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孤島の花嫁
63話 僕らは人生という大海原の迷い子
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新手の某監督かと思った……。
そんなことを言ってしまうと、当人の前でダイビング土下座した上、靴を舐め回す羽目になるかもしれない。
わしゃ、妖怪アカナメかい!
とにかく、このラードと名乗るオッサン……間違いない、俺たちを追ってきたドミネーションズの一派、オメガ三兄弟の三男だろう。
「因みに俺ちゃんは自由奔放を愛する次男坊ぜぃ!」
あっ、不正解だった……絞ったような、雑巾顔のオジに「残念……」と言われる程度には悔しい。
余談だが、コンビニとかで「レジ袋はどうしますか?」と店員に聞かれた時。
開口一番で「あっ」って言ってしまうのは、何故だろう?
その、呪言を発する度に『あっ』についてヤキモキする自分がいる。
散々、議論され続けてきた『あっ』の正体。
どうやら、今一度……その歴史を紐解いてみる必要がありそうだ。
思うに俺たちが「あっ」って言ってしまうのは……アンテンションプリーズ……の略? なのかもしれない。
我々は無意識のうちにコンビニスタッフへ注意喚起をうながしているのだ。
「へっへえ、店員さん。迂闊に俺に触れると火傷じゃ済まされないぜ」
「ふぇ? それ名前なの?」
「あと、袋叩きにされるのは毎度のことなので結構です!」
「いぇや、いきなり~そんな酷いことせんよ」
まったく、このローソクの店員は……ノリが悪い。
大抵の人間は勢いとノリで人生の路頭に迷うのに、この店員は敷かれた尻に飢え……敷かれたレールの上を歩もうとしている。
そんなんだから、ミツヒコさん程度にぞんざいな扱いを受けるんだよ。
やっぱ、何か? 店員と呼ばれるより、クルーって呼ばれたほうが良いんか?
「あいやー、今日のカモメは騒がしいな!」
あまりにも相手にしなさ過ぎたせいでラード、推定(38)が明後日の方向を進みだそうとしていた。
今更、言い訳にしかならないが、別に悪ふざけしていたのではない。
ふざけていても、せいぜい八割ていどだ。
残りの二割は、馬鹿正直に名乗ったら自分の身元がバレてしまうのを危険視したからだ。
偽名を名乗るという古典的な方法もあるがアナゴをウナギと名付ける、この男に勝てる気がしない。
いっそ、俺もマコトとして名乗り上げ国盗りでもしてみようか? そして一族の恥さらしと罵られ、生首として活躍す……うん、マコトがイッパイだぁ!
フッ……一言だけ言わせてほしい「全国のマコトさん! 数々の無礼、クッソー申し訳ございませんでした!! ついで、ミツヒコさんも」
「ほうほう、マコト・ミツヒコというのか」
何? そのドラッグストアみたいな名前……。
というか、俺の独り言だけで会話が成立してしまっている。
グゼンのせいでパンツを盗んだと疑われ、魔女にかけられたこの呪い。
日増しに悪化しているのではないのか?
とんだ、次郎系だよ! コイツはぁ!
「ここで出会ったのも、何かの縁だ。近くの島までウサギ君で引っ張ってやろう」
悲報! ウナギ君、ウサギと間違われる。それはともかく、この状況で助け舟がでるのは本当に有難い。
お礼に饅頭でも差し上げたいが、あいにく手持ちには丸めた鼻クソしかない。
ちょ、待てよ……昔から言われてきたではないか!?
大切なのは、物ではなく気持ちだと……。
「いけるのか……よし! いk「はわわっ!! やべぇ~やべぇよ!! 監視船が巡回してきやがっている」
「巡回戦?」
「悪いな、マコトよ。俺ちゃん、ここで捕まるわけにはイカンのよ~。いざ! 海の底へ!」
何か危険を察知したらしく、俺の心を弄んだ結果、水中へと戻ってゆくラードたち。
行ってしまわれた……立つ鳥跡を濁さずとは、このことなのかもしんない。
やけに逃げ上手なローソクだった。
まるで、エアー階段をやる同級生みたいに物音立てずにスッと水中に沈んでいった。
妙な静けさだけが残った……。
正直、静かなのは苦手だ。転生前に住んでいた田舎を思い出す。
「うわっ、なんだ!? まぶし……」
急に光を浴びた時の常套句をかます。
そんな俺を飲み込むように強烈な光が海上を照らしていた。
視界が眩む中で、薄っすらと船影が浮き上がってきた。
光源である帆船の船首から、どこか懐かしい声が響いてきた。
「おお、イェイ! もしかして、そこに居るのはオオグソクムシか!?」
「誰が、グソクムシだ!! てめぇ、マグロ漁船に送り込むぞ!!」
何ということだろうか……運命の神様は悪戯好きだ。
よりによって、ここでスケベの像と再会するとは予想すらしていなかった。
住所不定、吟遊詩人のアルファポメオ。
腰ミノ一つをまといし、痴漢の代名詞が大海原へと繰り出してきた。
そんなことを言ってしまうと、当人の前でダイビング土下座した上、靴を舐め回す羽目になるかもしれない。
わしゃ、妖怪アカナメかい!
とにかく、このラードと名乗るオッサン……間違いない、俺たちを追ってきたドミネーションズの一派、オメガ三兄弟の三男だろう。
「因みに俺ちゃんは自由奔放を愛する次男坊ぜぃ!」
あっ、不正解だった……絞ったような、雑巾顔のオジに「残念……」と言われる程度には悔しい。
余談だが、コンビニとかで「レジ袋はどうしますか?」と店員に聞かれた時。
開口一番で「あっ」って言ってしまうのは、何故だろう?
その、呪言を発する度に『あっ』についてヤキモキする自分がいる。
散々、議論され続けてきた『あっ』の正体。
どうやら、今一度……その歴史を紐解いてみる必要がありそうだ。
思うに俺たちが「あっ」って言ってしまうのは……アンテンションプリーズ……の略? なのかもしれない。
我々は無意識のうちにコンビニスタッフへ注意喚起をうながしているのだ。
「へっへえ、店員さん。迂闊に俺に触れると火傷じゃ済まされないぜ」
「ふぇ? それ名前なの?」
「あと、袋叩きにされるのは毎度のことなので結構です!」
「いぇや、いきなり~そんな酷いことせんよ」
まったく、このローソクの店員は……ノリが悪い。
大抵の人間は勢いとノリで人生の路頭に迷うのに、この店員は敷かれた尻に飢え……敷かれたレールの上を歩もうとしている。
そんなんだから、ミツヒコさん程度にぞんざいな扱いを受けるんだよ。
やっぱ、何か? 店員と呼ばれるより、クルーって呼ばれたほうが良いんか?
「あいやー、今日のカモメは騒がしいな!」
あまりにも相手にしなさ過ぎたせいでラード、推定(38)が明後日の方向を進みだそうとしていた。
今更、言い訳にしかならないが、別に悪ふざけしていたのではない。
ふざけていても、せいぜい八割ていどだ。
残りの二割は、馬鹿正直に名乗ったら自分の身元がバレてしまうのを危険視したからだ。
偽名を名乗るという古典的な方法もあるがアナゴをウナギと名付ける、この男に勝てる気がしない。
いっそ、俺もマコトとして名乗り上げ国盗りでもしてみようか? そして一族の恥さらしと罵られ、生首として活躍す……うん、マコトがイッパイだぁ!
フッ……一言だけ言わせてほしい「全国のマコトさん! 数々の無礼、クッソー申し訳ございませんでした!! ついで、ミツヒコさんも」
「ほうほう、マコト・ミツヒコというのか」
何? そのドラッグストアみたいな名前……。
というか、俺の独り言だけで会話が成立してしまっている。
グゼンのせいでパンツを盗んだと疑われ、魔女にかけられたこの呪い。
日増しに悪化しているのではないのか?
とんだ、次郎系だよ! コイツはぁ!
「ここで出会ったのも、何かの縁だ。近くの島までウサギ君で引っ張ってやろう」
悲報! ウナギ君、ウサギと間違われる。それはともかく、この状況で助け舟がでるのは本当に有難い。
お礼に饅頭でも差し上げたいが、あいにく手持ちには丸めた鼻クソしかない。
ちょ、待てよ……昔から言われてきたではないか!?
大切なのは、物ではなく気持ちだと……。
「いけるのか……よし! いk「はわわっ!! やべぇ~やべぇよ!! 監視船が巡回してきやがっている」
「巡回戦?」
「悪いな、マコトよ。俺ちゃん、ここで捕まるわけにはイカンのよ~。いざ! 海の底へ!」
何か危険を察知したらしく、俺の心を弄んだ結果、水中へと戻ってゆくラードたち。
行ってしまわれた……立つ鳥跡を濁さずとは、このことなのかもしんない。
やけに逃げ上手なローソクだった。
まるで、エアー階段をやる同級生みたいに物音立てずにスッと水中に沈んでいった。
妙な静けさだけが残った……。
正直、静かなのは苦手だ。転生前に住んでいた田舎を思い出す。
「うわっ、なんだ!? まぶし……」
急に光を浴びた時の常套句をかます。
そんな俺を飲み込むように強烈な光が海上を照らしていた。
視界が眩む中で、薄っすらと船影が浮き上がってきた。
光源である帆船の船首から、どこか懐かしい声が響いてきた。
「おお、イェイ! もしかして、そこに居るのはオオグソクムシか!?」
「誰が、グソクムシだ!! てめぇ、マグロ漁船に送り込むぞ!!」
何ということだろうか……運命の神様は悪戯好きだ。
よりによって、ここでスケベの像と再会するとは予想すらしていなかった。
住所不定、吟遊詩人のアルファポメオ。
腰ミノ一つをまといし、痴漢の代名詞が大海原へと繰り出してきた。
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