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ライバルとの決着

95話 戦場の狼

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「あのぅ……ちょっ、合体した時の名前――――」

 しどろもどろになる俺は半分、アンが顔を出だしていたが、まだ分け与える時期ではないと抑え込んだ。
 プロのシーカーは一般人のようななど決してださない。
 いかなる非常時でも冷静に【ニギリ】と【チラシ】を使い分けられる。
 これぞ、【ろくでなし】の精神。
 プリキュアで例えるとマインドハピネス状態だ???

 思えば寿司太郎に寿司郎。
 なんで、寿司関係の店舗はボーイの名前をつけたがるんだ?
 ここままだと、ツイフェミたちによってかっこうの餌食にされるんじゃないのか?
 ここは女子バージョンも必要だろう! 素子じゃ駄目なんか? 素子。

「どうしたぁ!? 早く合体を完了させるんだ、ファルコン!!」

 イケない、イケない、つい寿司ネタで話題沸騰してしまった。
 確かに、ロボットの名前は公表されていない……それは詰まる所、心赴くままに名づければいいというボーナスステージだ。
 ならば、然るべき所に、正しく納めるだけだ。

「即身合体!! アトムボウイ!!!」

『認証コードがチガイマス』不正解アラート共に機械音声による全面否定。
 コイツは、相当、キテますわ。解けるモノなら解いてみろと挑発されているのも同然だ。
 いいでしょう、本気って奴をお見せしますよ。

 イメージの中で俺の眼球に炎が宿る。
 こうなれば、カッパやクラ、ハマの出番だ。
 日本、全国のフランチャイズの寿司屋の力を結集してコードを解除してやらぁ!!

「早くここから離脱しないと、て、敵の頭上に落下してしまうっす!」

「慌てるな、フシダラ! 恐怖で心を乱していては勝つべき戦いも勝てなくなるぞ」

「マイトさん……深いっす。拙者は、そこまで至らなかったっす」

 なぁ~んて、粋がり小坊主に感心されている最中、俺の両膝が折り畳み椅子のように開いたり、閉じたりしている。
 これでは勝利どころか、次にも進めない。
 何としてでも、コードをみつけださなければ……。
 眼下に接近しているアダムスキー型の円盤、おそらく巨大兵器とはコイツのことを指しているのだろう。
 悠々を空を泳いでいる姿は、カメムシを彷彿ほうふつさせてくる。

 円盤はご丁寧に、後部からアダムスキー粒子をまき散らしている。
 フリカケみたいにカラフルな粉は、電波障害を引き起こすわけでもなく特に害はないように思われる。

「マズイぞ! 敵の村井は粉塵爆発だ!」

「ジョージさん、落ち着いて村井じゃなく、って言いたいんっすよね?」

 ジョージメンバーが激しく動揺しているのが分かった。
 粉を見れば、すぐに粉塵爆発を連想してしまう辺り、なかなか業深い。
 間違いなく、奴は異能バトルで義務教育を済ませたクチだ。
 大人の教科書で知識を得た俺には、とうてい思いつかない発想だ。

 ここで爆発したら、当然カメムシも爆破する。
 敵はそこまで計算に入れていないのか……つくづく恐ろしい浅はかさだ。

「マイトォッォオオオ! もう時間がない。名前なんぞ、どうでもいいぃぃ!! 強制合体だあぁぁ―――――」

 後がないジョージが、ついに壊れた。
 ハイドロプレシャー、高濃度水素、20、000mpの美容法が成功した時のような熱気放ち、我々との温度差を確たるものへと昇華してきた。

「そもそも、名前を言わなくてもいいのなら、最初からそうしておけば良かったのに……」

「分かってないなぁー、マイトさん。名前がないロボットなんて惹かれないすよ。やっぱ、ロボットはカッコイイ名前があっ――――――――――――――」

 閃光と共にフシダラからの音声が途絶えた。
 見るとシャークとランクルがあらぬカタチで、交わり合いながら火炎を噴き出している。
 失敗だった…………乱れた勢いでの強制合体により、ファルコン以外の二機が大破し、落下してゆく。

「フシダラァアアア――――――!! ジョージィィィ――――――――」

 火の玉と化した二人が最期の足掻きをみせた。
 カメムシに体当たりをかまし、爆発霧散したのだ。
 もし、このまま合体に成功していたら俺はSF路線を歩んでいたかもしれない。
 SМならともかく、そこに踏み込んでしまうのはテスト勉強してこなかったと言いながらも、好成績を取る奴と一緒だ。
 予防線を張りながらも、自慢にいたる双極エフェクト。
 そんな、どっちつかずなヤツを羨望の眼差しで見る自分を思い出してしまう。

 ハリボテのごとく容易く崩れてゆくカメムシが一気に燃え広がり、燃やせないゴミへと退化してゆく。
 こんなはず、じゃなかった……必殺剣や忖度なしビームで葬り去るべき相手だったのに。

「ど、どうしたコントロールが利かないぞ!?」

 残ったファルコンも突如、機能を停止してしまった。
 浮力を失った機体は、遥か上空からキリモミ回転しながら地上へと叩きつけられる。

「ガアアアッアァア……!!!」

 胴体着地を余儀なくさせられた俺は、九死に一生を得て機体から脱出した。
 理由も分からず、立ち尽くす俺の前で炎の奥から人影がチラついて見えてきた。

「相変わらず無様だな、ゴミムシめ。お前は後先考えず、突っ込んでくるから策に陥れやすくて助かるよ、マイト」

「サトラン……」
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