57 / 122
魔王様はアイドル!?
57話 審判の門
しおりを挟む
「も、もう一度だ―――「二度も同じ手を喰らわんわぁ―――――!!」
スキルブックを開きかけたままホロモンの爺さんは、デスクロールの餌食となった。
悪魔角の感度は良好だ。敵の攻撃を未然に察知し……? 敵が攻撃する前にこちらから仕掛けることが可能となった。
それとデスクロールは、腕を巨大化させただけの単なる打撃技ではない。
殴った相手を紙のように薄っぺらくし弱体化させるデバフ効果を持っている。
デバフ効果とは、分かりやすく例えるとデバフ効果である。
パーティーメンバーに入れるだけで、戦力的にダウンしたり、ランキングポイントを入手しても順位が上がらず、身体能力が向上しなかったり、呪いによって心の声がだだ漏れだったり、つまるところ俺!
俺がデバフだ!
そんでもって、デスクロールの効果は、一時的なランキングブレイクだ。
これは、このセカイの強者にとって一番最悪なデバフだ。
ランキングブレイク時は攻撃も魔力も、防御力でさえも機能しない。
どれだけ数値が高くとも0に等しい。
俺でもさくとモンスターを狩ることができる。
「ペラペラペラペラペラペラペラペラぺラペラペラ…………」
「マジで紙みたいにペラペラ言っている。よし……皆、行くぞぉぉぉぉ!!」
風にさらされ、情けない音を漏らす紙切れに俺たちは総攻撃を仕掛けた。
卑怯もクソも戦闘時においてはない、生存の競争に勝ったモノだけが自由を手にできる。
今なら狩れる。絶対、狩れる。間違いなく殺れるヒャハハハッ―――!!
勝利が目の前に見えるはず……そう思ってしまったのが誤算を生んだ。
攻撃をしに行ったはずの俺は華麗に月面宙返りをしていた。
むろん、ガッツが足りない。着地失敗で見事に散る。
既視感ある、この感触はまごうことなくメイビスさんの箒だ。
勢いづいた俺たちの出鼻を砕くために、爺さんよりも推定で強い彼女が出てきたのだ。
「ペラ、メイビス……ちゃん。助けにきてくれたのか? ワシ感激」
「どこの三葉虫かと思ったら、ホロモン様でしたか? にしても、引きこもりの貴方が、久方ぶりに表へ出たというのに……無様ですね! ド無様とでも改めるべきでしょうか?」
「いやあああ! 止めてくれぇええ――!! 魔王はメンタルが脆いんだわ~」
「そうですか。私は、残りを掃除をするので邪魔にならない程度に、引っ込んでいてください」
メイビスさんが箒を両手で持ち構える。
その瞬間、彼女背後に夜叉のようなモノが潜んでいる気配がした。
あまりの凄みに誰もが委縮し、動きが鈍くなる。
箒の一振りではない落雷のような物音と同時に、俺たちは後方へと弾き飛ばされてしまった。
「人をゴミ扱いとは、良い性格をなさってますわね。まったく……鬼のような強さですわ」
シャルたちが応戦するも、その強さはハンパない。
結界は仕掛けた傍から吹っ飛ぶし、何故か? 魔法は彼女に届かない。
「はああああぁ――! ドルフィン スタンピング」
「甘いです、隙あり!」
体術においては、赤子の手をひねるようにリンを翻弄し一撃で押し倒してしまった。
本当にこの人、ハウスキーパーなのか……?
誰もが、同様の疑問を抱く最中、最後の砦たるササブリが地上に降り立った。
さしものメイビスさんも、相手が悪いと悟ったのだろう自前のスキルブックを開いた。
メイビスさんを見てササブリが問う。
「ほほう! 貴様、魔王クラスの強さを持っているな? 何故? 他の魔王に仕えておる?」
「それは、貴女も同じでは? よりによって人間に従うとは……異例ですよ」
「まぁ、良い。己もそ奴も我の糧にしてやる。かかってこい!」
「すでに、済ませました。スキルブック、氷の微笑……ホロモン様と対を成すこの能力は、対象を固定することができます。それゆえ、ホルモン様の能力は一切、私には通じません」
「なんじゃ? 自慢か? なら、こ……う、動かんぞ!? 我の身体がビクともせんぞ!!」
ササブリが急に焦りだした。フリかと思っていたが、どうやら本当に身体が動かせないようだ。
背後で、ウダウダ言っている爺は、ともかくメイビスさんの能力は半端なくヤバイ。
そのことを彼女自身が気づいていたら、ササブリでも勝ち目がないかもしれない。
『準備完了しました! これよりゲートを開きます』
「へっ? げーと……」
アナウンスのお姉さんがご乱心なされた。
頼んでもいないのに、ゲートとかいう意味深な単語を使い始めた。
この先、中二の闇に染まってしまわないか、非常に心配である。
とりあえず、俺たちの頭上に、ワームホールみたいなヤツが開いた。
この時点で嫌な予感しかしない……。
「メイビス! コイツはヤベェ……ぞ」
「分かっております。デスブリンガーのロックを解除! 我々をロックします」
魔王二人が揃って、ヤベェヤベェと言っている……これは、避難しないといけない奴なのか?
『警告します、この先、リストルームへの入室許可がない者は、ランダムで転送されます』
「えっ……ランダムって。まさか!!」
ワームホールが凄まじい勢いで大気を吸い始めた。
人一人通れる程度の大きさしかない穴だというのに、吸引力が桁違いだ。
身体が引きずられたかと思いきや、宮殿が見る見るうちに遠のいてゆく。
「うわわわああああ――――!!」
「キャアアアアアアッ―――――!!!」
悲鳴とともに俺たちは全員、上空に巻き上がられていた。
「マイト―――――」
かすかに、俺を呼ぶリンの声がした。
見ると、すぐ傍で彼女が手を伸ばしていた。
何とかしようと、俺も必死で手を動かしたが、身体の自由が利かないどころか、視界さえもあやふやだ。
結局、その手をつかむことはできなかった……。
絶望の中、成すが為されるまま、俺たちはワームホールへ突入することとなった。
スキルブックを開きかけたままホロモンの爺さんは、デスクロールの餌食となった。
悪魔角の感度は良好だ。敵の攻撃を未然に察知し……? 敵が攻撃する前にこちらから仕掛けることが可能となった。
それとデスクロールは、腕を巨大化させただけの単なる打撃技ではない。
殴った相手を紙のように薄っぺらくし弱体化させるデバフ効果を持っている。
デバフ効果とは、分かりやすく例えるとデバフ効果である。
パーティーメンバーに入れるだけで、戦力的にダウンしたり、ランキングポイントを入手しても順位が上がらず、身体能力が向上しなかったり、呪いによって心の声がだだ漏れだったり、つまるところ俺!
俺がデバフだ!
そんでもって、デスクロールの効果は、一時的なランキングブレイクだ。
これは、このセカイの強者にとって一番最悪なデバフだ。
ランキングブレイク時は攻撃も魔力も、防御力でさえも機能しない。
どれだけ数値が高くとも0に等しい。
俺でもさくとモンスターを狩ることができる。
「ペラペラペラペラペラペラペラペラぺラペラペラ…………」
「マジで紙みたいにペラペラ言っている。よし……皆、行くぞぉぉぉぉ!!」
風にさらされ、情けない音を漏らす紙切れに俺たちは総攻撃を仕掛けた。
卑怯もクソも戦闘時においてはない、生存の競争に勝ったモノだけが自由を手にできる。
今なら狩れる。絶対、狩れる。間違いなく殺れるヒャハハハッ―――!!
