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全てを知る者
103話 ファルコンX
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シャルの離脱があったものの、どうにか階段を下り地下通路まで進んだ。
先行していた邪悪なコンビは、既に先に行ってしまったのか? 姿が見えない。
カビ臭さがプラスされた悪臭はさら凶悪となり、空気を淀ませている。
これがバイオの力か……。
ババアとササブリは夜行性だから、暗闇でも平気かもしれないが普通に辺りは真っ暗だ。
一般人ならものの数秒で糞尿を垂れ流し、ヒャッハ――――だ。
光源となるモノは周囲に一切なく、ライトも所持してはいない。
頼み綱は、この勝手に光るズボンだけだ。
闇夜を照らす自販機のように煌々とした光だけが、我がビクトリーロードを示してくれている。
さすがに、ここま閉鎖的な空間だと出そうな気がする。
もう俺も立派なお兄さんだ、今更ウンコとか言うつもりはない。
ただ、独りは心細く、歩く度にヘルスパワーが減少してゆく。
反響する足音だけが闇に奥に吸い込まれてゆく。
しばらく道なりに進むんだ俺はピタッと歩みを止めた。
何かがおかしい……いや、最初からおかしさしかないけれど、これはキツイぞ。
自分以外の足音が聞こえてくる。
前方なら、あの二人かもしれないが音は背後から俺を追うカタチで鳴り続けている。
「もしもし、誰かいるのかぁ!? まさか、シャルなのか? いたら「はい!」と返事してくれ」
言わなくも分かっているのに……つい背後を向いて確認してしまう。
こういった曰く付きの場所では、やっていけないフラグを立ててしまった。
頭では分かっていても、恐怖には討ち勝てない。
無言ままやり過ごすのは、無理な相談でござる。
カツッ、カツッ、カツッ――――地下道に響き渡る靴音が次第に大きくなってきた。
カツカツカツカツカッカッカッカッカツカツカツカカアアアカァァァアァ――――!!!
初めは歩く音だったソレは、徐々に激しくなりテレビのノイズ、砂嵐ように聞こえてきた。
ここから逃げ出したいという一心はある。
けれど、映画やドラマのようにはいかない……足が地面に吸い付いているかのように竦んで動かない。
別に、幽霊や妖怪を信じているわけではない。
存在を認めていないからこそ、奇怪な出来事にどう対処すればわからず困惑している。
プゥゥゥゥ~!! こんな時に限って腸内活動が活発になってきた。
なんてことだ……恐怖で外肛門括約筋が緩み、ケツから悲鳴を上げてしまった。
「ひゃあ~い! みぃつけたぁ~」
俺の放屁を感知した何かが、傍にいるのを感じる……。
なんなら、返事までしてきた。
見られている気がする。さっきから得体の知れない視線が天井から俺を見下ろしているような気配がする。
俺は恐る恐る顔を天上へと向けた。
「――――っ、ババアぁぁあ!! そこで、何してんだよ!!!」
そこには信じ難い光景が広がっていた。
忍者のように天上に貼りつくシズエ婆さんが人の頭に唾液を垂らそうとしていた。
嫌がらせなんて生ぬるいレベルじゃない、れっきとした犯罪だ。
それよりも、どうやって天井まで移動したんだ? スパイダーマンかよ!
糸引く体液が今にも滴りおちそうになっていた。
「うっわあああああ、きたねぇぇえ――――!!」
今度こそ、俺は全速力で逃げ出した。
通路の突き当りにドアが見える。
ババアは、ゴキブリのように天井を伝って追いかけくる。
歩いたりするよりも格段に速く無駄がない。
「嘘だろっ――――。あれで、妖怪じゃないなんて! もはや、単なる変質者じゃないか!?」
死に物狂いで走り、急いで部屋の扉を開くと俺は中に飛び込んだ。
扉の裏にあるカンヌキをかけ、シズエの襲撃をなんとか回避することに成功した。
ガンガン!ダンダン! 外から婆さんが金属の扉に体当たりしてきた。
ハッキリ言って正気ではない。
異常性の塊だ……ここ来る前の知性や理性など、今の婆さんには感じられない。
「いったい、どうしてしまったんだ……シズエさん? まったくもって別人になってしまっている」
「簡単なことだ。ババアの奴め、ここに充満していた怨念に憑りつかれおって……」
ボ、ボ、ボ、ボ、ボッと部屋の中央から端に向けて真っ赤な鬼火が燃え盛る。
赤一色に染まる部屋の中央で翼のついた巨大なシルエットが浮かび上がる。
その影の上にササブリは腰かけていた。
「こっ、こここ―――コイツは、マッハファルコン! 本物なのか? また、サトランの能力で顕現している偽物じゃないだろうな……」
「安心せい、この機体は本物じゃ。ファルコンX、マッハファルコンのモデルとなった完全受注生産の戦闘機。もとは三機合体のロボットをつくる予定じゃったが、地方自治体の予算では開発費が足りず残り二体の開発を断念せざるを得なかったらしいぞ」
