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全てを知る者
98話 チャーミング、お菓子工房
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恒例のごとく逃げ出したサトランに目もくれずキッズたちは、ダルマイトをお持ち帰りした。
言わずもがな、これで安心というわけにもいかない。
このまま、進めば目玉に目玉を書かれてしまう。
運良く、イルカに乗ったオッサンが助けて来る見込みもないし、ウナギに乗っていたオッサンは火葬されてしまった。
依然、ピンチなのは変わらない。
こんな時こそ、魔王の出番だろう!
といつもなら……張り切って行けるのだが、やはり後ろめたさが邪魔をする。
コチラの都合で強制解除してしまった以上、合わせる顔がない。
魔王でありながらも少女の姿をしたササブリにどう言葉をかけていいのか? 分からないのだ。
こんなんで、スキルブックを使えないとは、なんとも情けない。
「ただいまぁぁあああ」
金髪頭が台車ごと、閉ざされた門へと突っ込んでいった。
豪快どころか、頭のネジがどうかしている。
門は物をぶつける為にあるんじゃない。そこんとこヨロシク!
破砕された門を突破したおかげで台車が逝った。
代わりにガスボンベ用の運搬車で俺は運ばれることとなった。
直立できたおかげで、辺りの様子がよく見えるようになったのは僥倖だ。
眼球だけを動かし、確かめるとそこに日本庭園が拡がっていた。
古き良き日本の情景、ドイツ生まれの俺にとってはよく分からないけどカイザー級の気品を感じる。
そこらへんの地面がナッツで埋まっていた。
海苔むした大岩から何とも言えない磯の香りがする。
その岩に縁どられた池には、たい焼きが泳いでいた。
池にかけられた板チョコは暑さに耐えられるのか、はなはだ疑問である。
敷地の奥でこじんまりしているト〇ポの家屋は、やっぱりスゲーとしか言いようがない。
軒先には漉庵と書かれた看板がかかげてある。
俺は見逃さなかった。いや……俺だから気づけた。
元祖キヨシバナナありますの文字に……。
キヨシのバナナ、それはフシダラが土産として持ってきた東〇バナナである。
あのサカシタ君も大絶賛! しているらしい。
誰なんだよ、サカシタ君って!?
不要な情報に躍らされながら、俺は店の敷居をまたいだ。
もっとも運搬されているので、不適切な表現かもしれない。
ガスボンベの気持ちが少し分かったような気がする。
運ばれることは、あんましいい気分ではない。
「おかえり、何だい? アンタたち、また粗大ゴミを拾ってきたのかい?」
「婆ちゃん、よく見てダルマだよ、ダルマ」
「しかも、等身大だよ」
お子たち二人が懸命になって俺の価値を説明しようとしてくれていた。
何故、そこまでダルマにこだわるのか? あずかり知らぬ所ではあるがババアの眼圧が凄まじい。
鼻幅がデカく眼鏡をしているパーティーグッズのような顔をしている。
最初は被り物かと見間違えたほど、作り物感がスゴイが地顔だった。
とにかく、バアアは疑り深い。二人して説得しても首を縦に振ろうとしない。
「ワシには、血塗られたツタンカーメンにしか見えないけど……しょうがないね。ウチにゃ入れられないが店先になら置いてもいいさ」
「ヤッタぁ――!!」
家族の微笑ましいワンシーンに立ち会い、ワタクシこと、ダルマイトは疎外感しか感じません。
何がやったーだ。外に置き去りだなんてカーネルオジと同格の身分じゃねぇ~?
製菓とフライドチキンで紅白的なモンでもおっぱじめるつもりかよ。
いい加減、ドライアイがヤバくなってきた。アイツらが俺のほうを向く度に、変顔をしなければならない。
倒れていけないと言いう事で、俺は柱に縛りつけられた。
ひょっとしたら、バアアに見抜かれているのではないのか? 疑たくなるほど、厳重に縛られてしまった。
やがて誰もいなくなり、夜が更ける。
ダンジョン内なのに、相変わらず妙なところで現実的な再現をしようとする。
まっ、星でもあるから、ある種の生存本能が働いているのかもしれない。
俺たちは星団船にとっては細菌のようなモンだ。
星団船にとっては、どれほど益があるのかしらんが、体内を巡るこの細菌を増やそうと、住みやすい環境を提供しているのかもしれない。
持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクな関係。
それは俺たちも一緒だ……
「何をやっとんじゃ主は……呼ばれて来てみれば呪詛の彫像みたいになっておるではないか! しかも縛れておる……よもや、新たなる変癖に目覚めたといいうのか……」
スキルブックを開いて、ずいぶんと長い時間が経った。
どういうわけか、ササブリは徒歩で俺のもとへやってきた。
その隣には満面の笑みを浮かべるシャルターナの姿もある。
全てを理解した時、俺はこのままダルマでもいいやと思うほど愕然としてしまった。
言わずもがな、これで安心というわけにもいかない。
このまま、進めば目玉に目玉を書かれてしまう。
運良く、イルカに乗ったオッサンが助けて来る見込みもないし、ウナギに乗っていたオッサンは火葬されてしまった。
依然、ピンチなのは変わらない。
こんな時こそ、魔王の出番だろう!
といつもなら……張り切って行けるのだが、やはり後ろめたさが邪魔をする。
コチラの都合で強制解除してしまった以上、合わせる顔がない。
魔王でありながらも少女の姿をしたササブリにどう言葉をかけていいのか? 分からないのだ。
こんなんで、スキルブックを使えないとは、なんとも情けない。
「ただいまぁぁあああ」
金髪頭が台車ごと、閉ざされた門へと突っ込んでいった。
豪快どころか、頭のネジがどうかしている。
門は物をぶつける為にあるんじゃない。そこんとこヨロシク!
破砕された門を突破したおかげで台車が逝った。
代わりにガスボンベ用の運搬車で俺は運ばれることとなった。
直立できたおかげで、辺りの様子がよく見えるようになったのは僥倖だ。
眼球だけを動かし、確かめるとそこに日本庭園が拡がっていた。
古き良き日本の情景、ドイツ生まれの俺にとってはよく分からないけどカイザー級の気品を感じる。
そこらへんの地面がナッツで埋まっていた。
海苔むした大岩から何とも言えない磯の香りがする。
その岩に縁どられた池には、たい焼きが泳いでいた。
池にかけられた板チョコは暑さに耐えられるのか、はなはだ疑問である。
敷地の奥でこじんまりしているト〇ポの家屋は、やっぱりスゲーとしか言いようがない。
軒先には漉庵と書かれた看板がかかげてある。
俺は見逃さなかった。いや……俺だから気づけた。
元祖キヨシバナナありますの文字に……。
キヨシのバナナ、それはフシダラが土産として持ってきた東〇バナナである。
あのサカシタ君も大絶賛! しているらしい。
誰なんだよ、サカシタ君って!?
不要な情報に躍らされながら、俺は店の敷居をまたいだ。
もっとも運搬されているので、不適切な表現かもしれない。
ガスボンベの気持ちが少し分かったような気がする。
運ばれることは、あんましいい気分ではない。
「おかえり、何だい? アンタたち、また粗大ゴミを拾ってきたのかい?」
「婆ちゃん、よく見てダルマだよ、ダルマ」
「しかも、等身大だよ」
お子たち二人が懸命になって俺の価値を説明しようとしてくれていた。
何故、そこまでダルマにこだわるのか? あずかり知らぬ所ではあるがババアの眼圧が凄まじい。
鼻幅がデカく眼鏡をしているパーティーグッズのような顔をしている。
最初は被り物かと見間違えたほど、作り物感がスゴイが地顔だった。
とにかく、バアアは疑り深い。二人して説得しても首を縦に振ろうとしない。
「ワシには、血塗られたツタンカーメンにしか見えないけど……しょうがないね。ウチにゃ入れられないが店先になら置いてもいいさ」
「ヤッタぁ――!!」
家族の微笑ましいワンシーンに立ち会い、ワタクシこと、ダルマイトは疎外感しか感じません。
何がやったーだ。外に置き去りだなんてカーネルオジと同格の身分じゃねぇ~?
製菓とフライドチキンで紅白的なモンでもおっぱじめるつもりかよ。
いい加減、ドライアイがヤバくなってきた。アイツらが俺のほうを向く度に、変顔をしなければならない。
倒れていけないと言いう事で、俺は柱に縛りつけられた。
ひょっとしたら、バアアに見抜かれているのではないのか? 疑たくなるほど、厳重に縛られてしまった。
やがて誰もいなくなり、夜が更ける。
ダンジョン内なのに、相変わらず妙なところで現実的な再現をしようとする。
まっ、星でもあるから、ある種の生存本能が働いているのかもしれない。
俺たちは星団船にとっては細菌のようなモンだ。
星団船にとっては、どれほど益があるのかしらんが、体内を巡るこの細菌を増やそうと、住みやすい環境を提供しているのかもしれない。
持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクな関係。
それは俺たちも一緒だ……
「何をやっとんじゃ主は……呼ばれて来てみれば呪詛の彫像みたいになっておるではないか! しかも縛れておる……よもや、新たなる変癖に目覚めたといいうのか……」
スキルブックを開いて、ずいぶんと長い時間が経った。
どういうわけか、ササブリは徒歩で俺のもとへやってきた。
その隣には満面の笑みを浮かべるシャルターナの姿もある。
全てを理解した時、俺はこのままダルマでもいいやと思うほど愕然としてしまった。
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