぅ」思わず、ササブリが顔を背けて笑いをこらえていた。
いつから、笑ってはいけないシリーズに突入したのか? スタッフがいるのなら連絡下さい。
「まぁ……そうじゃの。このファルコンXさえ、移動すればこの辺り一帯の呪いは解けるはずじゃ」
「でも、何故? シズエさんは呪われたんだ? 今まで、負の力を利用してここで漬物をつけていたんだろう」
「ンクククッ、それな……。時間が経つにつれて、呪いの力が強くなったと考えられるぞ。そして、主が別の呪いを持ち込んだことで状況は悪化したのだ」
なんてことだ……すべては俺が原因だというのか?
俺が羞恥心を捨ててパンイチで外出すれば、シズエ婆さんは犠牲ならずに済んだかもしれない……。
代わりに、俺が変質者として里のバーサーカーどもに捕らえれる危険性を覚悟できていれば、彼女はもっと漬物を作れたかもしれない。
いや、それは結果論でしかない。
そもそも、キヨシの里は初見なんだ。どういう仕様になっているのか? あの時点では知らなかったのだから仕方がない。
「よし! そろそろ発進するぞ。マイト、主も同乗しろ」
人が話をまとめている最中、魔王の腕が伸びて俺を掴み上げた。
まるで、飼い猫を扱うように操縦席に放り込んでくれる……この荒っぽさ。
好きじゃないぜ!
「お前は乗らないのか?」
「我は、この特等席で良いぞ」
もう無茶苦茶だった。ササブリはコックピットには乗り込もうとせず、機体の上座り込んでいた。
コイツならマッハでも耐えられるんだろうけど、乗馬気分とは恐れ入る。
呆れつつも、俺はジョイスティックを握りしめ機体を操作した。
「ふん。ここに来る道中、ババアが執拗に説明してきたからのぅ……嫌でも覚えたわ」
「そんで、これがシズエさんが俺に渡そうとしていたものか……」
「はぁ? 何を言っておるか! この機体は我のもんじゃい。主は我のセグウェイを破壊したではないか!」
コイツ……気づいていやがったのか。
大切なセグウェイを失った代わりに、ファルコンXを要求する魔王。
俺としては普通にいらない機体だから快く譲ってやりたい。
ただ、みすみすセグウェイを手放したくなかったのは俺も同じだ……おまけついでに、仲間みたいなのも失ってしまった。
決して悪気はなかったのだ……その辺りの心情は察してほしい。
「合体できないファルコンなんて、飛ばしても移動と偵察ぐらいにしか役立たないだろう。お前の好きにしろよ、ササブリ」
「ほほぉー、妙に聞き分けが良いな~。マイトよ、何を企んでおる?」
ん? んん? どうして、そこで疑われるんだ?
しかも、常に俺がケチ臭い奴のような言い方をしやがって……。
あらぬ疑いをかけられて、不満たらたらだったが、言い返す気力も起きなかった。
婆さんのことといい、この部屋は人にとって有害な場所だったようだ。
少しずつ精気を吸い取られている。
俺が他者よりも長い時間、耐えられるのは魔王との契約のおかげだろう。
普段から、魔に触れていたから耐性がついた……そう思いたい。
「しかしのう。今のままではコイツは、大空に飛び立てぬ」
ササブリがポンポンと機体を軽く叩いた。
何か言いた気な口ぶりは、あからさまに俺からの問いを待っている。
お便りコーナーじゃねぇんですけど……。
半ば観念しつつ、話に乗っかる。
「意味深な発言だな? 燃料でも入っていないのか?」
「いや逆じゃ、ファルコンXは呪詛の力で起動する。しかしながら……ちぃーと、ばかしエネルギーが溢れすぎて、機体の制御が上手くいかないのじゃ……!」
聞くんじゃなかった……。
特級ではなく、まさかの特急呪物。そうファルコンXは呪われている。
そういえば、以前……俺にパンツ泥棒の濡れ衣を着せた魔女が言っていた。
「呪いは早いモノ勝ち」だと。
呪いには、精神的なモノと肉体的なモノの二種類があり、すでに呪われている者は、追加の呪いを受けつけない。
シズエ婆さんの容態からして、ファルコンXは精神的な呪いを与えてくる。
見た者の欲情を掻き立てるスパンコールのズボンは、この系統に該当する。
それを見抜いて俺にこの厄介なモノを引き渡そうとしたのだろう。
早い話……勇者なんて耳障りの良い言葉に俺はまんまと躍らされたわけだ。
最初から、呪われている奴なら誰でも良かったのだ。
「なら、俺が搭乗するしかないだろうな。俺なら、この機体の呪いを打ち消しスパンコールによって稼働させられるはずだ!」
勢いづいて言っているが、自分でも何をほざいているのか分からない。
真面目なていで話を進めるが、常に顔は半笑い状態である。
「ぷぷっぅ」思わず、ササブリが顔を背けて笑いをこらえていた。
いつから、笑ってはいけないシリーズに突入したのか? スタッフがいるのなら連絡下さい。
「まぁ……そうじゃの。このファルコンXさえ、移動すればこの辺り一帯の呪いは解けるはずじゃ」
「でも、何故? シズエさんは呪われたんだ? 今まで、負の力を利用してここで漬物をつけていたんだろう」
「ンクククッ、それな……。時間が経つにつれて、呪いの力が強くなったと考えられるぞ。そして、主が別の呪いを持ち込んだことで状況は悪化したのだ」
なんてことだ……すべては俺が原因だというのか?
俺が羞恥心を捨ててパンイチで外出すれば、シズエ婆さんは犠牲ならずに済んだかもしれない……。
代わりに、俺が変質者として里のバーサーカーどもに捕らえれる危険性を覚悟できていれば、彼女はもっと漬物を作れたかもしれない。
いや、それは結果論でしかない。
そもそも、キヨシの里は初見なんだ。どういう仕様になっているのか? あの時点では知らなかったのだから仕方がない。
「よし! そろそろ発進するぞ。マイト、主も同乗しろ」
人が話をまとめている最中、魔王の腕が伸びて俺を掴み上げた。
まるで、飼い猫を扱うように操縦席に放り込んでくれる……この荒っぽさ。
好きじゃないぜ!
「お前は乗らないのか?」
「我は、この特等席で良いぞ」
もう無茶苦茶だった。ササブリはコックピットには乗り込もうとせず、機体の上座り込んでいた。
コイツならマッハでも耐えられるんだろうけど、乗馬気分とは恐れ入る。
呆れつつも、俺はジョイスティックを握りしめ機体を操作した。
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