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全てを知る者
99話 背徳は蜜の味
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「なぜなぜ、WHY? スキルブックではなく徒歩だと……」
「ふっふっふぅー……我とて日々進化しておる! いつまでも、主のワキ臭い本の中なんぞにいられるかぁ!!」
「おいおい、スキルブックはマインドパワーだぞ。物質としてあり続けるのは、使用中のみなんですぅぅぅ~」
「甘い! 甘すぎるぞ、マイトよ!! そんなんだから常時、非モテの乾き物になるのじゃ」
くっ……コイツ、人のペインポイントを的確に狙ってくれるじゃないの。
何が甘くて、乾物だが知らんが、今の俺は置物だ! その辺りは未成年の主張でがっしりカヴァーしないとな。
そもそも、何なんだ? そのウルトラクイズ帰りの格好は……。
馬鹿デカいサングラスにアロハワンピ&ピンヒールのサンダルフォォン、極めつけは造花のレイとはな。
そこは魔王らしく、シャレコウベでも首からぶら下げていろよ。
これぞ、本場のオシャレコーベ! JKの間で流行らなくともJAなら拾ってくれるはずだ。
材料なら、わりと近くにあるだろうし。
「農家のオジサン、ありがとう!」
「そそそ、それにして……プププッ……むごいありさ、プッ。すみません、少しクールダプッします、クスクススッ」
両肩を震わせながら、シャルが再会三十秒で離脱した。
伝統工芸品にたいして、まったく失礼な女だ。
俺だって好きでこんなこと恰好をしているのではない。
純粋な悪の心を持った少女たちの願いを細やかに叶えてやっただけだ。
まぁ、命あっての物種ですもん。生きたるためには恥を捨てる覚悟が必要なのさ。
「臭いな……マイトよ。お主、エクスマスを使役したな」
「クリスマスか! トナカイを羽交い締めにしてサンタクロースに火をつける魔王なんてヤバすぎるだろうが!!」
「使ったのかと聞いておる!」
両腕を組み仁王立ちするササブリ。
ご機嫌ななめで、ごきげんようとお嬢様並みの回避スキルを身につけておくべきだった。
まったく、他の魔王に手を貸してもらっただけでジェラルなんて、魔王のくせに可愛いところがあるじゃないか!
魅力のステータスがカンストしている、君の主を許してくれたまえ~。
「はあ……上りしろのない主の魅力なんぞ、どうでもよいが未契約の魔王に協力を求めると代償が高くつくぞ」
「はぁん!? そんなの初耳だし、聞いてないよぉおお―――!!」
「魂の一割ぐらい取られるかもしれんな……」
漆黒のオーラを帯びた魔王の言葉は、正確無慈悲だと悟った。
エクササイズの奴め、俺に忠誠を誓うふりをして、命を刈り取ろうとしていたのか?
「答えろ!? エクササイズ!! お前の好意は代価を必要とするものなのかぁあ!」
「呼びかけても無駄じゃ。我の方からも威嚇してみたが、あ奴め……力を使い過ぎて眠っておるわ」
「入れ替わりの力はそこまで燃費が悪いのか……?」
「いいんや。前回、我を乗っ取ろうした時、我が奴の魔力の大半を奪ってやったからな」
うあっ……お前のせいかよ。道理で魔王なのに楽勝だったわけだ。
「なんじゃ、その目は? 我に何か言いたげだな、おい!」
「この鬼畜魔王め、お前のせいで代償が弁償になりそうだぜ」
「ふふっ、であろうな! 魔王たる者、優しさなどという温い情は持ち合わせておらんからなぁあ!!」
皮肉に言ったつもりが、かえって喜ばせてしまった。
人と魔族の価値観の違いがややこしい。
ササブリは強くて格好いい魔王を心がけているようだが、俺に使役されていることをどう思っているのだろうか?
もしかしたら、隙を狙って―――止めよう、こんなことを悩んでも妄想でしかない。
本当に想像するだけでゾッとしない話だ。
パンパンと両手を叩く音がした。
音で合図を送ったのはササブリだった。
すぐさま、池の方でうずくまっていたシャルターナが駆け寄ってくる。
「いいかがしました? 魔王様」
「シャルよ! 主の力で、マイトを救ってやるが良い」
「はい、でしたらアカシック・レコードの力でマイトさんごとエクスサイズを消し飛ばしてみせましょう!」
「いや、それやったら我も消えてしまうから……」
「はぁ? はぁ? ハァアアアアアアア――――!!」
ドギュンと放出音が響きそうになるほど、信じられない光景を目撃してしまった。
こともあろうに、神の御使いである聖女が魔王にかしづいていないか!?
魔王と一緒に談笑する聖女なんてありなのか……ゴッド。
まぁ、下僕というよりは近所の世話焼きお姉さん感を醸し出しているが。
あれだけ、シャルを嫌がっていたのに……俺が知らないうちに仲良くなってんじゃん。
つくづく、女子とは不思議な存在だ。
「ふっふっふぅー……我とて日々進化しておる! いつまでも、主のワキ臭い本の中なんぞにいられるかぁ!!」
「おいおい、スキルブックはマインドパワーだぞ。物質としてあり続けるのは、使用中のみなんですぅぅぅ~」
「甘い! 甘すぎるぞ、マイトよ!! そんなんだから常時、非モテの乾き物になるのじゃ」
くっ……コイツ、人のペインポイントを的確に狙ってくれるじゃないの。
何が甘くて、乾物だが知らんが、今の俺は置物だ! その辺りは未成年の主張でがっしりカヴァーしないとな。
そもそも、何なんだ? そのウルトラクイズ帰りの格好は……。
馬鹿デカいサングラスにアロハワンピ&ピンヒールのサンダルフォォン、極めつけは造花のレイとはな。
そこは魔王らしく、シャレコウベでも首からぶら下げていろよ。
これぞ、本場のオシャレコーベ! JKの間で流行らなくともJAなら拾ってくれるはずだ。
材料なら、わりと近くにあるだろうし。
「農家のオジサン、ありがとう!」
「そそそ、それにして……プププッ……むごいありさ、プッ。すみません、少しクールダプッします、クスクススッ」
両肩を震わせながら、シャルが再会三十秒で離脱した。
伝統工芸品にたいして、まったく失礼な女だ。
俺だって好きでこんなこと恰好をしているのではない。
純粋な悪の心を持った少女たちの願いを細やかに叶えてやっただけだ。
まぁ、命あっての物種ですもん。生きたるためには恥を捨てる覚悟が必要なのさ。
「臭いな……マイトよ。お主、エクスマスを使役したな」
「クリスマスか! トナカイを羽交い締めにしてサンタクロースに火をつける魔王なんてヤバすぎるだろうが!!」
「使ったのかと聞いておる!」
両腕を組み仁王立ちするササブリ。
ご機嫌ななめで、ごきげんようとお嬢様並みの回避スキルを身につけておくべきだった。
まったく、他の魔王に手を貸してもらっただけでジェラルなんて、魔王のくせに可愛いところがあるじゃないか!
魅力のステータスがカンストしている、君の主を許してくれたまえ~。
「はあ……上りしろのない主の魅力なんぞ、どうでもよいが未契約の魔王に協力を求めると代償が高くつくぞ」
「はぁん!? そんなの初耳だし、聞いてないよぉおお―――!!」
「魂の一割ぐらい取られるかもしれんな……」
漆黒のオーラを帯びた魔王の言葉は、正確無慈悲だと悟った。
エクササイズの奴め、俺に忠誠を誓うふりをして、命を刈り取ろうとしていたのか?
「答えろ!? エクササイズ!! お前の好意は代価を必要とするものなのかぁあ!」
「呼びかけても無駄じゃ。我の方からも威嚇してみたが、あ奴め……力を使い過ぎて眠っておるわ」
「入れ替わりの力はそこまで燃費が悪いのか……?」
「いいんや。前回、我を乗っ取ろうした時、我が奴の魔力の大半を奪ってやったからな」
うあっ……お前のせいかよ。道理で魔王なのに楽勝だったわけだ。
「なんじゃ、その目は? 我に何か言いたげだな、おい!」
「この鬼畜魔王め、お前のせいで代償が弁償になりそうだぜ」
「ふふっ、であろうな! 魔王たる者、優しさなどという温い情は持ち合わせておらんからなぁあ!!」
皮肉に言ったつもりが、かえって喜ばせてしまった。
人と魔族の価値観の違いがややこしい。
ササブリは強くて格好いい魔王を心がけているようだが、俺に使役されていることをどう思っているのだろうか?
もしかしたら、隙を狙って―――止めよう、こんなことを悩んでも妄想でしかない。
本当に想像するだけでゾッとしない話だ。
パンパンと両手を叩く音がした。
音で合図を送ったのはササブリだった。
すぐさま、池の方でうずくまっていたシャルターナが駆け寄ってくる。
「いいかがしました? 魔王様」
「シャルよ! 主の力で、マイトを救ってやるが良い」
「はい、でしたらアカシック・レコードの力でマイトさんごとエクスサイズを消し飛ばしてみせましょう!」
「いや、それやったら我も消えてしまうから……」
「はぁ? はぁ? ハァアアアアアアア――――!!」
ドギュンと放出音が響きそうになるほど、信じられない光景を目撃してしまった。
こともあろうに、神の御使いである聖女が魔王にかしづいていないか!?
魔王と一緒に談笑する聖女なんてありなのか……ゴッド。
まぁ、下僕というよりは近所の世話焼きお姉さん感を醸し出しているが。
あれだけ、シャルを嫌がっていたのに……俺が知らないうちに仲良くなってんじゃん。
つくづく、女子とは不思議な存在だ。
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