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ライバルとの決着

86話 GAKKEN

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 婆ゾーン、略してババゾンは向こうの世界で流行った。
 ババアによる宅配サービスだ。
 もろん、主張とかやましいモノではない……一部、例外もあったのかもしれないが。
 とにかく、ネット社会においてオバちゃんの鋭敏さは欠かせなかった。
 額に汗して注文した商品をチャリで運んでくる懸命な姿は、ウババイーツに匹敵するほど、人々から絶賛され感動と支持を得た。
 世はまさに大ババア時代が到来していた。

 俺もよく光高速ババアを利用したっけ……などと懐かしさを覚えながら、サボテンと向かい合う。
 この草いわく、理由があって此処にやってきたとのこと、ただでさえサトランへの対処を決めかねているのに、仕事ばかりを増やしてくる。

 力のある奴はいつもそうだ。現場の苦労もしらずに面倒事ばかり押しつけてくる。

「マイト君の心中は察するよ。ワタシもそのためにやって来たのだよ」

 本気でそう思っているのか胡散臭ぇ。
 にしても……サボテンが、ずっと喋り続けているのに、キュピ公とフシダラはやけに静かだ。
 俺なら、騒ぎまくった勢いで放屁しているところだが……ん、んん?

「気づいたようだね」サボテンが薄っすらと笑ったような気がした。
 周囲を見てようやく、異常を知った。
 キュピとフシダラは瞬き一つせずに制止している。
 動画で一時停止した時のように、呼吸すら止まっている感じだ。

「時を止める能力だとぉぉおお!!! 最強じゃないかぁぁ――――」

 このサボテンの能力が欲しい。
 邪な欲望が芽生えた瞬間だった。
 時間停止、それはムフフな映像ではよくある事象だ。
 偶然、手に入れたその力をもって卑猥の限りを尽くす最低で最高な主人公。
 もし、異性に対して好き放題できる力を自分が持ったらどう動くのか?
 時の支配者は、世界を手にしたのも同然だ。強者に迫られ、わざわざ半分に分割する心配もない。
 真の魔王への道がそこに開けていた。

「モグモグ……そろそろ終わったかい?」

「あぁああ!! 俺の東〇バナナを勝手に食ってんじゃねぇーよ」

「そう狼狽えてはいけない。雑魚にみえてしまうよ」

「勿体ぶってないで、要件を話したらどうだ?」

 俺の問いかけに、しばしサボテンが無言になった……何気なく再度、おみやげに手をつけようとしたので、葉の腕を引っ叩いてやった。

「ふむ。ストレートにいうと君の物語に終わりが迫っている……このまま、完結を迎えるか? それとも、一旦区切らせてシーズン2を迎えるか? 悩んでいる」

「そんな事を言いにきたのか? さっさと帰れ!! でなきゃ、塩をまくぞ」

 こともあろうにサボテンは自身を創造主と語ってきた。
 直接、口には出していないものの、すべては会話の内容で伝わってきた。
 俺たちは神によって生み出され、神によって見捨てられてゆく定めにあるようだ。
 それを、奴は本人に直接、伝えて選ばそうとした。

 向こう理由は知らないが、こっちは最悪の気分だ。
 少なくとも俺は俺の意思で行動をしている。
 そこに何の縛りはなく、可能性という名の選択肢は無限に広がっているはずだ。
 でなきゃ、何の為に俺たちは生まれてきたんだ……。

「そう悲観することはない。君が生まれたこと自体、大いなる可能性の一つにつながる。世界は君が思うよりずっと非情である反面、寛大だったりもする。我々にできることは信じて伝えることだ、必ず近いうちに君の意思を受け継ぐ者が現れるだろう……いずれ世界を羽ばたくために」

「はっ、何を言っているんだ! この俺、大名マイトの性能と性癖は唯一無二、オンリーワンなやつだ」

「ああ、それもいいかもね。君、壊れて過ぎているし。多分、君より過激なのは早々でてこないんじゃないかな~、性的な意味で」

 ちょっ……薄情じゃねぇ? 尻穴シリアスな展開からの落とし方が半端ねぇわ。
 まぁ、かぶらないのはいい事だけど……。
 ただ、一点だけ気になる。コレを聞かなれば夜もオチオチ眠れやしない。
 独り不夜城なんて勘弁だ。

「あの~、まだ話は続くんですかね?」

「どこまでかは、約束はできない。可能性の問題だからね~。話は、まだ続くけどいずれは終わる。ドコに着地しようとも、君ならその先を進んでゆけるはずだよ。そうなるように、この物語は作られたのだから」

「それってどういう――――」

 どうやら、時間切れのようだ。質問の途中で時間停止が解除されてしまった。
 まったくもって、自分の言いたいことだけ言って行きやがった。
 創造主のくせに身勝手なのもほどがある。

「これから、どう歩むべきか……決まっている。サトランが関わっているのなら止めさせるべきだ!」

「おおっ! 引き受けて下さいますか」

「ああっ、それが元冒険者としての俺のケジメだ」 
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