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心のティアラ
76話 聖女の助言
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何もせずに勝ってしまう。
これぞ、無手勝流……。
「一件、ヒットしました。スターマインによる魔法攻撃を雨雲に放てば、魔法効果により天候変化が起こります」
「グッ、ラァーク!」あまりの絶望感に、他人事のように応援してしまった。
つまり俺の命を担保にすれば、最悪の事態は避けられる。
命は大事にだが、ここで躊躇していても何れ、島が水没してしまう。
そうなると本当に誰も助からない……。
「ちなみに、スターマインを使用するのにどれくらいの生命エネルギーが必要なんだ?」
『成人男性、三人分です』
全然、たんないじゃん……糞かよ!
「ああっ!! 魔力さえあれば、こんな雨に悩まされなくてもいいのに……」
「雨がどうさなったのですか?」
目蓋を手でこすりながら、シャルターナが目を覚ました。
状況がつかめていないのか? しばらく、辺りを見回していた。
「魔王に意識を乗っ取られていたんだ、記憶はあるか?」
「ええっ……覚えてます。私、黄金宮殿からこの島へ飛ばされて……偶然、歪な波型のスキルブックを拾ったんです。それで……その辺りから記憶が曖昧になってしまい―――」
「そのスキルブックこそが、魔王エクスサイズの所持品なんだ。奴は、自分の手を汚さなくて済むように、相手の肉体ごと奪い操る。非常に面倒だけど、詰めが甘い魔王だ」
俺は知っている限り、今までの出来事をシャルに説明した。
シャルがブルマを装着した男たちを支配していた事。
ボリネシアン族長の息子と政略結婚しようとしていた事実。
エクスサイズに、村が燃やされた挙句、俺のポイント購入特典の効果により大雨が止まなくなった現状。
そして、シャルの憑いていたエクスサイズが、ササブリに乗り替えた薄情さ。
俺の話を聞きながら大欠伸する聖女は、将来きっと大物になろう。
唯一の解決策であるスターマインの使用に深刻な面持ちで会話を切り出すと、さも退屈そうにネイルの手入れを始め出した。
これだから、転生者は扱い辛いんだ。
そもそも、そんなんだから、まともなパーティーを追放され、不徳のパーティーに加入する流れになったんだろうに……。
それで、聖女のクラスをはく奪させないのは、彼女に罪悪感がないせいである。
神の御使いとして、やるべきことを成しているのか?
そう聞けば、清々しい笑顔で「はい」と返事がかえってくるのが目に見えて辛い。
「先程から、一人で昂っていますがロビー君。そもそも、消費ポイントって減らせないんですか?」
これまた……ずいぶんと尖ったことを仰る。
さすがは、デュアル・ゴースティングの策士、ポイントを減らすなんて着想は全くなかった。
確かに、ポイントが減らせれば到達無効にはなるのかもしれない。
それが可能か、どうかは別問題だが……試してみる価値はありそうだ。
シャルターナ、立ち会いのもと、俺は再度スキルブックを開いた。
「女子アナさん、女子アナさん、シャルターナの好きな人は誰ですか?」
「あのぅ……真面目にやって下さらないのでしたら、私は協力しませんわよ?」
「さーせん。調子こいてました! 購入した物って返却できますか?」
誠意のない謝罪と小学生みたいな質問を同時に成し遂げる……その先にあるのは頂上ではなく崖っぷちだった。
大人な俺が心の奥で囁く。
世の中、そんなに上手く行くわけがないと。
知ったかぶってはいるが、所詮は井の中の強欲な壺。若干、喪黒さんに似ているだけだ。
『可能です。その際、消費購入ポイントが減りますが、特典の獲得は一度だけとなり、再度到達しても何も得られませんのでご了承ください』
「おおっし! じゃあ、獲得した特典は無効になるのかな? かな?」
『あり得ません。特にイベント系は終了しない限り消えることはないです』
その瞬間、俺の心が石化した。
あり得ません……あり得ませんと、不可能を通り越えた超現象が頭の名でリフレインする。
一体……僕らは何を張り切っていたのだろう。
わざわざ、消費したポイントを調べて計算したのに……すべて泡沫に帰した。
「まぁ、残念でしたね。上手くいくと思っていましたのに」
「全然、残念じゃない。むしろ……終わりの始まりだよ」
「そんな中二病みたなこと仰らずに、要はロビー君が魔法を使えれば良いわけですよね? ならば、聖女の中級スキルブック、アカシックレコードを購入するという方法もあります。もちろん、スキルブックはとても高価な品です。おいそれと他者に対して買うことなど、非現実的すぎて策としては下の下ですが」
シャルの言うとおりだった。
聖女のスキルブックは中級まで売っている。
アカシックレコードは一万ポイントと非常に高値がついている。
現在まで消費した購入ポイントは15,300ポイント。
ここにプラス一万、上乗せすると次の特典ポイントに到達してしまう。
因みに特典は、スパンコールのズボンなる最高に糞ダサな防具が手に入る。
これぞ、無手勝流……。
「一件、ヒットしました。スターマインによる魔法攻撃を雨雲に放てば、魔法効果により天候変化が起こります」
「グッ、ラァーク!」あまりの絶望感に、他人事のように応援してしまった。
つまり俺の命を担保にすれば、最悪の事態は避けられる。
命は大事にだが、ここで躊躇していても何れ、島が水没してしまう。
そうなると本当に誰も助からない……。
「ちなみに、スターマインを使用するのにどれくらいの生命エネルギーが必要なんだ?」
『成人男性、三人分です』
全然、たんないじゃん……糞かよ!
「ああっ!! 魔力さえあれば、こんな雨に悩まされなくてもいいのに……」
「雨がどうさなったのですか?」
目蓋を手でこすりながら、シャルターナが目を覚ました。
状況がつかめていないのか? しばらく、辺りを見回していた。
「魔王に意識を乗っ取られていたんだ、記憶はあるか?」
「ええっ……覚えてます。私、黄金宮殿からこの島へ飛ばされて……偶然、歪な波型のスキルブックを拾ったんです。それで……その辺りから記憶が曖昧になってしまい―――」
「そのスキルブックこそが、魔王エクスサイズの所持品なんだ。奴は、自分の手を汚さなくて済むように、相手の肉体ごと奪い操る。非常に面倒だけど、詰めが甘い魔王だ」
俺は知っている限り、今までの出来事をシャルに説明した。
シャルがブルマを装着した男たちを支配していた事。
ボリネシアン族長の息子と政略結婚しようとしていた事実。
エクスサイズに、村が燃やされた挙句、俺のポイント購入特典の効果により大雨が止まなくなった現状。
そして、シャルの憑いていたエクスサイズが、ササブリに乗り替えた薄情さ。
俺の話を聞きながら大欠伸する聖女は、将来きっと大物になろう。
唯一の解決策であるスターマインの使用に深刻な面持ちで会話を切り出すと、さも退屈そうにネイルの手入れを始め出した。
これだから、転生者は扱い辛いんだ。
そもそも、そんなんだから、まともなパーティーを追放され、不徳のパーティーに加入する流れになったんだろうに……。
それで、聖女のクラスをはく奪させないのは、彼女に罪悪感がないせいである。
神の御使いとして、やるべきことを成しているのか?
そう聞けば、清々しい笑顔で「はい」と返事がかえってくるのが目に見えて辛い。
「先程から、一人で昂っていますがロビー君。そもそも、消費ポイントって減らせないんですか?」
これまた……ずいぶんと尖ったことを仰る。
さすがは、デュアル・ゴースティングの策士、ポイントを減らすなんて着想は全くなかった。
確かに、ポイントが減らせれば到達無効にはなるのかもしれない。
それが可能か、どうかは別問題だが……試してみる価値はありそうだ。
シャルターナ、立ち会いのもと、俺は再度スキルブックを開いた。
「女子アナさん、女子アナさん、シャルターナの好きな人は誰ですか?」
「あのぅ……真面目にやって下さらないのでしたら、私は協力しませんわよ?」
「さーせん。調子こいてました! 購入した物って返却できますか?」
誠意のない謝罪と小学生みたいな質問を同時に成し遂げる……その先にあるのは頂上ではなく崖っぷちだった。
大人な俺が心の奥で囁く。
世の中、そんなに上手く行くわけがないと。
知ったかぶってはいるが、所詮は井の中の強欲な壺。若干、喪黒さんに似ているだけだ。
『可能です。その際、消費購入ポイントが減りますが、特典の獲得は一度だけとなり、再度到達しても何も得られませんのでご了承ください』
「おおっし! じゃあ、獲得した特典は無効になるのかな? かな?」
『あり得ません。特にイベント系は終了しない限り消えることはないです』
その瞬間、俺の心が石化した。
あり得ません……あり得ませんと、不可能を通り越えた超現象が頭の名でリフレインする。
一体……僕らは何を張り切っていたのだろう。
わざわざ、消費したポイントを調べて計算したのに……すべて泡沫に帰した。
「まぁ、残念でしたね。上手くいくと思っていましたのに」
「全然、残念じゃない。むしろ……終わりの始まりだよ」
「そんな中二病みたなこと仰らずに、要はロビー君が魔法を使えれば良いわけですよね? ならば、聖女の中級スキルブック、アカシックレコードを購入するという方法もあります。もちろん、スキルブックはとても高価な品です。おいそれと他者に対して買うことなど、非現実的すぎて策としては下の下ですが」
シャルの言うとおりだった。
聖女のスキルブックは中級まで売っている。
アカシックレコードは一万ポイントと非常に高値がついている。
現在まで消費した購入ポイントは15,300ポイント。
ここにプラス一万、上乗せすると次の特典ポイントに到達してしまう。
因みに特典は、スパンコールのズボンなる最高に糞ダサな防具が手に入る。
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