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ライバルとの決着

91話 衝撃はマッハ

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 竹刀を差し出し、ジョージは二ヤリと口元を歪めている。
 まさかと思うが持っているだけで、女子にワーキャーされるという、デキモテのグッズか!

「ほう……察しが早いな」
 俺の表情を読み取ったのか? オーナーは伊達メガネをクイと人差し指で持ち上げた。
 その行動に何か意味があるのかと追及しても、答えは必ず返ってこない。
 行ったきりのブーメラン。きっと、どこかで突き刺さってしまったのだろう。
 一方的すぎて『おまいう』すらできない。
 すでに『まいう』と書いてしまったから、ことさらダブルフェイスだ。
 意味が分からない? 大丈夫、分からないのは皆、一緒だ。

 余談だが、派手な男のことを伊達男と呼ぶのは、伊達政宗の軍団から由来している。
 政宗は出陣の際、部下たちに人目を惹くような派手な装いをさせていた。
 そこから転じてオサレな男はそう呼ばれるようになった。
 また、都合が悪くなれば、白装束に等身大の十字架を背負っていたという。

 実際は、寝起きで抱き枕を抱えていただけだろう……現実なんて、他愛もないもんよ。

「というわけで、ノーマネーでフィニッシュです」

「え? え? ええっ!! お前、やべー! マジでマスターピース!! 話が太陽系レベルで脱線してんじゃん」

「ふっ、アナグラムですよ。ジョージさん」

「んな、わけねぇだろう!」

 俺の嘘はコンマ数秒で見抜かれてしまった。
 とにかく、竹刀なんて売りつけて貰っても粗大ゴミが増えるだけだ。
 はっ? 誰かさんはダンジョンで捨てていたって? 世の中、風紀を乱す悪い奴がいたもんだな。
 見てくれ。俺なんか、愛剣をリサイクルしてんだぞ。

 当然ながら、このセカイにエコなどない。いうならば、これは俺のエロロジーだ。
 捨ててあったエロ本を家に持ち帰るものそうだし、動画で青春をシェアするのもエロロジ―活動の一環だ。
 エコがリデュース・リユース・リサイクルの3Rなら、こっちは18Rもあるんだぞ!!
 数じゃ、こちらが圧倒している。
 己が私利私欲の為に、無駄遣いをなくす。これこそ、エロロジーの神髄なり!

 環境保護という自己満より、生理的欲求のほうが勝るに決まっている。
 そもそも保護されたどうかなんて環境が決めることだろう。
 人間が独断専行で保護したと訴えても、それは保護ではない。
 ただの慈善活動だ。

「ほら、見てろよ! この竹刀は振るとマッハで動くんだぜ」

 何か、まだ竹刀のくだりが続いていた。
 要らないと、コチラの意思を明確に伝えたのにいい加減にしっこい。
 何が、振ってズバババアッババ!!! だ。
 ちょっと、欲しくなってきたやんか。

「ヒュ―――! ようやく、食いついてきたじゃなぁーい。このように、マッハバンブーブレイドは目にも止まらぬ速度で素振りし続けることか――――ああああああ!! バキッっていったああああ!」

 冷静なって考えれば分かることだった……。
 竹でできたモノで音速の壁を破ろうとすれば、折れて燃え尽きるに決まっている。
 そもそも強度的に問題があったのだ。
 俺は、最初から竹刀の欠点を見抜いていた……だから、不要だと宣言した。

「自分、嘘つきしょっ! これがマッハ属性だと気づいていれば断る理由はないだろう?」

「んんん? いちいち、読心術を使いやがって……耐久性ないから要らないって言っているだろう!?」

 要るか、要らないかで揉め合う俺たち、すでに破損した竹刀が不要ないざこざを招いていた。

「とりま、壊れたから半値で買い取ってくれ」

「壊したのは、アンタだろうよ!! 自腹でどうにかしろよ」

 店内の客が誰一人も居ないを良いことに、しばらくチャラ男と責任の擦り付けあいをしていると、この店のウンコが駆けつけてきた。

「ジョージさん、そろそろ彼を認めて上げてくだせぇ!!」

「お、お前はフシダラじゃん!」

 どんなウンコかと思いきや、店の奥から出現したのは依頼主である坊さんだった。
 ここに入れるということは、コイツも改変者としての資質を持っているということで間違いない。

「どうも、先日は。すでに里に到着していたですねぇ」

「えっ―――と、あんまりここに居ないほうがいいぞ。馬鹿が移るから、寺に戻ったほうがいい。そうだ! これから寺に案内してくれ」

「あのぉ~、寺を連呼しておりますが拙者は僧侶ではねぇです。ここで働いているホストですわぁ~。なんかぁ、誤解を招いてスンマセン」

 ガッデム! このセカイはいつから、こうも歪なのだろうかっ……例え、僧侶でなくとも心は住職だと、なぜ言い切れないのか?
 まったくもって嘆かわしいよ、俺は。
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