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孤島の花嫁
64話 れっだぁん!
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「オマーン!」
「イエメーン!!」
意味のないハイタッチとともに、俺らは熱い抱擁を交わした。
「ぐがあがが!!」馬鹿のポメオは、力の加減を知らない。
お互いのランキング差を考えないハグはサバ折りでしかない。
肩を三回、タップすることで解放された時は、危うく幽体離脱しかけていた。
「元気そうで何よりだな! ブロス!!」
「オマエもな!」
クソみたいな距離感だった。その場のノリだけで、俺たちは生きている。
思考など、エロス回路に直結しているんだ。使うだけ、淫らな妄想にふける。
ましてや、コイツをオカズにできるほどの一騎当千にはなれない。
「俺たちも欲求不満が限界を越えれば、無双できるかもな?」
「オイオイ! そこは、よく無事だったなとか労うところじゃないノカ?」
「よし、今度。わき握りを馳走してやろう!」
「ヤッター、お寿司だ!! 鉄炮にドキュン! された甲斐があたぁよ~」
―――ああ、アレか……確か、人の話を聞かずに独断専行して、勝手に撃たれていたような気がする。
まぁ、ここでそれを言うのも無粋ではある。
気が引けた俺は、あえて余分なことは言わなかった。
なぜなら、海で遭難しかけていた俺を、この帆船マリーブルジョワ号に乗船させるように嘆願したのは、他ならぬ、副船長だったからだ。
どこの馬の骨だか分からない奴を助けてくれるとは、漢として懐の深さを感じる。
それに比べて、このゴミカスは何だ? 人が困っているのに、大手を振って笑っていやがった……悪魔か、コイツは。
恩人の船で一波乱巻き起こしても天下は獲れぬ。
どういった経緯で、この雑兵が船旅をしているのか? 400文字の原稿紙、三十枚ほどに書かせる罰を下してやりたい。
そして、人の眼にさらされるよう、原稿をギルドや武具屋の壁に貼り付けておきたい。
兄弟と語るコイツが俺を見殺しにしようとしたことは、今後、忘れぬことなきよう思い出のアルバムの中にスクラップしておこうと思う。
こう見えても人一倍、几帳面なのだ、俺は。
「最近どうよ? 女できたかぁ?」
甲板の手すりに肘を乗せ、渋い顔で遠方を眺めるアルファポメオ。
パイセン風を吹かせたいようだが、横顔がチンパンジーにそっくりだった。
率直に言えば、誰と話してんだ!? とケツ蹴りをかましたい。
人のプライベートにお構いなく入ろうとするコソ泥には、我々も散々、手を焼いてきた。
そんな困った時の為に、ここに模範解答を提示しよう。
「ポメオや、男が女を作るんじゃない。女に作られるのが男だろうよ!」
「うふっ、ラバーのことだよ、ブロス」
「そんなのは愚問だろうよ。お前は、オリエ〇ト製かもしれないが……俺は異空間からブレンダを召喚できる」
「WH……。そんなの、磯だアア嗚呼あああ――――――!!」
食べかけの魚肉ソーセージを片手にポメオが全身を痙攣させていた。
いったい、どこから持ち出してきたんだ? 俺にも分けてくれ、ソレ。
やれやれ、事実は無情である。
あまりのショックに嘘を磯と言ってしまうほど、ポメオを我を失っていた。
コイツ的には、人類の叡智を自慢したかったのだろうが、残念ながら俺にはグラビアがある。
「コイツが証拠だ! それぃ~」
スキルブックを展開させ、水着美女が次から次へと溢れ出てくる。
背景が海ということもあり、今日の彼女たちは一際、輝く宝石ような極上のエロスを醸し出していた。
揺れる谷間に弾む桃尻、そこには俺たちのワールドがあった。
まるで、春のうららかな日差しを浴びるような至福に包まれる俺や船のクルーたち。
同時に、ポメオのスケベ心も暴発寸前となっていた。
「ダメだ……こんな時は、腰ミノに姿になって踊らないとハッスルが治まらないよ」
「いや、すでに腰ミノだろう、お前……」
「ドンビィー社員! マイトの分もオールレディダン!!」
「えっ、うえええええええええええ!!!」
半ば強引に手渡された腰ミノ、性病が移らないか? 心配になる。
念のためスキャニングしてみると状態は未使用……これなら、イケる!
俺は、大きく息を吐き出した。
それは己が迷いや羞恥心を捨て去るためのマインドフルネスだ。
そこから導き出されたのは前世の記憶。
前の世界には、この様な時に人はどう動くべきか語り継がれてきた言葉があった。
踊るアホウに見るアホウ、同じアホウなら踊らなきゃ損だと……。
いずれにせよ、アホなのは治らない。
ならば、せめてインナーマッスルだけは鍛えよという有難い教えである。
腰ミノ姿になった俺たちは美女を囲い、狂ったように踊った。
その必死さが伝わったのか? 次第に乗船していた楽団や一般人が飛び入り参加し始めた。
熱気に包まれ、ダンスと演奏で大いに盛り上がる船上! これが青春、これがパリピ……。
今まで体験したことのないトランスに魅了された俺たちに、真っ当な思考など働かせられるわけがない。
その熱きパトスが時空の歪を生み出そうとは、この時、誰一人として思わなかった。
「イエメーン!!」
意味のないハイタッチとともに、俺らは熱い抱擁を交わした。
「ぐがあがが!!」馬鹿のポメオは、力の加減を知らない。
お互いのランキング差を考えないハグはサバ折りでしかない。
肩を三回、タップすることで解放された時は、危うく幽体離脱しかけていた。
「元気そうで何よりだな! ブロス!!」
「オマエもな!」
クソみたいな距離感だった。その場のノリだけで、俺たちは生きている。
思考など、エロス回路に直結しているんだ。使うだけ、淫らな妄想にふける。
ましてや、コイツをオカズにできるほどの一騎当千にはなれない。
「俺たちも欲求不満が限界を越えれば、無双できるかもな?」
「オイオイ! そこは、よく無事だったなとか労うところじゃないノカ?」
「よし、今度。わき握りを馳走してやろう!」
「ヤッター、お寿司だ!! 鉄炮にドキュン! された甲斐があたぁよ~」
―――ああ、アレか……確か、人の話を聞かずに独断専行して、勝手に撃たれていたような気がする。
まぁ、ここでそれを言うのも無粋ではある。
気が引けた俺は、あえて余分なことは言わなかった。
なぜなら、海で遭難しかけていた俺を、この帆船マリーブルジョワ号に乗船させるように嘆願したのは、他ならぬ、副船長だったからだ。
どこの馬の骨だか分からない奴を助けてくれるとは、漢として懐の深さを感じる。
それに比べて、このゴミカスは何だ? 人が困っているのに、大手を振って笑っていやがった……悪魔か、コイツは。
恩人の船で一波乱巻き起こしても天下は獲れぬ。
どういった経緯で、この雑兵が船旅をしているのか? 400文字の原稿紙、三十枚ほどに書かせる罰を下してやりたい。
そして、人の眼にさらされるよう、原稿をギルドや武具屋の壁に貼り付けておきたい。
兄弟と語るコイツが俺を見殺しにしようとしたことは、今後、忘れぬことなきよう思い出のアルバムの中にスクラップしておこうと思う。
こう見えても人一倍、几帳面なのだ、俺は。
「最近どうよ? 女できたかぁ?」
甲板の手すりに肘を乗せ、渋い顔で遠方を眺めるアルファポメオ。
パイセン風を吹かせたいようだが、横顔がチンパンジーにそっくりだった。
率直に言えば、誰と話してんだ!? とケツ蹴りをかましたい。
人のプライベートにお構いなく入ろうとするコソ泥には、我々も散々、手を焼いてきた。
そんな困った時の為に、ここに模範解答を提示しよう。
「ポメオや、男が女を作るんじゃない。女に作られるのが男だろうよ!」
「うふっ、ラバーのことだよ、ブロス」
「そんなのは愚問だろうよ。お前は、オリエ〇ト製かもしれないが……俺は異空間からブレンダを召喚できる」
「WH……。そんなの、磯だアア嗚呼あああ――――――!!」
食べかけの魚肉ソーセージを片手にポメオが全身を痙攣させていた。
いったい、どこから持ち出してきたんだ? 俺にも分けてくれ、ソレ。
やれやれ、事実は無情である。
あまりのショックに嘘を磯と言ってしまうほど、ポメオを我を失っていた。
コイツ的には、人類の叡智を自慢したかったのだろうが、残念ながら俺にはグラビアがある。
「コイツが証拠だ! それぃ~」
スキルブックを展開させ、水着美女が次から次へと溢れ出てくる。
背景が海ということもあり、今日の彼女たちは一際、輝く宝石ような極上のエロスを醸し出していた。
揺れる谷間に弾む桃尻、そこには俺たちのワールドがあった。
まるで、春のうららかな日差しを浴びるような至福に包まれる俺や船のクルーたち。
同時に、ポメオのスケベ心も暴発寸前となっていた。
「ダメだ……こんな時は、腰ミノに姿になって踊らないとハッスルが治まらないよ」
「いや、すでに腰ミノだろう、お前……」
「ドンビィー社員! マイトの分もオールレディダン!!」
「えっ、うえええええええええええ!!!」
半ば強引に手渡された腰ミノ、性病が移らないか? 心配になる。
念のためスキャニングしてみると状態は未使用……これなら、イケる!
俺は、大きく息を吐き出した。
それは己が迷いや羞恥心を捨て去るためのマインドフルネスだ。
そこから導き出されたのは前世の記憶。
前の世界には、この様な時に人はどう動くべきか語り継がれてきた言葉があった。
踊るアホウに見るアホウ、同じアホウなら踊らなきゃ損だと……。
いずれにせよ、アホなのは治らない。
ならば、せめてインナーマッスルだけは鍛えよという有難い教えである。
腰ミノ姿になった俺たちは美女を囲い、狂ったように踊った。
その必死さが伝わったのか? 次第に乗船していた楽団や一般人が飛び入り参加し始めた。
熱気に包まれ、ダンスと演奏で大いに盛り上がる船上! これが青春、これがパリピ……。
今まで体験したことのないトランスに魅了された俺たちに、真っ当な思考など働かせられるわけがない。
その熱きパトスが時空の歪を生み出そうとは、この時、誰一人として思わなかった。
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