先行していた邪悪なコンビは、既に先に行ってしまったのか? 姿が見えない。
カビ臭さがプラスされた悪臭はさら凶悪となり、空気を淀ませている。
これがバイオの力か……。
ババアとササブリは夜行性だから、暗闇でも平気かもしれないが普通に辺りは真っ暗だ。
一般人ならものの数秒で糞尿を垂れ流し、ヒャッハ――――だ。
光源となるモノは周囲に一切なく、ライトも所持してはいない。
頼み綱は、この勝手に光るズボンだけだ。
闇夜を照らす自販機のように煌々とした光だけが、我がビクトリーロードを示してくれている。
さすがに、ここま閉鎖的な空間だと出そうな気がする。
もう俺も立派なお兄さんだ、今更ウンコとか言うつもりはない。
ただ、独りは心細く、歩く度にヘルスパワーが減少してゆく。
反響する足音だけが闇に奥に吸い込まれてゆく。
しばらく道なりに進むんだ俺はピタッと歩みを止めた。
何かがおかしい……いや、最初からおかしさしかないけれど、これはキツイぞ。
自分以外の足音が聞こえてくる。
前方なら、あの二人かもしれないが音は背後から俺を追うカタチで鳴り続けている。
「もしもし、誰かいるのかぁ!? まさか、シャルなのか? いたら「はい!」と返事してくれ」
言わなくも分かっているのに……つい背後を向いて確認してしまう。
こういった曰く付きの場所では、やっていけないフラグを立ててしまった。
頭では分かっていても、恐怖には討ち勝てない。
無言ままやり過ごすのは、無理な相談でござる。
カツッ、カツッ、カツッ――――地下道に響き渡る靴音が次第に大きくなってきた。
カツカツカツカツカッカッカッカッカツカツカツカカアアアカァァァアァ――――!!!
初めは歩く音だったソレは、徐々に激しくなりテレビのノイズ、砂嵐ように聞こえてきた。
ここから逃げ出したいという一心はある。
けれど、映画やドラマのようにはいかない……足が地面に吸い付いているかのように竦んで動かない。
別に、幽霊や妖怪を信じているわけではない。
存在を認めていないからこそ、奇怪な出来事にどう対処すればわからず困惑している。
プゥゥゥゥ~!! こんな時に限って腸内活動が活発になってきた。
なんてことだ……恐怖で外肛門括約筋が緩み、ケツから悲鳴を上げてしまった。
「ひゃあ~い! みぃつけたぁ~」
俺の放屁を感知した何かが、傍にいるのを感じる……。
なんなら、返事までしてきた。
見られている気がする。さっきから得体の知れない視線が天井から俺を見下ろしているような気配がする。
俺は恐る恐る顔を天上へと向けた。
「――――っ、ババアぁぁあ!! そこで、何してんだよ!!!」
そこには信じ難い光景が広がっていた。
忍者のように天上に貼りつくシズエ婆さんが人の頭に唾液を垂らそうとしていた。
嫌がらせなんて生ぬるいレベルじゃない、れっきとした犯罪だ。
それよりも、どうやって天井まで移動したんだ? スパイダーマンかよ!
糸引く体液が今にも滴りおちそうになっていた。
「うっわあああああ、きたねぇぇえ――――!!」
今度こそ、俺は全速力で逃げ出した。
通路の突き当りにドアが見える。
ババアは、ゴキブリのように天井を伝って追いかけくる。
歩いたりするよりも格段に速く無駄がない。
「嘘だろっ――――。あれで、妖怪じゃないなんて! もはや、単なる変質者じゃないか!?」
死に物狂いで走り、急いで部屋の扉を開くと俺は中に飛び込んだ。
扉の裏にあるカンヌキをかけ、シズエの襲撃をなんとか回避することに成功した。
ガンガン!ダンダン! 外から婆さんが金属の扉に体当たりしてきた。
ハッキリ言って正気ではない。
異常性の塊だ……ここ来る前の知性や理性など、今の婆さんには感じられない。
「いったい、どうしてしまったんだ……シズエさん? まったくもって別人になってしまっている」
「簡単なことだ。ババアの奴め、ここに充満していた怨念に憑りつかれおって……」
ボ、ボ、ボ、ボ、ボッと部屋の中央から端に向けて真っ赤な鬼火が燃え盛る。
赤一色に染まる部屋の中央で翼のついた巨大なシルエットが浮かび上がる。
その影の上にササブリは腰かけていた。
「こっ、こここ―――コイツは、マッハファルコン! 本物なのか? また、サトランの能力で顕現している偽物じゃないだろうな……」
「安心せい、この機体は本物じゃ。ファルコンX、マッハファルコンのモデルとなった完全受注生産の戦闘機。もとは三機合体のロボットをつくる予定じゃったが、地方自治体の予算では開発費が足りず残り二体の開発を断念せざるを得なかったらしいぞ」
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