98 / 122
全てを知る者
98話 チャーミング、お菓子工房
しおりを挟む
恒例のごとく逃げ出したサトランに目もくれずキッズたちは、ダルマイトをお持ち帰りした。
言わずもがな、これで安心というわけにもいかない。
このまま、進めば目玉に目玉を書かれてしまう。
運良く、イルカに乗ったオッサンが助けて来る見込みもないし、ウナギに乗っていたオッサンは火葬されてしまった。
依然、ピンチなのは変わらない。
こんな時こそ、魔王の出番だろう!
といつもなら……張り切って行けるのだが、やはり後ろめたさが邪魔をする。
コチラの都合で強制解除してしまった以上、合わせる顔がない。
魔王でありながらも少女の姿をしたササブリにどう言葉をかけていいのか? 分からないのだ。
こんなんで、スキルブックを使えないとは、なんとも情けない。
「ただいまぁぁあああ」
金髪頭が台車ごと、閉ざされた門へと突っ込んでいった。
豪快どころか、頭のネジがどうかしている。
門は物をぶつける為にあるんじゃない。そこんとこヨロシク!
破砕された門を突破したおかげで台車が逝った。
代わりにガスボンベ用の運搬車で俺は運ばれることとなった。
直立できたおかげで、辺りの様子がよく見えるようになったのは僥倖だ。
眼球だけを動かし、確かめるとそこに日本庭園が拡がっていた。
古き良き日本の情景、ドイツ生まれの俺にとってはよく分からないけどカイザー級の気品を感じる。
そこらへんの地面がナッツで埋まっていた。
海苔むした大岩から何とも言えない磯の香りがする。
その岩に縁どられた池には、たい焼きが泳いでいた。
池にかけられた板チョコは暑さに耐えられるのか、はなはだ疑問である。
敷地の奥でこじんまりしているト〇ポの家屋は、やっぱりスゲーとしか言いようがない。
軒先には漉庵と書かれた看板がかかげてある。
俺は見逃さなかった。いや……俺だから気づけた。
元祖キヨシバナナありますの文字に……。
キヨシのバナナ、それはフシダラが土産として持ってきた東〇バナナである。
あのサカシタ君も大絶賛! しているらしい。
誰なんだよ、サカシタ君って!?
不要な情報に躍らされながら、俺は店の敷居をまたいだ。
もっとも運搬されているので、不適切な表現かもしれない。
ガスボンベの気持ちが少し分かったような気がする。
運ばれることは、あんましいい気分ではない。
「おかえり、何だい? アンタたち、また粗大ゴミを拾ってきたのかい?」
「婆ちゃん、よく見てダルマだよ、ダルマ」
「しかも、等身大だよ」
お子たち二人が懸命になって俺の価値を説明しようとしてくれていた。
何故、そこまでダルマにこだわるのか? あずかり知らぬ所ではあるがババアの眼圧が凄まじい。
鼻幅がデカく眼鏡をしているパーティーグッズのような顔をしている。
最初は被り物かと見間違えたほど、作り物感がスゴイが地顔だった。
とにかく、バアアは疑り深い。二人して説得しても首を縦に振ろうとしない。
「ワシには、血塗られたツタンカーメンにしか見えないけど……しょうがないね。ウチにゃ入れられないが店先になら置いてもいいさ」
「ヤッタぁ――!!」
家族の微笑ましいワンシーンに立ち会い、ワタクシこと、ダルマイトは疎外感しか感じません。
何がやったーだ。外に置き去りだなんてカーネルオジと同格の身分じゃねぇ~?
製菓とフライドチキンで紅白的なモンでもおっぱじめるつもりかよ。
いい加減、ドライアイがヤバくなってきた。アイツらが俺のほうを向く度に、変顔をしなければならない。
倒れていけないと言いう事で、俺は柱に縛りつけられた。
ひょっとしたら、バアアに見抜かれているのではないのか? 疑たくなるほど、厳重に縛られてしまった。
やがて誰もいなくなり、夜が更ける。
ダンジョン内なのに、相変わらず妙なところで現実的な再現をしようとする。
まっ、星でもあるから、ある種の生存本能が働いているのかもしれない。
俺たちは星団船にとっては細菌のようなモンだ。
星団船にとっては、どれほど益があるのかしらんが、体内を巡るこの細菌を増やそうと、住みやすい環境を提供しているのかもしれない。
持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクな関係。
それは俺たちも一緒だ……
「何をやっとんじゃ主は……呼ばれて来てみれば呪詛の彫像みたいになっておるではないか! しかも縛れておる……よもや、新たなる変癖に目覚めたといいうのか……」
スキルブックを開いて、ずいぶんと長い時間が経った。
どういうわけか、ササブリは徒歩で俺のもとへやってきた。
その隣には満面の笑みを浮かべるシャルターナの姿もある。
全てを理解した時、俺はこのままダルマでもいいやと思うほど愕然としてしまった。
言わずもがな、これで安心というわけにもいかない。
このまま、進めば目玉に目玉を書かれてしまう。
運良く、イルカに乗ったオッサンが助けて来る見込みもないし、ウナギに乗っていたオッサンは火葬されてしまった。
依然、ピンチなのは変わらない。
こんな時こそ、魔王の出番だろう!
といつもなら……張り切って行けるのだが、やはり後ろめたさが邪魔をする。
コチラの都合で強制解除してしまった以上、合わせる顔がない。
魔王でありながらも少女の姿をしたササブリにどう言葉をかけていいのか? 分からないのだ。
こんなんで、スキルブックを使えないとは、なんとも情けない。
「ただいまぁぁあああ」
金髪頭が台車ごと、閉ざされた門へと突っ込んでいった。
豪快どころか、頭のネジがどうかしている。
門は物をぶつける為にあるんじゃない。そこんとこヨロシク!
破砕された門を突破したおかげで台車が逝った。
代わりにガスボンベ用の運搬車で俺は運ばれることとなった。
直立できたおかげで、辺りの様子がよく見えるようになったのは僥倖だ。
眼球だけを動かし、確かめるとそこに日本庭園が拡がっていた。
古き良き日本の情景、ドイツ生まれの俺にとってはよく分からないけどカイザー級の気品を感じる。
そこらへんの地面がナッツで埋まっていた。
海苔むした大岩から何とも言えない磯の香りがする。
その岩に縁どられた池には、たい焼きが泳いでいた。
池にかけられた板チョコは暑さに耐えられるのか、はなはだ疑問である。
敷地の奥でこじんまりしているト〇ポの家屋は、やっぱりスゲーとしか言いようがない。
軒先には漉庵と書かれた看板がかかげてある。
俺は見逃さなかった。いや……俺だから気づけた。
元祖キヨシバナナありますの文字に……。
キヨシのバナナ、それはフシダラが土産として持ってきた東〇バナナである。
あのサカシタ君も大絶賛! しているらしい。
誰なんだよ、サカシタ君って!?
不要な情報に躍らされながら、俺は店の敷居をまたいだ。
もっとも運搬されているので、不適切な表現かもしれない。
ガスボンベの気持ちが少し分かったような気がする。
運ばれることは、あんましいい気分ではない。
「おかえり、何だい? アンタたち、また粗大ゴミを拾ってきたのかい?」
「婆ちゃん、よく見てダルマだよ、ダルマ」
「しかも、等身大だよ」
お子たち二人が懸命になって俺の価値を説明しようとしてくれていた。
何故、そこまでダルマにこだわるのか? あずかり知らぬ所ではあるがババアの眼圧が凄まじい。
鼻幅がデカく眼鏡をしているパーティーグッズのような顔をしている。
最初は被り物かと見間違えたほど、作り物感がスゴイが地顔だった。
とにかく、バアアは疑り深い。二人して説得しても首を縦に振ろうとしない。
「ワシには、血塗られたツタンカーメンにしか見えないけど……しょうがないね。ウチにゃ入れられないが店先になら置いてもいいさ」
「ヤッタぁ――!!」
家族の微笑ましいワンシーンに立ち会い、ワタクシこと、ダルマイトは疎外感しか感じません。
何がやったーだ。外に置き去りだなんてカーネルオジと同格の身分じゃねぇ~?
製菓とフライドチキンで紅白的なモンでもおっぱじめるつもりかよ。
いい加減、ドライアイがヤバくなってきた。アイツらが俺のほうを向く度に、変顔をしなければならない。
倒れていけないと言いう事で、俺は柱に縛りつけられた。
ひょっとしたら、バアアに見抜かれているのではないのか? 疑たくなるほど、厳重に縛られてしまった。
やがて誰もいなくなり、夜が更ける。
ダンジョン内なのに、相変わらず妙なところで現実的な再現をしようとする。
まっ、星でもあるから、ある種の生存本能が働いているのかもしれない。
俺たちは星団船にとっては細菌のようなモンだ。
星団船にとっては、どれほど益があるのかしらんが、体内を巡るこの細菌を増やそうと、住みやすい環境を提供しているのかもしれない。
持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクな関係。
それは俺たちも一緒だ……
「何をやっとんじゃ主は……呼ばれて来てみれば呪詛の彫像みたいになっておるではないか! しかも縛れておる……よもや、新たなる変癖に目覚めたといいうのか……」
スキルブックを開いて、ずいぶんと長い時間が経った。
どういうわけか、ササブリは徒歩で俺のもとへやってきた。
その隣には満面の笑みを浮かべるシャルターナの姿もある。
全てを理解した時、俺はこのままダルマでもいいやと思うほど愕然としてしまった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します


調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる