102 / 122
全てを知る者
102話 コラボレーション
しおりを挟む
「あっ、俺はマイトっす。でこっちの聖女はシャルで、この旅行帰りなのがササブリ」
会釈をする俺たちに、シズエ婆さんは目を見開いたまま無言で立ち尽くしていた。
何か、気に障ることでもあったんだろうか?
「……zzzzz」
寝ていやがる! あろうことか、人が自己紹介している最中、このババアは居眠りこいてやがる。
気にして損した、今のうちに庭を出ていこう。
「見て下さい、これがグランタブローの能力です。対象に一時的な幸運の加護を与える魔法なのですよ! どうです、効果テキメンでしょう!」
「んな……卵が先か、ニワトリが先か、みたいな話をされてもな…………」
安らかに眠る婆さんを眺めながら、恍惚とした表情を見せるシャルターナ。
聖女である彼女の神聖なモノに対する支持は凄まじい。
疑うことなく、神の恩寵だと感激している。
確かに、婆さんに見つかっても何のお咎めも受けていないのはラッキーだが……。
それが、俺の運勢だと定義づけるファクターはどこにも存在しない。
シャルターナにとって、答え合わせなど些末なことなのだろう。
奇跡という果実が自分の周囲に転がっていることを感じ取れれば、それで満足なわけだ。
確かな理屈などではなく、曖昧でも結果が勝る。
信仰心とは、そういう盲目的な部分を孕んでいる。
だからこそ慈悲でありながらも、厳格なのだろう。
「旅のお方、どこへ行くつもりか?」
「ふわっあ!」寝ていたはずのババアが再起動していた。
今度は何故か? 寝起きのコブラツイストを俺にかけてきた。
これもう、スキンシップではなく単なるセクハラではないのか?
人に疑惑をかけさせながら、女将シズエは耳元で囁く。
「その光輝く、下半身は太陽の勇者の証」だと……。
太陽……何かの隠語なのか? 真っ先にそう思い浮かべる俺の心は不浄なのだろうか?
気づけば、独りで下ネタしりとりをしている時がある。
まぁ、それが思春期の男子なわけですから~ノープロブレムよ。
「ついて来なさい。勇者、一向に渡さなければならないモノがある」
タイミングやフラグを無視して突如、シズエ婆さんは使命感を帯び始めた。
使命感とは元から在る感情のはずなのだが、婆さんの場合は違う。
まるで、何かに取憑かれたように不自然な行動を取り始めている。
これこそ、タツミタクロー? の力……! よく分かんねぇーけど、神がかっていなければ説明がつかない。
「池? どうなさるおつもりで?」
「まぁ、黙って見ていな。そぉおおお―――――れぇぇぇえええ――――いいぃぃぃぃ!」
シズエ婆さんは池のそばにある岩の上に飛び乗った。
俺と同じくシャルも老婆の奇行についてゆけず、不可解そうな面持ちを浮かべていた。
ガシャン! とそばで大きな音が鳴り響いた。
婆さんの乗った岩が地面に沈んでゆく。同時に、池が中心部から真っ二つに裂け開いてゆく。
なんと、池の下から地下へと続く階段が出現した。
これもまた、匠がなせるリフォーム技だというのか……
「おおお、おおおおぅうう!! なんじゃ! 何じゃぁぁあ! 我のために秘密の神殿でも建てておったのか!?」
魔王様は盛大なカン違いのもと先陣をきって婆さんの後をついてゆく。
「うんわっ! クサッ!!」
「何ですか!? この絶望的な悪臭は……」
たぶん、グリフィン〇ールでもここはパスすると思う。地下から妙に酸っぱい臭いがする。
慌てて鼻を塞ぐ俺とシャルを見ながら、魔王とババアがほくそ笑んでいる。
コイツらに常人の嗅覚は備わっていない。
スメラーと呼ばれた俺には分かる。コイツは発酵に失敗した時のヤバい奴だぁ!!
「主たちは軟弱よのう~」
「そういう、お前は平気なのかよ? ササブリ」
「無論じゃ! この邪悪な臭いは定期的な儀式が執り行われている証拠じゃあ。懐かしいぞぉぉ」
「おや、アンタも漬けるのかい?」
「うむ、我は(悪魔)憑かせるのが得意じゃ!! 人間どもは悲鳴ばかり上げていたぞ」
「なんと! (嬉しい)悲鳴を上げるだなんて……アンタ、達人かい!?」
何が起きたのか? 突如、魔王とババアのコラボが開催されてしまった。
悪魔召喚の儀式と漬物語りが誤って合致してしまっている。
お互い、いつ食い違いに気づくのか? 見ているこちらがハラハラする。
「なぁ、シャル? ボロが出るまえに止めたほうが―――――」
協力を仰ごうと背後を振り向くとシャルが白目を向いてフラフラと階段を下りていた。
「あぶねぇー! しっかりしろ!」
咄嗟に抱きとめて呼び掛けるが、酷く弱っている。
「す……みませ……。息が…………」
どうやら、聖なる者にとってこの場所は穢れすぎているらしい。
瘴気に近しい空気が充満するここでは、呼吸をするのも辛そうだ。
「ほれ、これをつけて。シャルは外に避難していろ」
グラビアの能力でマスクを作ると、シャルに手渡した。
会釈をする俺たちに、シズエ婆さんは目を見開いたまま無言で立ち尽くしていた。
何か、気に障ることでもあったんだろうか?
「……zzzzz」
寝ていやがる! あろうことか、人が自己紹介している最中、このババアは居眠りこいてやがる。
気にして損した、今のうちに庭を出ていこう。
「見て下さい、これがグランタブローの能力です。対象に一時的な幸運の加護を与える魔法なのですよ! どうです、効果テキメンでしょう!」
「んな……卵が先か、ニワトリが先か、みたいな話をされてもな…………」
安らかに眠る婆さんを眺めながら、恍惚とした表情を見せるシャルターナ。
聖女である彼女の神聖なモノに対する支持は凄まじい。
疑うことなく、神の恩寵だと感激している。
確かに、婆さんに見つかっても何のお咎めも受けていないのはラッキーだが……。
それが、俺の運勢だと定義づけるファクターはどこにも存在しない。
シャルターナにとって、答え合わせなど些末なことなのだろう。
奇跡という果実が自分の周囲に転がっていることを感じ取れれば、それで満足なわけだ。
確かな理屈などではなく、曖昧でも結果が勝る。
信仰心とは、そういう盲目的な部分を孕んでいる。
だからこそ慈悲でありながらも、厳格なのだろう。
「旅のお方、どこへ行くつもりか?」
「ふわっあ!」寝ていたはずのババアが再起動していた。
今度は何故か? 寝起きのコブラツイストを俺にかけてきた。
これもう、スキンシップではなく単なるセクハラではないのか?
人に疑惑をかけさせながら、女将シズエは耳元で囁く。
「その光輝く、下半身は太陽の勇者の証」だと……。
太陽……何かの隠語なのか? 真っ先にそう思い浮かべる俺の心は不浄なのだろうか?
気づけば、独りで下ネタしりとりをしている時がある。
まぁ、それが思春期の男子なわけですから~ノープロブレムよ。
「ついて来なさい。勇者、一向に渡さなければならないモノがある」
タイミングやフラグを無視して突如、シズエ婆さんは使命感を帯び始めた。
使命感とは元から在る感情のはずなのだが、婆さんの場合は違う。
まるで、何かに取憑かれたように不自然な行動を取り始めている。
これこそ、タツミタクロー? の力……! よく分かんねぇーけど、神がかっていなければ説明がつかない。
「池? どうなさるおつもりで?」
「まぁ、黙って見ていな。そぉおおお―――――れぇぇぇえええ――――いいぃぃぃぃ!」
シズエ婆さんは池のそばにある岩の上に飛び乗った。
俺と同じくシャルも老婆の奇行についてゆけず、不可解そうな面持ちを浮かべていた。
ガシャン! とそばで大きな音が鳴り響いた。
婆さんの乗った岩が地面に沈んでゆく。同時に、池が中心部から真っ二つに裂け開いてゆく。
なんと、池の下から地下へと続く階段が出現した。
これもまた、匠がなせるリフォーム技だというのか……
「おおお、おおおおぅうう!! なんじゃ! 何じゃぁぁあ! 我のために秘密の神殿でも建てておったのか!?」
魔王様は盛大なカン違いのもと先陣をきって婆さんの後をついてゆく。
「うんわっ! クサッ!!」
「何ですか!? この絶望的な悪臭は……」
たぶん、グリフィン〇ールでもここはパスすると思う。地下から妙に酸っぱい臭いがする。
慌てて鼻を塞ぐ俺とシャルを見ながら、魔王とババアがほくそ笑んでいる。
コイツらに常人の嗅覚は備わっていない。
スメラーと呼ばれた俺には分かる。コイツは発酵に失敗した時のヤバい奴だぁ!!
「主たちは軟弱よのう~」
「そういう、お前は平気なのかよ? ササブリ」
「無論じゃ! この邪悪な臭いは定期的な儀式が執り行われている証拠じゃあ。懐かしいぞぉぉ」
「おや、アンタも漬けるのかい?」
「うむ、我は(悪魔)憑かせるのが得意じゃ!! 人間どもは悲鳴ばかり上げていたぞ」
「なんと! (嬉しい)悲鳴を上げるだなんて……アンタ、達人かい!?」
何が起きたのか? 突如、魔王とババアのコラボが開催されてしまった。
悪魔召喚の儀式と漬物語りが誤って合致してしまっている。
お互い、いつ食い違いに気づくのか? 見ているこちらがハラハラする。
「なぁ、シャル? ボロが出るまえに止めたほうが―――――」
協力を仰ごうと背後を振り向くとシャルが白目を向いてフラフラと階段を下りていた。
「あぶねぇー! しっかりしろ!」
咄嗟に抱きとめて呼び掛けるが、酷く弱っている。
「す……みませ……。息が…………」
どうやら、聖なる者にとってこの場所は穢れすぎているらしい。
瘴気に近しい空気が充満するここでは、呼吸をするのも辛そうだ。
「ほれ、これをつけて。シャルは外に避難していろ」
グラビアの能力でマスクを作ると、シャルに手渡した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~
きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。
しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。
地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。
晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる