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心のティアラ
82話 ラードの夢想
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自身より秀でた者はいない。
十代の主張ようなことをぬかしおる……。
しかしながら、ラードよ。
その手柄は貴君のモノではなく、ウナギ君の頑張りだ。
「およっ? なんじゃと……あのシーサーペントの奴め、我のデスクロールが当たらないぞ」
我慢を知らない魔王は、強敵を見るなり襲い掛かっていた。
大振り腕が、ウナギ君の身体を触れる寸前で滑ってしまい攻撃が当たらない。
そのもどかしさから、シーサーペント認定しているようだが……オマエもなのか……。
アナゴである生物が、同調圧力のせいで水棲モンスターに見えてくる不思議。
間違っているのは自分なのかと疑ってしまうが、所詮は自己暗示にすぎない。
物事の真は心に刻まれるか? どうかだ。
そこに他者の基準や価値観などは介入してこない。
なぜなら、自分の思考が正しいと証明できる存在は、この世で自分しかいないのだから。
他者の価値観になびこうなど、完全なる自己否定に等しい。
それをウナギ君が証明してくれている。強大化したササブリの手からツルツルと滑りぬけてゆく。
いくらワシ掴みにしようとも、その身に流動する飴が外敵から守ってくれる。
ならば……現実的な物理ではなく夢と魔法の物理で殴ってゆくしかない。
例え強者でも札束で殴られれば弱い者もいる。
原理としてはそれ同様、主ために奮闘するピュアなその心、暗黒面に引きずりこんでやるわぁ!!
「ささぶ「それ、ダークネスブリンガー」
なるほど……。
タッグマッチだというのに我々の息は、まったくと言っていいほどあっていない。
命令を出す前に、適当に放たれたダークネスな奴はコーティングされたウナギ君によって乱反射し、ブルマンの戦士ごとラードの手下を駆逐しようと飛び交う。
よくある話だ。拡散粒子砲はある一点で放射状に散らばり、さらに先の距離にてランデブーする。
ササブリが砲撃した位置の直線上で戦っていた奴らの運が悪かっただけだ。
いち早く、住民の安全を優先し戦場から避難していたボリネシアンズだけが難を逃れていた。
皮肉なことに、それまで敵対関係にあった者たちの手により彼ら一族は救われたのだ。
「ンクッ、カアァァ――――アアアアアア!! なんぞ、きかぬじゃ!? 面倒じゃな……ならば、この島ごと海に沈めてやる」
「待てぃいいい!! 悔しいのかもしれんが、短絡的になるな!!」
「ん? ぬ、主! 何をす――――」
俺は、初めてスキルを強制解除した。
自分の思い通りにいかず、苛立ち始めた魔王ほど危険なモノはない。
この村を救おうとする意思がなければ、破壊の限りを尽くしてしまうのは想像に易い。
コイツに手加減や、手心といった他者を気遣う心があれば任せられたのだが……。
「ロビー君、どうして魔王ちゃんをスキルブックに戻したのですか?」
シャルが語気を強めていた。ササブリが消えてしまったことが不服らしい。
「これ以上、何かが起きたら主である俺も責任は取れない。そうなる前に、手を打っただけだ」
「ですが、それは飼い主の横暴ですわ!? ペットにも自由が――――」
シャルが会話を中断し、口元を手でおおっていた。
前屈みに俯く姿は、誰がどうみても正常な状態とは言えなかった。
「大丈夫か……」大丈夫ではないと分かりつつも、それしか言葉をかけられない。
シャルの異変は精神的なモノだ。フラッシュバック……思い出したくもない記憶が甦り、瞳を見開いたまま汗だくになっている。
「も、問題ありません。余計な心配をかけさせて、スミマセン」
自身の弱さに反発するようにシャルは気丈に振る舞っていた。
だからといって、今の俺に何かができるわけではない。
彼女を救うには、あまりにも理解が足りていない。
詭弁かもしれないが、これ以上は踏み込んではならない気がする。
共通した闇を抱えるこらこそ、そう思ってしまうのだ。
他者の優しさで心苦しくなる時もあるのだから……。
「すまないが、もう一度だけ魔法を使ってくれないか? ハンターたちの迎撃を、ササブリだけに任せておくわけにもいかない。俺たち自身で打って出なければ何も変わらない」
俺の意見を聞きながら、彼女は相槌一つ、打とうともしなかった。
ただ、手を差し伸べてこう告げた。
「やはり、貴方は私のロビー君ではありませんね。本物のロビー君も貴方みたいに自由奔放な子でしたが……変化を恐れていましたわ」
「シャルの過去に何があったのか? 俺には想像もできない……結局、過去の自分と対峙するのは今の自身なんだ。俺もオマエもな」
「過去との対峙ですか……フフッ」聖女が穏やかに微笑む。
その瞳はどこか物寂し気に映って見えた。
十代の主張ようなことをぬかしおる……。
しかしながら、ラードよ。
その手柄は貴君のモノではなく、ウナギ君の頑張りだ。
「およっ? なんじゃと……あのシーサーペントの奴め、我のデスクロールが当たらないぞ」
我慢を知らない魔王は、強敵を見るなり襲い掛かっていた。
大振り腕が、ウナギ君の身体を触れる寸前で滑ってしまい攻撃が当たらない。
そのもどかしさから、シーサーペント認定しているようだが……オマエもなのか……。
アナゴである生物が、同調圧力のせいで水棲モンスターに見えてくる不思議。
間違っているのは自分なのかと疑ってしまうが、所詮は自己暗示にすぎない。
物事の真は心に刻まれるか? どうかだ。
そこに他者の基準や価値観などは介入してこない。
なぜなら、自分の思考が正しいと証明できる存在は、この世で自分しかいないのだから。
他者の価値観になびこうなど、完全なる自己否定に等しい。
それをウナギ君が証明してくれている。強大化したササブリの手からツルツルと滑りぬけてゆく。
いくらワシ掴みにしようとも、その身に流動する飴が外敵から守ってくれる。
ならば……現実的な物理ではなく夢と魔法の物理で殴ってゆくしかない。
例え強者でも札束で殴られれば弱い者もいる。
原理としてはそれ同様、主ために奮闘するピュアなその心、暗黒面に引きずりこんでやるわぁ!!
「ささぶ「それ、ダークネスブリンガー」
なるほど……。
タッグマッチだというのに我々の息は、まったくと言っていいほどあっていない。
命令を出す前に、適当に放たれたダークネスな奴はコーティングされたウナギ君によって乱反射し、ブルマンの戦士ごとラードの手下を駆逐しようと飛び交う。
よくある話だ。拡散粒子砲はある一点で放射状に散らばり、さらに先の距離にてランデブーする。
ササブリが砲撃した位置の直線上で戦っていた奴らの運が悪かっただけだ。
いち早く、住民の安全を優先し戦場から避難していたボリネシアンズだけが難を逃れていた。
皮肉なことに、それまで敵対関係にあった者たちの手により彼ら一族は救われたのだ。
「ンクッ、カアァァ――――アアアアアア!! なんぞ、きかぬじゃ!? 面倒じゃな……ならば、この島ごと海に沈めてやる」
「待てぃいいい!! 悔しいのかもしれんが、短絡的になるな!!」
「ん? ぬ、主! 何をす――――」
俺は、初めてスキルを強制解除した。
自分の思い通りにいかず、苛立ち始めた魔王ほど危険なモノはない。
この村を救おうとする意思がなければ、破壊の限りを尽くしてしまうのは想像に易い。
コイツに手加減や、手心といった他者を気遣う心があれば任せられたのだが……。
「ロビー君、どうして魔王ちゃんをスキルブックに戻したのですか?」
シャルが語気を強めていた。ササブリが消えてしまったことが不服らしい。
「これ以上、何かが起きたら主である俺も責任は取れない。そうなる前に、手を打っただけだ」
「ですが、それは飼い主の横暴ですわ!? ペットにも自由が――――」
シャルが会話を中断し、口元を手でおおっていた。
前屈みに俯く姿は、誰がどうみても正常な状態とは言えなかった。
「大丈夫か……」大丈夫ではないと分かりつつも、それしか言葉をかけられない。
シャルの異変は精神的なモノだ。フラッシュバック……思い出したくもない記憶が甦り、瞳を見開いたまま汗だくになっている。
「も、問題ありません。余計な心配をかけさせて、スミマセン」
自身の弱さに反発するようにシャルは気丈に振る舞っていた。
だからといって、今の俺に何かができるわけではない。
彼女を救うには、あまりにも理解が足りていない。
詭弁かもしれないが、これ以上は踏み込んではならない気がする。
共通した闇を抱えるこらこそ、そう思ってしまうのだ。
他者の優しさで心苦しくなる時もあるのだから……。
「すまないが、もう一度だけ魔法を使ってくれないか? ハンターたちの迎撃を、ササブリだけに任せておくわけにもいかない。俺たち自身で打って出なければ何も変わらない」
俺の意見を聞きながら、彼女は相槌一つ、打とうともしなかった。
ただ、手を差し伸べてこう告げた。
「やはり、貴方は私のロビー君ではありませんね。本物のロビー君も貴方みたいに自由奔放な子でしたが……変化を恐れていましたわ」
「シャルの過去に何があったのか? 俺には想像もできない……結局、過去の自分と対峙するのは今の自身なんだ。俺もオマエもな」
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