勝利が目の前に見えるはず……そう思ってしまったのが誤算を生んだ。
攻撃をしに行ったはずの俺は華麗に月面宙返りをしていた。
むろん、ガッツが足りない。着地失敗で見事に散る。
既視感ある、この感触はまごうことなくメイビスさんの箒だ。
勢いづいた俺たちの出鼻を砕くために、爺さんよりも推定で強い彼女が出てきたのだ。
「ペラ、メイビス……ちゃん。助けにきてくれたのか? ワシ感激」
「どこの三葉虫かと思ったら、ホロモン様でしたか? にしても、引きこもりの貴方が、久方ぶりに表へ出たというのに……無様ですね! ド無様とでも改めるべきでしょうか?」
「いやあああ! 止めてくれぇええ――!! 魔王はメンタルが脆いんだわ~」
「そうですか。私は、残りを掃除をするので邪魔にならない程度に、引っ込んでいてください」
メイビスさんが箒を両手で持ち構える。
その瞬間、彼女背後に夜叉のようなモノが潜んでいる気配がした。
あまりの凄みに誰もが委縮し、動きが鈍くなる。
箒の一振りではない落雷のような物音と同時に、俺たちは後方へと弾き飛ばされてしまった。
「人をゴミ扱いとは、良い性格をなさってますわね。まったく……鬼のような強さですわ」
シャルたちが応戦するも、その強さはハンパない。
結界は仕掛けた傍から吹っ飛ぶし、何故か? 魔法は彼女に届かない。
「はああああぁ――! ドルフィン スタンピング」
「甘いです、隙あり!」
体術においては、赤子の手をひねるようにリンを翻弄し一撃で押し倒してしまった。
本当にこの人、ハウスキーパーなのか……?
誰もが、同様の疑問を抱く最中、最後の砦たるササブリが地上に降り立った。
さしものメイビスさんも、相手が悪いと悟ったのだろう自前のスキルブックを開いた。
メイビスさんを見てササブリが問う。
「ほほう! 貴様、魔王クラスの強さを持っているな? 何故? 他の魔王に仕えておる?」
「それは、貴女も同じでは? よりによって人間に従うとは……異例ですよ」
「まぁ、良い。己もそ奴も我の糧にしてやる。かかってこい!」
「すでに、済ませました。スキルブック、氷の微笑……ホロモン様と対を成すこの能力は、対象を固定することができます。それゆえ、ホルモン様の能力は一切、私には通じません」
「なんじゃ? 自慢か? なら、こ……う、動かんぞ!? 我の身体がビクともせんぞ!!」
ササブリが急に焦りだした。フリかと思っていたが、どうやら本当に身体が動かせないようだ。
背後で、ウダウダ言っている爺は、ともかくメイビスさんの能力は半端なくヤバイ。
そのことを彼女自身が気づいていたら、ササブリでも勝ち目がないかもしれない。
『準備完了しました! これよりゲートを開きます』
「へっ? げーと……」
アナウンスのお姉さんがご乱心なされた。
頼んでもいないのに、ゲートとかいう意味深な単語を使い始めた。
この先、中二の闇に染まってしまわないか、非常に心配である。
とりあえず、俺たちの頭上に、ワームホールみたいなヤツが開いた。
この時点で嫌な予感しかしない……。
「メイビス! コイツはヤベェ……ぞ」
「分かっております。デスブリンガーのロックを解除! 我々をロックします」
魔王二人が揃って、ヤベェヤベェと言っている……これは、避難しないといけない奴なのか?
『警告します、この先、リストルームへの入室許可がない者は、ランダムで転送されます』
「えっ……ランダムって。まさか!!」
ワームホールが凄まじい勢いで大気を吸い始めた。
人一人通れる程度の大きさしかない穴だというのに、吸引力が桁違いだ。
身体が引きずられたかと思いきや、宮殿が見る見るうちに遠のいてゆく。
「うわわわああああ――――!!」
「キャアアアアアアッ―――――!!!」
悲鳴とともに俺たちは全員、上空に巻き上がられていた。
「マイト―――――」
かすかに、俺を呼ぶリンの声がした。
見ると、すぐ傍で彼女が手を伸ばしていた。
何とかしようと、俺も必死で手を動かしたが、身体の自由が利かないどころか、視界さえもあやふやだ。
結局、その手をつかむことはできなかった……。
絶望の中、成すが為されるまま、俺たちはワームホールへ突入することとなった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放されたら無能スキルで無双する
ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。
見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。
僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。
咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。
僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!


【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる